足慣らしのつもりで、少し歩いた。
カメラを持参しての散歩であれば、あっちへよろよろこっちへよろよろ。つまり無目的の徘徊。
そんな気分で歩いていたら、フェンスから顔を覗かせている薔薇に出会った。
ツンとお澄まし。それでいて、チラリと私に流し目を送ってきた。
いやいや、「流し目」とは私が思っただけのこと。薔薇にしてみれば、そんなつもりはなかったはず。
薔薇と言えば、花期は初夏。俳句では「夏の季語」となっている。
しかし、冬の薔薇は独特の雰囲気を漂わせる。それを愛でて、「冬の薔薇」も季語になっている。
豪華さは夏の薔薇に敵わない。妖艶さにおいても夏の薔薇が数段上だ。
それでいながら、厳冬期の薔薇は私を強く惹きつけて止まない。
凜としている?いやそれだけではない。
あの美しさの裏には、何を潜ませているのだろうか。
私はまだ解を得ていない。
殉死といふ狂気に生きて冬薔薇 鵯 一平
(じゅんしといふきょうきにいきてふゆそうび)