鮭の遡上する栗山川
鮭の遡上する南限として位置づけられ以前から小中学校の教材として、稚魚の放流は行われてきた。昨年栗山川下流の横芝堰が50年ぶりに魚道をつけて鮭が多古南玉造の堰まで100匹以上遡上した。そこから1.5キロ上流に山倉神社があり、鮭を奉納したという言い伝えがあり鮭を燻製にして健康祈願に出している。12月の第一日曜日には毎年鮭祭りを行っている。1昨年この南玉造の堰のところで鮭が産卵したのをきっかけに上流の山倉神社近くまで鮭を上げたいというのが鮭を見学に来た人々の願いになり、栗山川漁業協同組合や市町村が協力して魚道の設置について検討した。
昨年の暮れは温暖化の影響か?遡上する鮭の数は大幅に減少した。そして魚道も予算がつき仮の魚道を付けたが、大量の水量で鮭はそこを登れなかった。
栄町のイネ不耕起栽培を行う水田の近くの川でも鮭の遡上が話題になっているが、不耕起・湛水田で藻類が繁殖し水質が浄化されるににつれ、鮭が安心して遡上できる環境づくりが期待されている。
また過去にはコウノトリやトキの飛来を裏付ける千葉県の地名にも残っていたり、文献上でも登場する。千葉県の水田は基本的に湿田で、湛水田が当たり前だった。戦後の基盤整備で、冬期の乾田化が追求されてきた。その結果が河川の水質汚染であり、印旛沼・手賀沼の汚染、九十九里海岸に流れる河川の汚染であり、近海魚の減少につながっている。 不耕起・湛水でイネを栽培することで河川や地下水の汚染が解消される。重金属類の不溶性化が水田の湛水化で還元状態になることで可能になり、イネ自体も安全安心の美味しい米となる。1昨年あたりから千葉県香取郡東庄町夏目の堰にコハクチョウやカモが、昨年暮れから旭市三川にコウノトリが1羽であるが来ている。おそらく過去の渡り鳥たちの飛翔が当たり前であった時代の遺伝子が、たまたまこの地域の環境を蘇らせたのであろう。折角渡来した環境が餌もなく餓死したのでは可愛そうである。この地域でも不耕起・冬期湛水の米づくりが始まることを願わずにはいられない。(終わり)
野鳥のこと
狭い谷津田ではあるが、秋以降古米を水田に散布するとどこからか情報を得てカモが数十羽飛来することもある。アオサギ、シラサギ、ルリビタキ、シメ、カワセミ、セキレイ、ハクセキレイ、サシバ、オオタカなどが時期、時期に観察できる。魚類ではメダカ、ドジョウ、クチボソ、タイリクバラタナゴ、ニゴイ、両性類のカエルでは日本アカガエル、シュレーゲルアオガエル、日本アマガエル、ヒキガエル爬虫類のトカゲなど
カブトムシ、クワガタの繁殖
水田の休耕で20年続けた結果、湿地となりヤナギの木が10年生で20~30本あったがそのうち10本程度残しておいたがそこにカブトムシやクワガタの発生に気がついた。1年で100匹前後は発生し、子どもたちの自然観察に大切な場所になっている。暫く観察していると落ち葉を積んだ場所にコメヌカを振って土を少しかぶしておいた場所にカブトムシの幼虫が沢山生息していた。ヤナギの木があるだけではだめで、産卵できる場所も必要である。カエルについても日本アカガエルは産卵時期が2~3月でその時期に湛水状態の水田がほしい。日本アマガエルの越冬は、たまたま里山の散策道を作っていたら5匹、6匹と山のかなり上で土に潜っていた。こんなふうに生き物の生息には谷津田とその周辺の里山が関係している。部分だけを見るのではなく周辺環境全体を見ていく必要がある。桜宮の自然公園の場合、南北に谷津田が道路で切断され、排水溝はU字溝で作られているため天井田は閉鎖環境として20年間も下の環境との接触が絶たれている。そのため絶滅した生き物もある。ホタルやカワニナの生息は今のところ見られない。不耕起湛水水田では巻き貝が沢山生息しているからホタルの発生の可能性はある。
刈り取り時期の水の管理について
この3年間は手刈りを基本にしていたが、バインダー刈りを試している。コシヒカリの場合は9月刈り入れになるが、この時期台風が大量の雨をもたらしたりして、イネの倒伏と気温の関係で穂発芽を経験して、谷津田では水が常時あるので8月上旬出穂を始める頃水を切りはじめる必要がある。多古の谷津田では暗渠施設もないので水を止めても乾くのに2週間はかかる。土が乾いて亀裂が出始めるのには3週間かかる。バインダーが入れるのにはこの固さが必要である。不耕起の場合湛水を継続することで表面のトロトロ層の下はしだいに固くなる。その後雨が降っても土はすぐには軟らかくならない。コシヒカリの場合、多古の地域では9月上中旬が刈り入れになるので、8月上旬水を切るとしても、正味水が切れるのは1ヵ月程度であるから、1年の12分の1であるから刈り入れ後直ちに湛水に戻せば、生き物への影響は少ないと考える。雑草の発芽は土が乾けば発芽しはじめるが畑雑草はその後の湛水で、枯れてしまうし、コナギの場合、カモが来て食べるようである。
岩澤信夫さんの理論では収穫期直前まで湛水を勧めている。これは米の味が良くなるということであるが、コシヒカリの場合、多古の谷津田では太陽光線が50%に抑えられ風の影響が少ないので、草丈が130センチにもなり、倒伏の可能性がある。倒伏すれば高温時の9月であるから、水に浸かれば穂発芽をまぬがれない。そんなわけで倒伏しない手当てとして8月上旬から水を切る必要がある。ただ多古のイネの根を観察すると不耕起栽培の香取の藤崎さんのイネの根と比較すると根の量や色の点で見劣りがする。3年間の栽培を通して何故かその疑問は完全には解けていない。
これに対して古代米はミドリマイであるが、コシヒカリと同じ田植え時期であったが、出穂が9月上旬であるから9月下旬まで湛水し、その後水を切って10月中旬イネ刈りとなる。コシヒカリと異なり倒伏の心配はないが、バインダーの利用を考えると20日程度は水を切って土を固める必要がある。
桜宮自然公園をつくる会は平成13年11月に立ち上げ、18年で5年目になるが元々退職者を中心に設立されたものだから、しだいに高齢化の影響も避けられない。自然公園としての形もできあがり、住民憩いの場、子どもたちの学習の場、環境保護の研究の場など特徴を生かした活動をすすめるために、都市からの若い人々、団塊の世代の定年退職者を呼び込んでの活動も少しづつ始めている。谷津田の復元作業はこうした意欲のある、自然再生に理解のある人々が、現地の地権者の古老の意見を聞きながらの作業で生き生きしたものになっている。