沖縄 8 Scene

沖縄で生まれ沖縄に生きる
      8郎家の日記

息子に『三国志』

2020年08月08日 | 10郎

 前回お伝えした通り、アマゾンで購入していた懐かしの歴史漫画超大作『三国志』(作・横山光輝)の全60巻が届きました! 特別仕様の紙ボックスに入っています。かっちょい~。「決戦地図」というおまけ付きです。

 15巻ずつ4柱になって入っていました。ボックスの表には「大迫力の1万2059㌻」と打たれています。10郎、これから1万2059㌻ものドラマティックなストーリーが待っているぞ。1㌻、1㌻、大事に読めよ。

 愛息へのプレゼントではありますが、父8郎も自らの少年時代を思い起こして感無量でした。

 

 さて最初に、『三国志』そのものが全く分からないという方のために、鈍才💀軍師8郎による『三国志』簡単解説です。

 『三国志』とは・・・・

 中国の後漢末期の群雄割拠時代から、魏(ぎ)・呉(ご)・蜀(しょく)の三国が覇権をかけて争っていた約100年間(西暦180年頃~280年頃)の興亡史を記録した歴史書で、ほぼ同時代を生きた陳寿が記しました。これが、いわゆる正史とされるものです。その後、明の時代になって、これをベースに羅貫中らの手によって『三国志演義』が上梓されました。こちらは正史とちがってエンターテイメントの要素を多く取り入れており、「7割史実、3割創作」と言われているようです。日本では戦後1940年代に、文豪・吉川英治が『三国志演義』をベースに小説『三国志』を書き上げ、中国の古代歴史ロマンを日本の大衆文化に浸透させました。それまで、ただの暴君・悪役だった曹操を魅力的な英雄として生まれ変わらせたともされています。1970年代になって、漫画家の横山光輝氏が吉川版三国志をベースに漫画として新しい『三国志』を世に送り出しました。ド迫力の絵が加わったことで当時の8郎ら昭和の子供たちの間にも浸透するきっかけとなったのです(ちなみに8郎は吉川版三国志も中学生のときに完読しております)。近年ではゲームから入る子供たちが多いそうですね。

 お分かりいただけましたでしょうか? ちなみに当ブログでいう三国志とは基本、横山先生の漫画版を意味しています。

 その横山版『三国志』は8郎個人的にも、人生で一番思い入れのある漫画と言えます。というのも中学生時代に堅物の父が唯一購入を許してくれた漫画だったからです。本当は、ちゅーばーぐゎーしーして当時はやっていた『ビーバップハイスクール』やゲームソフト『ドラゴンクエスト』を買いたかったのですが(笑)、極貧の家計もあって高圧的な父には言えませんでした。しかし社会人になって、沖縄版〝富裕層の高学歴〟の人たちと職場を一緒にすると、意外にも三国志ファンが多いことに驚きました。あの時「俺の周りでは誰も読んでない」という思いをしていた人がこれだけいたのにも同様に驚きましたね(笑)

 全60巻が一気に手に入った愛息。ご機嫌です。左手骨折で野球の練習も行けてないので、読む時間は取れるかな! そもそもコロナの第二波で、野球も中止ですが。

 高さ10数㌢、幅100㌢強の壁ですが、壮観です。まさに漫画版、万里の長城! 

 さぁ、昭和世代おっさんの三国志の魅力について語りたいと思います。1万2059㌻とはいきませんが、長くなりますので興味のない方はページアウト必須です。3つあります。

 まず1つ目は、登場人物の魅力あふれるキャラクターでしょう。登場人物は総数千人を超え、有名武将だけでも100人といわれるほど。みな個性あふれる人物です。人気ランキングをネットで検索すると、あるサイトの結果では、1位はもちろん天才軍師・諸葛亮孔明(しょかつりょう・こうめい)で、2位が関羽雲長(かんう・うんちょう)、同列3位が曹操孟徳(そうそう・もうとく)劉備玄徳(りゅうび・げんとく)趙雲子龍(ちょううん・しりゅう)となっていました。納得の順位です。

 個人的には多くのファン同様、諸葛亮孔明が一番好きです。まずは、小国ながら大国の魏・呉を相手に一歩もひるまないどころか、奇想天外な作戦でやりこめる希代の戦略家としての才能です。大国を相手に今すぐには勝てない、とし、当面は中国を3つに分け、力を蓄え、機を見て統一を図るという壮大な「天下三分の計」を劉備に示すなど、長期スパンに立った戦略の立て方は、8郎が今学んでいる『企業経営理論』の戦略論にも通じるものがあります そして、仁義です。自分を重用してくれた恩師に対する忠義を生涯忘れない生きざまが、かっちょいいのです。自分の才能に確固たる自信を持ちながらも、この方がいなければ今の自分はなかった、と生涯感謝を忘れない心。男らしいっす。8郎的にも三国志の真の主役は孔明だと思います。孔明亡きあとの最終巻までの数巻は姜維(きょうい)などの後継スターも出てきはするのですが、太陽が沈んだあとの夕暮れ時のような何ともいいようのない虚しさを感じますので。

 そして、勃興期の主役とされる劉備玄徳。人徳のあるリーダーとして描かれています。息子くらいの年齢の孔明を三度も訪ねて軍師として招き入れる謙虚な心と懐の深さは、後世に『三顧の礼』として語り継がれています。義弟の関羽が呉に殺された怒りから、無謀な仇討ち「夷陵の戦い」を敢行して大惨敗を喫してしまう人間らしさも魅力的です。その部下を思う姿勢が、部下から慕われる人徳でもあったのでしょう。

 そして劉備のライバルとして基本悪役に描かれる曹操。若かりしころ、顔相師から「乱世なら奸雄になる」と評され、「それもよかろう」とほくそ笑えんだふてぶてしさも最高です。「このくっそきたねー世の中にきれいごとなんかいらねー。誰よりもきったねー手段を使って誰よりも先に天下獲ったるわ!」という割り切った生き方(笑)もいいですね。波乱に満ちたドラマティックな人生は、三国志の真の主役といわれるゆえんです。「出世モノ」が大好きな日本人作家なら天下統一モノとして主役に置いたでしょうね(でも、だとしたら三国志はここまで人気は出なかったはずです。弱いものが強いものに挑むストーリーこそが千年も読み継がれている理由だからです)。

 ほかにも語りたい人物が星の数ほどいるのですが、時間がないので3人で止めておきます(笑)。

 

 2つ目は、名場面、名ぜりふにあふれているところです。劉備関羽張飛の三人が「乱れた世の中を建て直そう」と義兄弟の契りを交わす「桃園の誓い」に始まります。残虐王・董卓を倒そうと各地の豪傑たちが集まった「虎牢関の戦い」は前半最大のオールスター戦となります。曹操にヘッドハンティングされた関羽が、5関所6武将をぶった切って(怖)劉備の元へ駆け戻る「関羽の千里行」、劉備孔明を招へいする「三顧の礼」はともに日本人好みの義理人情の世界です。劉備と曹操の初の全面対決となった長坂の戦い」では、劉備軍は敗退するものの張飛が「われこそは張飛なり。死にたいやつから前に出ろ!」と文字通り一騎当千で曹操軍を退け、趙雲曹操に奪われた劉備の息子・阿斗をたった一人で救出する大活躍を見せます。そして何といっても三国志の最大のヤマ場である「赤壁の戦い」! 弱いものたちが力を合わせ強いやつをやっつける名場面であると同時に、三国志史上最大のオールスター戦でもあります。「関ケ原の戦い」の百倍くらいのスケール感にあふれています。実際に勝利に導いたのは呉の軍師・周瑜の作戦らしいのですが、横山漫画では風を読んだ孔明の手柄のように描かれています(笑)。孔明が主役となる後半は悲壮感ただよう名場面が増えます。孔明が非情なリーダーシップを見せる「泣いて馬謖を切る」、打倒魏を狙った「五丈原の戦い」で死期を悟った孔明が、敵の軍師・司馬懿仲達を混乱させる秘策を部下に残しておく「死せる孔明、行ける仲達を走らす」など名場面にキリがありません。後述する「出師の表」は涙なしには読めないと言われています。“3割創作”だと言われても、すでの多くの三国志ファンの中では確固たる歴史ドラマとして脳裏に刻み込まれているのです。

 ほかにも裏切り、賄賂、忖度野郎、駆け引きなどなど熾烈な権力争いも徹底して描かれており、サラリーマン社会に生きる現代人にとっても数えきれないほどの教訓にあふれています。 

 3つ目は、60巻を読み終えたときに胸にこみ上がる壮大な無常観と言えるでしょう。魏、呉、蜀の三国が激しく天下統一を争うのですが、結局3国とも野望を果たせずに滅亡し、新興国に天下をもっていかれる、という興亡史。結局この争いはなんだったのか、と子ども心にも考えさせられるはずです。戦争の虚しさ、盛者必衰の理を学ぶことができます。文武両道の象徴であり三国志屈指のスター豪傑でもある関羽が、呉にとらえられ、あっけなく斬首されるシーンでは中学生8郎も大いにショックを受けました。孔明が志半ばに五丈原の戦いで病死する場面もそう。これは一人の漫画家の空想によって世界がつくられた、そんじょそこらの漫画では体感できません。“7割史実”ですから!

 下写真は第1巻に登場する「桃園の誓い」の名場面です。いつの時代も若き日の志ほど美しいものはありませんね。その後どろどろの世界に足を踏みいれるだけに、若き日のピュアさは年々輝きを増します。8郎も年を取りました。。。

 いろいろ三国志愛を語ってしまいましたが・・・以上になります。

【閑話休題】日本の歴史に卑弥呼が登場するのは、孔明が死んだ数年後です。卑弥呼が魏に親書を送ったことが、中国サイドの『魏志倭人伝』(教科書で習いましたよね)に記されているようです。中国三千年の歴史は深すぎる! 中国とまともに戦っては勝てませんよ。

 

 ・  ・  ・  ・  ・

 

 さて、47歳8郎が少年時代に『三国志』から学び、今もなお、人生訓として残っていることは、愛息10郎に学んでほしいこと、そのものでもあります。それは、中国3千年の歴史でも、豪傑たちの生きざまでも、サラリーマンの世界をうまく渡る権謀術数の世界でもありません。

 

 それは、

自分の人生を俯瞰的に見ることができるようになってほしい

ということです。

 

 ひらたく言えば、『三国志』を読むことで、壮大な歴史において一人の人生なんてちっぽけなものだということを体感してほしい、ということです。もちろん、ちっぽけな人生を卑下しているわけではありません。どんな人間だって一分一秒、一生懸命生きています。

 ただ、人間はどうしても自分だけの価値判断で悩んでしまいます。特に10郎がこれから迎える思春期はそうです。それは悪いことではなく人間の成長として必要な時期ですが、そこで間違った悩み方をしてしまうと、その後の人生で悪い方向に行ってしまうことも残念ながらあります(それはその人だけを責めても仕方ありません)。そんな精神状態のときに親や教師が一方的に「頑張れ」と言ったところで、どうにもなりません。ただし、そこで本人が自発的に視点を変えて自分を俯瞰的に見ることができれば、自分から方向性を変えることができると思うのです。ひらたく言えば、自分の中にもう一人の自分を持つ、ということです。自分の価値観だけで悩む自分だけでなく、歴史という広大なスパンの中にいる自分を俯瞰的に見ることができる自分、です。8郎も苦しい時はそうやって乗り越えてきたつもりです。

 

 10郎君もいつかは自分の力ではどうにもならない絶望の淵に立たされることもあるだろう。心が折れそうになったときこそ、自分はここで立ち止まるだけの男なのか、そう自分に問いかけることができる男になってほしい。どんな時でも、時は進み、世界は動いているんだ。それに気づける男になってほしい。気づいたらどうすればいいか分かるだろ? ちょっと休んだあとは、立ち上がるしかねーだろーが!🔥

 

 天下をとった武将ではなく、右肩下がりの会社に勤める庶民派サラリーマンから息子へのメッセージです。

 つまり、父ちゃんが言いたかったのは、自分の価値観だけで悩んで終わってしまう、自分の可能性を自分でしぼめてしまう人間にだけはなってほしくない、ということです。自分の考えだけで生きていけると思うな。世の中には人の数だけ考えがあって、どれが正しいのかなんて、誰にも決められない。ただ、その矛盾と不安だらけの中でも、自らの道を切り開き前に進むためには、自分の信念を持たなければならない。そしてその信念を貫ける男になってほしいのだ。それこそ、最後に勝つ男だと思う。

 そんな父の夢想に感化されたのか、超大作『現代版三国志』の執筆に着手した小さな巨匠です。登場人物はなぜか全員同じ顔をしたイケメンです(笑)。まだ10歳なので、権謀術数の世界にはなじめず、豪傑たちの一騎打ちのシーンが大好きなようです。現在好きな豪傑は張飛だそうです。劉備を助けるべく、武器をもった男たちを素手で殴り倒す初登場シーンは、いつ見てもかっちょいいからね。酒好きがたたり部下に裏切られる人生(泣)もなんだかも憎めません。 

 クソ暑い8月に熱い話をして申し訳ございません。そろそろ終わります。おっさんの三国志愛にお付き合いいただきありがとうございました。

 さて、劉備が「三顧の礼」で孔明を招いたとき、そして、その孔明が天敵の魏を討つ〝北伐〟の決意と亡き劉備への感謝の意をつづったかの有名な「出師の表」(すいしのひょう)を書き上げたとき、ともに47歳だったそうです(現代でいうと還暦あたりでしょうか)。時代が違うので比較するのもなんですが、同じく47歳の庶民派サラリーマン8郎も、今年を意味あるものにしたいと思います。もう8月だから半分過ぎてるけどね~。

 これから妻を含む家族3人、「三国志」祭り(布団に入って漫画を読む)を始めますので、今日はこれにて。


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