はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

冷蔵庫のこと

2012-05-26 09:57:12 | はがき随筆
 先日、35年暮らしを共にしてきた冷蔵庫を処分した。
 この冷蔵庫、調子がおかしくなり買い替えようかと話し合っていると、うんうんうなって調子を取り戻し、電化製品とて長く一緒に暮らすと、人のような感情を持つようになるのかねと笑いあったこともあった。
 最後の13年間は、私の単身生活を支えてくれた。苗物を育てる仕事をしていた私は、夏場に種まきする種子を何日か入れ、余った種子は冷凍庫で保管したりして、冷蔵庫は食べること以外でも私の暮らしに大事なものだった。
 長い間、本当にありがとう。
  伊佐市 清水 恒 2012/5/26 毎日新聞鹿児島版掲載

バラ祭りと友情

2012-05-26 09:46:52 | はがき随筆

 小庭の紫蘭と一緒に植わっている高さ1.5㍍くらいの一株のバラ。今年も真紅の大輪を見事に咲かしてくれた。デリケートといわれるバラを我流に育て十余年。愛情と根気のたまものかと、ひそかに思われる。
 つい先日、仲良し4人組に会費500円で声をかけたところ快く応じてくれた。総菜2.3品とつまみ、そして肝心の飲み物のビールと焼酎は私のおごり。ささやかな友情のバラ祭りをした。気を許しあった親しい友人のいることを改めて感じた私たちのバラ祭りであった。卒寿を超え、五月晴れの下、心に残るひとときであった。
  鹿屋市 森園愛吉 2012/5/25 毎日新聞鹿児島版掲載

時間に挑戦中

2012-05-26 09:40:51 | はがき随筆
 時間に開放される人生が来る。よし、あれをやろう。これをやろうと長期計画。そして1カ月。いざ、時間が持てれば面倒くさい。ノウテンキと知っているか、娘に聴いたが? 「老後は何か趣味を持ちなさい」と妻は言う。趣味がないのは団塊の世代に言われる言葉だ。俺が見本だと答えた。
 今も昔も一日は24時間。時間は前にも増して憎い。新聞、ラジオ、テレビに運勢がある。ヒントはこの中にあるはず。「よーし」。だけどな、30分もたてば脳みそは空っぽ。なるようになるさ。脳天気かな。無頓着かな。と考える完全無職者です。
  姶良市 山下恰 2012/5/24 毎日新聞鹿児島版掲載

4回目

2012-05-26 09:23:13 | はがき随筆


 朝早くからおにぎりと麦茶を準備、父母と3人で4回目のツワ採りの日だ。今年はこれで最後なのだ。行く道々、ピンクや白い花、山ツツジの赤い色が目を楽しませてくれる。遠くへ目を向けると、ドングリの花やケセンの芽がこんもりと波を打ち、紅葉や柿の若葉が実にすがすがしい。ツワの若芽も少なくなってしまったがまわりのイチゴや桑の実、名もない草花も今だとばかりに伸びていた。手さげ袋いっぱいになったところで、見晴らしの良い高台で開聞岳を眺めながらの昼ご飯をいただいた。もちろん、ツワのつくだ煮も添えて。
  肝付町 永瀬悦子 2012/5/23 毎日新聞鹿児島版掲載