壜の中の世界

「壜の中の世界」(クルト・クーゼンベルク 国書刊行会 1991)。

訳者は前川道介・三宅晶子・竹内節。

ドイツの短編小説集。
ショートショートのような短い短編が21編入っている。

作風は幻想的だったり、風刺がきいていたり。
飛躍に富んだストーリーをパワフルな語り口で読ませる。
すごいすごい。

最初の2編が特に印象的。
「壜(ラ・ボテリヤ)」
ボトルシップの話が南国の湾に停泊する船の話にするりとすりかわる手際がじつに見事。

「蒼い夢」
夢で会った青年に会うため時間を越える少女の話。
最初から最後までたるみなく、生き生きしている。
この本でいちばんかも。

あと、「優雅な泥棒たち」も。
泥棒に入られても警察に知らせず、馴れることにした偏屈な主人と、自粛しながら盗みをつづける泥棒たちの話。
これは幻想譚というより、奇妙な味というべき作品。

そうだ、「黒人の料理女」も面白かった。
月に一度、客に毒を盛ることを条件にした黒人の料理女と、その晩餐にかよう食通の話。

優雅さのなかに、すこし諦念が混ざっているよう。
それが静かな印象をかもしだしている。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )