『金・銀・銅の日本史』

2010-11-02 14:01:27 | 本の話
「私が電子顕微鏡でようやく確認できるほどの細かい
作業を、手元を照らすライトもなく、拡大するルーペも
なく、満足な道具もないような状態で・・すべて手の技
でこなす工人の超人ぶりには脱帽するしかない」

上記は、村上隆著、岩波新書『金・銀・銅の日本史』の
引用です。

たとえば、島根県・上塩冶横穴墓群から見つかった「金糸」
6世紀後半のものらしいのですが
金含有量95%以上の材料をリボン状にカットしそれを
撚って中空のパイプ状にしているのです。

金属の厚さが15ミクロンでパイプの径が150ミクロン
1mmの針金だって私は細いと思うのに。

ちなみに15ミクロンの厚さとは家庭用アルミホイルと
同じだそうです。

(宇宙ヨットのIKAROSの「帆」は厚さ7.5ミクロン)

他にも古墳出土のイヤリングなど高度な熔接技術が
使われているなど、古代の技術も素晴らしい・・らしい。

古代の技術は大陸から伝来し、これらの埋葬品の生産地が
どこであるかは、よく分からないようです。

まあ、どこの産であれ大変な技術を、手技で行うことは
素晴らしいことですね。


筆者は文化財の金属などを科学調査する専門家。
電子顕微鏡やX線を使った機器で材質分析をされます。

古代~中世~江戸時代、明治以後の技術、と進みますが
今までに若干知っていると思っていた世界でもいかに
古い知識であったか、愕然としますね。

たいへん勉強になる本でした。