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読み物としての短い日本通史

2018-10-02 20:59:05 | 読書ノート
山本博文『流れをつかむ日本史』角川新書, KADOKAWA, 2018.

  日本通史。歴史が苦手だという中学生の娘に、角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』を買い与えて読ませてみたのだが、そこそこためになったらしい。ただし、娘曰く15巻もあるので長すぎ、時代の順番がわからなくなるという。全体を把握できる簡単な通史も欲しいというので、シリーズ監修者が執筆したという本書を入手してみた。ただしこの新書版はオリジナルではなく『流れをつかむ日本の歴史』(KADOKAWA, 2016)の改題・改訂版であるとのこと。

  新書版で317頁と短く、系図や機構図のみ掲載で他に図表はない。参考文献はリストではなく文中で提示している。教科書のように「重要事項が満載である一方で記述が無味感想」というわけではなく、論争のある事項にもきちんと言及しており、さらに簡単に著者の見解を加えているところが特徴だろう(ただし短すぎてその根拠がわからなかったりするときもある)。

  個人的にイメージを訂正させられたのは飛鳥・奈良時代。仏教が普及した平和な時代かのように漠然と思っていたが、皇位継承が安定しない反乱と陰謀の血なまぐさい時代だったようだ。聖徳太子が和の精神を説いたのは、当時みんなそんな精神を持っていなかったから、ということになる。平安後期と鎌倉後期も皇統が不安定な時代だったらしく、天皇の地位がしばしば戦乱の原因になっていたことがわかる。

  近年では扱いにくくなっている近現代史(特に第二次大戦)の記述だが、どちらかと言えば日本側の事情に同情的である。この点は好みがわかれるところだろう。全体としては「流れをつか」ませることに成功していると思う。
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