はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「突然のことで………」

2012-05-17 23:06:09 | 岩国エッセイサロンより
2012年5月17日 (木)

    岩国市  会 員   横山 恵子

「何の親孝行もせんうちに逝ってしもうて」と悲痛な声で弟は父の手や頭をなでた。

4月12日、不慮の事故と聞き、急ぎ病院へ到着した時は臨終間近。なぜ? 茫然自失。

翌日、湯灌し、化粧してもらった父の穏やかな顔に、皆救われる思いがした。たった1週間前、ひ孫のために植樹しながら「成長するのを見たいもんじゃが……」と言っていたのに。

76歳まで働き、何事も全力投球。背中で生き様を見せてくれた。父さんには到底及ばないけど、恩に報いるよう生きていくよ。ありがとう!! 母さんのことは心配しないでね。 

 (2012.05.17 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩國エッセイサロンより転載

弥生さん

2012-05-17 16:31:46 | はがき随筆
 弥生さん。頭脳明晰の55歳。小柄でチャーミング。ショートカットヘアがよく似合う。趣味は油絵・読書・庭いじり。人の悪口は言わない。そんな彼女も、中学生の時にお父さんを亡くし心身ともに大変な時期を過ごした。だから、今でもこつこつとユニセフ募金を続ける。スーパーで、お年寄りに進んで手を貸す。私にも他の誰にでも「ありがとう」をよく言う。
 「貧乏人の坊ちゃん育ち」の私には、彼女は恋人から妻へ、そして今では母へとかわった。俺、一体何やってんだか……。でも「ありがとね。この世でいちばん長く居る君!」。
  霧島市 久野茂樹 2012/5/16 毎日新聞鹿児島版掲載

辰年の女

2012-05-17 16:24:18 | はがき随筆
 以前、母にあきれられた。「あんたの同級生はよく離婚するねえ。辰年のせいだろうか」
確かに妹の同級生で離婚した女性は少ない。私の友人たちは20代の頃から30代、40代、50代になっても、夫の年金を半々にして熟年離婚しようと思っている人もいる違いない。
 いや離婚云々の前に結婚していない同級生も結構居る。これは辰年のせい? 単に男運が悪い? 決断力があってうじうじしない友人が多い。決して悪くない性格だと思うのだが。友よ、今年は再生の年。竜のごとく天高く駆け回る良き人生を!
  鹿児島市 種子田真理 2012/5/15 毎日新聞鹿児島版掲載

学習しない

2012-05-17 16:16:37 | はがき随筆
 新緑がすがすがしい季節になると足もとの雑草も生き生きと伸びてくる。最初は浴室用の低い腰掛けを移動しながら、1時間ぐらいを目安に進む。所が雑草の伸びは待ってくれず1回が2回になる。
 きれいに除草した後を見る達成感がたまらず、気付けば1日に3回の草取り。肩や背中が痛くなる。ここまでと草に手招きされた夕方の、あのひと踏ん張りがよくなかったらしい。まだ残っている雑草を見ないように、温泉に体をほぐしに行く。以前にもこんな事があったと思い出す。決して若くはならぬ体。ほんと学習しないものです。
  霧島市 口町円子 2012/514 毎日新聞鹿児島版掲載

バラの花

2012-05-17 16:09:58 | はがき随筆
 「美しいものにはトゲがある」の代名詞がバラの花であるが、美しいが故に、他の花が嫉妬のまなざしを向けないように神様がトゲを作られた気がする。
 30年ぶりに訪れた公園は全くなく、モダンな花園になっていた。
 子供と一緒に遊んだ霧島ヶ丘公園は、人影もまばらで寂しい限りであった。
 大きなタワー風建物から見る眼下の錦江湾だけが昔のままであった。
 霧島場丘公園がバラ園に嫉妬のまなざしをらないか心配になった。
  鹿児島市 下内幸一 2012/5/13 毎日新聞鹿児島版掲載

卒寿の舞

2012-05-17 15:03:20 | はがき随筆
 京都から3歳のひ孫も来て、母の卒寿の祝いに花を添えた。一挙手一投足が愛らしく、集まる人たちを魅了してやまない。主役の座を取られた母は、所在投げの様子である。
 縁もたけなわとなり、母が卒寿の舞を披露する。そこかしこでよろめくも「90歳にしては達者だ」と、花も上がってやんやの喝采を浴びる。主役の座をひ孫から取り戻した母は、ほおを紅潮させて舞い踊る。
 93歳の伯母や87歳の叔母を「いつまでもお達者で」と送り出す。ここに集まっていただいた方々が、5年後も元気でありますよう。切に願ってやまない。
  出水市 道田道範 2012/5/12 毎日新聞鹿児島版掲載