はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

犯罪被害者支援

2009-04-07 11:25:12 | かごんま便り
 独り身遺族の申請拒否――。1月15目朝刊社会面の見出しをご記憶だろうか。

 母を殺害された鹿児島市の40代女性が、単身者用の空きがないなどの理由で県営住宅への入居を認められなかったという記事だ。犯罪被害者等基本法が公営住宅への優先入居を保障し、国交省が災害被災者用住宅の転用など柔軟な対応を自治体に通知しているにもかかわらず、である。記事には県の“お役所的な”な対応を「法の趣旨に反している」と批判する識者談話も添えられていた。

 I週間後「一転して入居提案」の見出しとともに、県が初のケースとして目的外使用を認め、女性に入居を提案したことを伝える記事が載った。女性はその後、無事に入居し、新たな生活の一歩を踏み出したという。

犯罪被害者に施策の光が当たり始めたのはつい最近だ。加えて4年前に施行された基本法の趣旨すら徹底されているとは言えない状況である。

 例えば、犯罪被害者の心のケアや法律相談に応じる機関は各都道府県ごとにあるが、あくまでボランティアの任意団体。県内の犯罪被害者の自助グループ「南の風」の二宮通代表によると、今回のケースではそうした機関から有効な支援は得られなかったという。質的にも量的にも「犯罪被害者支援」と銘打つのにほど遠い実情は、もっと認知される必要がある。

    ◇

 心温まる報告を一つ。記事で窮状を知った読者から複数の寄付の申し出が毎日新聞に寄せられた。福岡本部に寄託された匿名の寄付には、米国の童話作家の、次の言葉が添えられていた。

 「生きていれば、落ち込むこともあります。状況を好転できると思ったら、ぜひ努力すべきです。でも、変えられないなら、それを受け入れて歩み続けるしかありません。何があっても『生きていることを楽しもう』という気持ちを忘れないで」

鹿児島支局長 平山千里 2009/3/6 毎日新聞掲載





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