新・ほろ酔い気分

酔っているような気分のまま、
愚にもつかない身辺雑記や俳句で遊んでおります。
お目に留めて下されば嬉しいです。

ひっつき虫の旅立ち

2014年12月08日 20時22分30秒 | 身辺雑記

 私の名前はひっつき虫。正式な名前は知らない。仮に知ったとしても、実生活に役に立つわけではない。

 ここのところ数日、老人の座布団の上で息を潜めていた。いや、むしろ動きようがなかったのだ。 

 今日は旅立ちのチャンス。老人が、カメラやレンズを選び始めた。何処かへいくつもりらしい。

 女性との長電話など、気になることは幾つかある。老人が手術のために入院するらしいことも懸念事項だ。

 しかし、もはや逡巡すべきではない。来春に芽をだすため、新しい天地を求めなければならない。

 敢然として、私は老人のズボンにひっついた。

 着いたところは、自然公園であった。老人がよく行くところらしい。 

 最初の一枚は上の写真だ。老人の思惑どおり、公園の池には多くの水鳥集まって来ていた。

 ワイワイガヤガヤと喧しいこと喧しいこと。

 ところが老人は、一羽の鴨を追いかける。妙な習性だ。

 

 上の写真はその内の一枚。群から離れ、なにやら思索を重ねている様子で、まるで哲学者だ。

 付近の畑に、幾本かの柿の木があった。

 今年は実が多い。野鳥も食べきれないらしく、まだまだ沢山の実がついていた。

 にもかかわらず、老人は孤独な柿の実を選んで撮影している。妙な男だ。

 老人が次に選んだのは、枯れ切ったカラスウリだ。

 なぜこのような被写体を選ぶのだろうか。

 気がついた。老人が選ぶ被写体は、彼の胸底の姿なのかもしれない。

 

 烏瓜の辺りで、私は老人と別れることにした。

 老人に関し、懸念事項は幾つかあった。しかし今は、それにかかわってはいられない。

 私は私の生き方を生きなければならない。それが天命というものなのだ。

 思い切って跳んだ。

 

 

コメント (3)
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