どんがらがん

「どんがらがん」(アヴラム・デイヴィッドスン 河出書房新社 2005)。

奇想コレクションの一冊。

このシリーズはへんてこな短編を紹介してくれるので、へんてこ小説好きとしては、大いに助かっている。
でも、なかでもこの本は、際立ってへんてこ。
しかも、へんてこなことをへんてこに語るので、たいそう読みにくい。
作者はどうしてもストーリーだけを語ることができず、その場の思いつきみたいな知識や描写をいれてしまうよう。
おかげで力強さもあるんだけど。

印象に残ったものをいくつか。

「ゴーレム」
老夫婦のもとに、おまえたちを滅ぼしにきたと告げるゴーレムがやってくる。
でも、老夫婦はおしゃべり好きで耳を傾けない。
たいへん楽しい、ファルス小説。

「さもなくば海は牡蠣でいっぱいに」
安全ピンと自転車の繁殖習性を探求した名作、とこれは序文から。
まさに奇想小説。
よくこんなアイデアを小説に仕上げられるなあ。

「クィーン・エステル、おうちはどこさ?」
一種の怪物小説。
メイドのクィーン・エステルの、勤め先のお屋敷での顛末が、いきいきした口調で語られる。
たいへんよくできた短編。

「そして赤い薔薇一輪を忘れずに」
陰険な雇い主につかわれているチャーリーが、ふしぎな書店でさまざまな本の話を聞く。
この本についての話がまたへんてこ。
ラストは考えオチになっている。
タイトルもうまい。

印象に残ったとなると、すべてがそうだけれど、なかでもこの三つ。
ほかに、これまた奇想小説の「ナイルの水源」も捨てがたい。

殊能将之の解説がていねい。


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