はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

山のにぎわい

2014-05-02 19:19:26 | はがき随筆
 この時季、週末になると忙しい。長男一家が竹の子掘りにやってくる。くわを担いで一輪車を押して山道を登っていく。「待ってー」「早くおいでー」「あったー」と声が響き、列の最後を歩く私も久しぶりに胸が高鳴る。嫁に来た当時、祖母に堀り方を伝授されたこと、夫が居て、子供たちと競って竹の子を見つけたことなどを思い出す。そして、楽しみな現金収入。近くに貝取り所があり、かなりの高値だ。格好のアルバイトになる。孫たちもお小遣いを手に、笑顔満開。疲労困憊して帰るも、週末には必ず電話が鳴る。「明日、またくるね」と。
  出水市 伊尻清子2014/5/2 毎日新聞鹿児島版掲載

2014-05-02 19:05:49 | はがき随筆
 10年前、仙厳園で初めて「曲水の宴」を観覧した。
薩摩隼人に象徴される武の国、薩摩にこんな雅な世界があったとは。
 亡夫の4代前内山伊右衛門綱次は「示現流の達人であり、薩摩琵琶の目いゅ。薩摩節の誉れ高く、その琵琶の弾奏は高尚優雅であったという。
幕末、薩摩藩密命で奥州仙台に入り殺害された」と史実にある。
 今、広い庭園の向こうで奈良の地から来た娘婿が雅楽の装束姿で龍笛を吹いている。
 雅を通じて先祖との因縁めいたものを感じた宴でもあった。
  鹿児島市 内山陽子 2014/5/1 毎日新聞鹿児島版掲載