倣古抄

「倣古抄」(高橋睦郎 邑心文庫 2001)。

「倣古抄」で「はうこせう」とふりがながふってある。

これは詩集。
タイトルの「古に倣う」のとおり、日本語の古い詩形を縦横につかっている。
祝詞、神楽歌、催馬楽、謡曲、狂言、常磐津、地唄…
なんだか、途方もないことをしている。

すこし引用してみよう。
旋頭歌、という章の、「いざ子ども」。

「いざ子ども頭(こうべ)旋らせ眦眥(まなじり)あげよ
庭燎(にはび)今炎盛りぬ夜雲焦がしぬ」
……

教養がないので、この詩がどれほどよいのか見当がつかないのが残念。
著者による全作品の解説がついてるのがありがたい。
でなければ、とりつくしまもなかった。

巻末に、ひとりで連歌をした「独吟歌仙」が載っている。
どんどんイメージが変化していくさまが楽しい。
歌でつくられた絵巻物のよう。

それにしても、なぜこんな詩集をつくったのだろう。
あとがきで、著者はこんなことをいっている。

ことばは死者が残してくれたものだから、死者の力を借りることで言葉はさらに生きてくるはずだ(大意)。

友人や知人が亡くなると、著者はかれらとの別れのたびにこういうのだそう。

「よかったら僕の家に来てもいいよ。その代わり僕の仕事を助けてほしい」

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