高校以来の親友にQがいた。
Qは私より早く、昭和35年頃に結婚した。お相手は、下町育ちのすこぶる美人。
数年後のあるとき、奥さんから電話があった。
「ダンナの暴力には耐えられません。別れさせて下さい!」
聞けば、野球のバットを振り回すほどの暴力だったらしい。
「Z{私のこと)がいいと言うのなら別れてやるっ」
Qはそのように言っているとか。
Qに確認したら、同じ話になっていた。妙な話だったが、私は同意した。二人は離婚した。
Qはその後再婚した。かなり年下の娘さんであった。
男の子3人を設け、順調な家庭生活を送っていたはずの二人。
ある深夜、奥さんから電話があった。
「助けて下さい!」という緊迫したものだった。Qのひどい暴力沙汰だったのだ。
それ以来、このようなことが幾度もあった。
深夜、20キロほどの道のりを、Qの家に急行したこともあった。
見かねた私は、二人に離婚を勧めた。しかし、別れなかった。
ほとほと手を焼いた私は、Qとの友人関係を断った。
つまり、二人から逃げたのだ。
あとで耳にした噂によれば、腎臓を病んだQは、奥さんの介護を受けながら、透析やその他の治療を受けているとのこと。
「子供が成長したら、必ず離婚します!」
当時の奥さんはそのように言っていたが、別れなかったのだ。
私はQたちののもめ事に耐えられなかった。だから友人関係から逃れ、絶交した。
友人として、それでよかったのかどうか。疑問がないわけではなかった。
年老いた今、落ち着いた二人でいるのであれば、それはとても嬉しいことだ。
あの頃、あの二人から逃げ出した私を、私は責めたりもしている。
私は冷たかったのか、意気地なしだったのか?
夫婦のことは分からない。
そんな経緯で、私は親友を一人失った。