新・ほろ酔い気分

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世代間対立を煽り立てるな!

2015年02月02日 19時45分19秒 | 身辺雑記

 「選択」は愛読している月刊誌だ。「三万人のための情報誌」を標榜していて、幅の広い情報を掲載している。

 2月号の「巻頭インタビュー」に、「シルバー民主主義が国を滅ぼす」というインタビュー記事が載っていた。

 井堀利宏氏(東京大学大学院経済学研究科教授、1952年生まれ)に対するインタビューだ。

 記事は、「高齢者層が政治を左右する『シルバー民主主義』が問題になっています」という質問から始まっている。そもそも「選択」誌側に、『シルバー民主主義』を問題視しているところからのスタートだ。

 それに対する井堀氏の話としては、「一票の格差の問題を見ても、重点的に議席が配分されている地方部では高齢化が進んでいるため、より高齢者の意向が反映される。日本は移民も受け入れていないため、今後20年はこの傾向が続き、高齢者層に政治が壟断され、・・・・財政や年金・社会保障の問題は解決しずらい」と述べている。

 つまり政治家が、「あからさまな高齢者向けのリップサービスに明け暮れているので、年金制度の改革もできないでいる」のだそうだ。

 そのくだりの中で、井堀氏は、「私の試算では、今すぐに年金給付額を三割カットすれば、年金財政は継続できる。しかし、それを高齢者が受け入れるとは思えない」、と言っている。そりゃァそうだ。どこまで知恵を絞ったか分からないのに、いきなり「年金の三割カット」と言われたのでは、高齢者だって納得できない。「私の試算では」とわざわざ言いながら、「三割カットすれば制度は継続できる」という言い分を展開する学者先生のいい加減さに呆れてしまった。そんな経済学ってあるのか。笑わせてもらっては困る!

 さらにインタビューは、「政治における世代間の力の片寄りは解決できますか?」と続いた。

 その質問に対し井堀氏は、「私はかねて世代別選挙区の導入を提案している」、とのこと。さらに、「そのくらいしないと政治、『老人の代表』だらけの政治によって生まれたこの国の歪みは直らない」、とも述べている。

 このような記事を読んで、私は腹が立つより恐ろしくなった。少なくとも指導的立場や教育者的立場にある者が、「高齢者によって政治が壟断され」と言ってみたりして、まるで世代間の対立を煽っているようなものではないか。まったく危ない。

 世代間による利害の対立や地域間による対立はあるに違いない。性による利害の対立もある。学歴による利害の対立もある。人種による利害の対立もある。企業規模による対立もある。

 それらの「対立」を調整するのが政治であり、あまり期待していないが、ひょっとしたら、学問にもその役割があるのではないか。

 井堀氏は、「高齢者は現役世代によって支えられているのだという事実を真摯に受け止めなければならない」とも言っている。

 そんなことは言われなくても分かっている。ワケの分からない後輩たちより、しっかり受け止め、弁えているつもりだ。

 先輩たちが残した戦争の負の遺産を引き継ぎ、ここまで再建したのが私たちの「親世代」以降の、いわゆる「高齢者」だ。

 高度成長期となりバブルがはじけ、溺れそうになったのも高齢者だ。

 少子高齢化になってしまったこの現実に対し、戸惑いながらも、責任の一端を感じているのも高齢者だ。

 そんな高齢者に対し、「日本人は一度壊さないと本当の危機を実感できないのだろう。幸いなことに、敗戦や震災から立ち上がった日本人は、立て直すことにかけては定評がある。この国の老人を見ていると、いっそ壊すしかないとさえ感じるという高説を開陳して、インタビュー記事は終わっている。

 これが東京大学大学院教授の言説なのだ。暗澹とした気分に襲われたのは、むしろ悪し様に罵られた高齢者の私のほうだ。このような浅薄な学者や教育者がのさばるこの国の将来に、希望があるのだろうか。

 高齢者が国の改革の邪魔になるのだとしても、悪し様に罵るのではなく、お得意の明晰な頭脳と先見性を駆使して、じっくりと調整に汗を流すのが、あなたがたや政治家の役割ではないのか?

 かつてサンフランシスコ講和条約を締結する際、「中ソ抜きの条約締結」に反対した東大総長に対し、時の吉田首相は、「曲学阿世の徒」と断じたことがあった。今の私は、ついそのようなことを思い出してしまった。

 こんな記事を「巻頭インタビュー」とするようでは、「選択」の見識もそんなものなのか?

 

 

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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Unknown (太郎ママ)
2015-02-03 07:16:06
う~ん、学者さんでも考え違いはあるものですねぇ。
みながみな同じように考えて実行に移すとなれば、どうなるのでしょうねぇ?
長生きを喜べなくなります。
いや、あらゆる苦労をしてきたのですから、しぶとく楽しんで長生きしましょうね。
まさに曲学阿世 (ひよどり)
2015-02-03 09:54:37
太郎ママさんへ
あのような記事を「巻頭言」に書く不見識には驚きました。
いろいろな意見があっていいと思いますが、問題は書き方です。
高齢者を悪し様に罵っても何も生まれません。
対立感情が生まれるだけです。
つくづく「曲学阿世」を感じます。

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