苦手

2014-06-19 20:02:37 | 塾あれこれ
TVのバラエティで、彼の養老孟司先生が
「一番困るのが、私バカですから、っていう学生」と
言われていました。

居直ってしまって、出来ない処から動こうとしない
・・大学生にもなってそれでは、手の打ちようが
ありません。

もちろん、口には出さず腹でそう思って、努力しない
人も大勢いるでしょう。

その人へ「本当は自分のことをそう思ってるだろう」とも
言うわけにはいかないので、難しい。


おだてても怒っても通じません。

特に近年、自分のための勉強、という気持ちが薄く
「頑張ってみよう」がない学生生徒が目立ちますね。

この感想は多くの賛同を得られると思います。


が、よく考えれば、かなりの人間はそうかもしれません。

(オレは英語がどうも)(私は数学オンチで)
(国語って苦手だな)(絵が下手で)・・・

思い込んでるだけかもしれないのに。

という私も「苦手」が山ほどあって努力不足でした・・・

塾業界に入って、苦手でも易しい処を勉強し返すと
「なんだ、なぜこんなことに苦労してたんだ」

結構多くの苦手がただの思い込みかもしれません。

その原因の一つが、点数をつけられてしまうこと、
それで点が低いと「苦手だ」となっちゃうのです。

点数化なんて、たった一つの視点から、とある傾向を
数値化して見せるにすぎません。

学校でも塾でも、点数化してオニの首をとったように
「評価」しますが、大学入試のペーパーテストむけの
チェックでしかないものが殆どなのに。
ずいぶんと偏った数字です。

それが証拠に東大卒の出来の悪いの。
20年近く数値の洗礼をうけて、あれです。。。


したがって、現行の数値優先主義は人に寄り
損得がでることは間違いないでしょう。

問題は、損をしかねない人のケアです。

小学校高学年から中学にかけて「苦手」が多く発生し
また固定しやすいと思います。
それにどう手をうつか?

①様々にありうる原因の特定
②粘り強い対策

いずれも長いスパンが必要です。
また保護者や家族の協力も。

集団授業でも対策は可能ですが、できれば個別が
ありがたい、と思います。
我田引水になりますか?

といっても個別でも失敗しやすいので要注意です。


とある生徒は算数が苦手
計算はある程度(難しめでも8割以上)できます。

新しい単元の理解度もよろしいし、応用も易しければ
できます。
算数数学の「才」は悪くなさそうでした。

ところが年に何回かのテストで、算数の偏差が悪い。
ふだんあれだけ真剣に取り組んでいるのに。

個別授業を進めながら、チェックを入れてゆきます。
(弱点探しを気取られてはいけません)

計算が「分かって」いない。

割り算の意味
小数とは何か
分数の考え方  などなど

教師の説明が上滑りして捉えられている。

難しい哲学の本(入門くらいでも)を読むときに
活字は追っているのだが、意味がさっぱり、
そんな状態でしょうか。

本人は、説明を受けている間は分かっている、と
思えているので大変です。
「直ぐ後に練習問題やって、できるもん」

テストでは、できません。
学力の剥落の一種か?

何カ月か間をおいてみて以前に「分かって」いた
ところをノーヒントでやらせ→できない。
本人がやっている解き方を尋ねると
みごとに、以前の「正解」を忘れています。

図を描いてみるとか、基本的なアプローチの手段までも
忘れ果てているのです。

そんな状態で上に新しいことを積み上げても
次第に「苦手」になっていきますよね。


端折りますがこの生徒の場合、勉強とはマルをとるゲーム
、マルになれば瞬時にすべて終了の世界、だったのです。

宿題に苦手な問題が含まれている場合、完璧にやって
提出します。
家で教わってきたのですね。

それでも、出来るようになれば構いません。
ところが、塾ですぐに同じような問題をさせると
まったく手が出ないのです。

家でじっくりと考えてみるなんて方法は使えない
ことが分かりました。


上に兄弟がいたことも大きく影響したでしょう。
下の子はムリに背伸びしやすいのです。

保護者の視線もあったでしょう。
「上のはすぐにできたのに、この子は・・
 いい、これはこうやるの、覚えなさい!」

。。このあたりからまず改善!

分からなければすぐ教える、学校などのような接し方
では、上記の欠点は治りません。
あれが勉強だと思っているのですから。

まず、自分で考えようとしなければなりません。
本当に分かっているか、自分に問いかけねばなりません。

通常の授業に上記の練習を組みこむのが大変です。

時折、思うように進まない時間帯ができます。
「マルをとることが勉強」の子にはシンドイですね。

しかも、あなたのドコソコを直さねば、とは
伝えられないのです。
(うちの塾の勉強のやり方)はこうなんだ、という
形しか見せられません。

小6も終わりかけて、やっと一定の効果が表れ
自分で考えることをし始めました。

さっそくお母様にも手紙で上記を詳しく報告。
「じつは、やっと山を超えてくれましたので・・・」


しばらくして唐突に電話があり
「塾を明日から辞めます。
 こどもが先生を嫌いだと言いますので」

あの、手紙のとおり、まだ課題は多いのですが・・・
ま、一番大切な第一歩はクリアーしたから良いか。

「でもね、お母さん、あなたも子供をスポイルしてた
 かもしれませんよ。
 これからの幸運をお祈りします。」
・・・って言ってみたかったなあ。