はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ナニワイバラ

2010-04-18 15:35:39 | はがき随筆
 庭に出ると垣根にあふれんばかりに白いバラが咲いている。花を見ているうち遠い日を思い出す。高校のテニスコートの奥のフェンスに白いバラが咲き誇っていた。卒業の日、小さな芽をつけた枝をそっとチリ紙に包んで持ち帰り、鉢に刺した。運良く根付いて三年後には我が家の垣根を見事に花で囲んだ。
 ある年帰省すると改築で垣根が無くなっていた。当時何というバラか名を知らなかった。六年前ナニワイバラと知り、やっと苗を入手、昨年咲き始めた。真白の五弁に黄のしべ、見入るうちにコートを走る乙女、球のはじける音が聞こえるようだ。
  出水市 年神貞子(74) 2010/4/18 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はバセさん


走り雨

2010-04-18 15:28:09 | はがき随筆
 急な雨でゴミ袋を持ったまま公民館の軒下に入った。雨粒を眺めながら「いつ雨やどりしたかなあ?」と考えた。
 小学生のころは困っていると必ず母さんが傘を持って来てくれた。母さんと歩く傘の下が妙に明るかったなあ。あのころは母さんもまだ元気だった。大学時代、雨の中を平気で歩いていたら見知らぬ女性が傘に入れてくれた。聞くと友だちのF君の姉さんの友人だった。甘い香りを今でも覚えている。あれ、どこだっけ? なかなか思い出せんなあー。
 気がつくと雨は止んで水たまりには、青空が映っていた。
  出水市 中島征士(65) 2010/4/17 毎日新聞鹿児島版掲載