goo

模擬試験

 6年生の夏休み以降はいろいろな塾で多くの模擬試験が行われます。この模擬試験も、最近ではコンピューター処理をされて、大変カラフルな成績表がでてくるようになりましたが、どうもこの合格可能性という数字に惑わされてしまったり、また具体的なイメージがわかない方が多いのではないかと思います。仕組みを簡単にご説明しましょう。

 テストを運営する塾では毎年、追跡調査を行います。そして模擬試験の結果と入学試験の結果の相関を出すのです。その結果として、ある学校についてある偏差値以上の子どもの80%が合格している偏差値をモデル化して80%ラインとして決めます。それ以上の偏差値をとれば、合格可能性は80%以上ということになります。同様に20%くらいが合格している偏差値を下限でとって、80%から20%までの間を正規分布でとらえて、合格可能性を算出します。この途中にはそれぞれの塾の考え方や計算の仕方があって、いろいろですが、大雑把にいうとそんな感じです。ですから、合格可能性で90%を出す塾はあまりありません。だいたい80%でお茶を濁すのですが、子どものすることですから、そのくらいが妥当ではないかと私も思います。

 で、この偏差値にどのくらいの信憑性(しんぴょうせい)があるのか?という問題になりますが、まず、ここでお断りしておかなければならないのは、この模擬試験には前提にまったく無理があるということです。それは、各学校の入試傾向をまったく反映していないということです。

 最近の入試問題は本当にバラエティー豊富です。記述式の問題もあれば、選択式の問題もありますし、それこそそれぞれの学校の先生が工夫をこらして問題を作られています。それを1つの形式の試験で合格判定をすること自体に無理があるのです。ですから、その前提をまず考えてください。模擬試験の内容と入試問題がある程度似ているのであれば、その合格可能性には多少信頼性が増えるでしょうが、まったく違う形式の試験であれば、ひとつの参考にするにとどめてください。

 例えば私が教えていたクラスでは、ある大手の模擬試験で合格可能性が50%未満の子供たちがたくさん合格していました。それは、その試験に問題があるのではなくて、模擬試験の内容と入試の内容がまったく違うからです。ですから、私はその学校の出題傾向にあわせた問題を独自に子どもたちにやらせながら、合格可能性を量っていました。

 さて入試問題が多少似ているということを前提にどこまでの偏差値なら受けていいのか?という問題が出てくるでしょう。私は50%がひとつの目安ではないかと考えていました。50%を切ると、これはやはりしんどくなるかなという感じです。ただ、これはぜひ認識していただきたいとのですが、模擬試験の日は入試の日ではないということです。子どもたちは先にもお話した通り、入試が近づくにつれて力をつけていきます。秋も早い段階では、まだまだエンジンがかかっていないことのほうが多いものです。ですから、これから伸びる部分も当然考慮にいれて、合格可能性を判断しなければならないのです。

 また順位を気にされる方がいらっしゃいます。例えば、ある学校の希望者だけで順位をつけてくれるテストがあります。大変有効なデータ-に見えますが、これもあまりあてにはなりません。(そんなことをいうと、怒られてしまいそうですが。)例えば1番の子と300番の子ではずいぶん差があるように感じられるだろうと思います。しかし、実際に教えてみると、そんなに大した差はないのです。むしろその間に300人の子どもたちがいるから、そう見えているだけの話ではないでしょうか。実際に、子どもたちの成績は上下します。偏差値など、10くらいすぐ変わってしまいます。むしろ親が判断しなければならないのは、そういう可能性の議論よりも、出題された問題なのです。

 模擬試験は、非常に良い勉強材料です。なぜならば、子どもたちが真剣に解いているからです。この問題はぜひ、復習してください。そして大事なことはなぜ間違えたのかということをしっかりつかむことです。間違えるにはいくつか原因があります。まったく、見当がつかなかったのか、ミスをしたのか、ミスもどういう原因から起きたのか。例えば、問題の読み違いだったのか、それとも計算間違いだったのか。

 例えば算数でよくあるのは、最後まで問題を読まずにおこるミスです。子どもたちは夢中で問題を解いていますが、えてして「できた!」と思ったときにミスがおこります。あともうひとつ過程を踏まなければならないのを忘れてしまったりするからです。

 そのミスの原因をつきとめたら、次は対策です。例えば、条件に下線をつけるようにするとか、答えが出たと思ったら、もう一度問題を読み直すくせをつけるとか、それぞれ子どもたちのミスの原因によって対策を立てていきます。それでもミスはなくなりません。でも10%程度の発生率にしておくことは可能です。

 また、塾はこれまでの入試問題を分析しながら、出そうな問題をチョイスしていますから、それを勉強するというのは、非常に良い勉強なのです。

 模擬試験をどのくらいの頻度で受けたらよいかという質問も良く受けました。調べてみると6年生の秋には毎週受けようと思えば受けられるくらいの頻度で模擬試験が行われています。しかし、それではあまりにも大変で、復習や過去問の勉強が追いつきません。月に1回くらいのペースでよいのではないかと思います。11月くらいは月2回くらい受けても良いかもしれませんが、そのくらいにしておいてください。

 試験を受けて、成績が悪かったら本人が自信をなくしてしまうのではないかと思われるお母さんもいらっしゃいますが、それは過保護。あくまで模擬試験なのですから、悪かったら、

「本番でなくてよかったね」

くらい、言ってあげればよいのではないでしょうか。成績に一喜一憂するよりも、できなかった問題をいかに復習していくかということに力をいれて、模擬試験を活用してください。くれぐれも、成績で悲観しないように、気をつけてください。これは特にお母さんに多い症状です。

田中貴の動画教材
コメント ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 夏休みの勉強法 高望み傾向 »