私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

ハイチのコレラ禍(2)

2011-10-05 10:31:05 | 日記・エッセイ・コラム
 John Mekalanos教授の名前に出会ったのは、イジリ・ダント(Ezili Danto, 通常の名前は Marguerite Laurent) という異色のハイチ女性の書いたものの中です。この人物については以前にも書いたことがあります。今、アメリカ国内にあって、ハイチ人たちのために最も力強く発言しているのはこの女性でしょう。イジリ・ダントというのは、もともとはハイチ土着宗教の闘う女神の名です。独り身でありながら数人の愛する娘があり、娘たちのために勇敢熾烈に闘う女神だそうです。
  マルゲリト・ローランはコネティカット大学法学部で法学博士の学位を取得し、Haitian Lawyers Leadership Network ("HLLN") という組織の議長を勤め、人権擁護弁護士として活躍しているのですが、その一方、ステージ・ダンサー,詩人、著作家としても知られているようです。大層な美形でもあります。詳しくは次のサイトを訪れてみて下さい。:
http://www.margueritelaurent.com/
ハイチのコレラ禍についての彼女の発言は
http://www.ezilidanto.com/zili/2011/05/un-brought-deadly-cholera-disease-to-haiti-blames-victims/
にあります。国連当局の反応の遅さ、特にハイチの上下水道衛生向上の熱意の欠除が厳しく批判されています。クリーンな水を供給するための水道パイプには全く出費がない一方、コレラによる死骸を収容するために、20万個もの死体バッグが購入され、メカラノス博士や、例の“ハイチ貧民の救いの神”ポール・ファーマー博士などは、現実には医師として実施不可能と知りながら、一般論としてワクチン免疫の必要性を説いていることを,彼女は言葉厳しく糾弾しています。世界中から集まった大震災救助義援金の九割以上が米国の私企業やの大型NGOsの懐に転がり込むということのようです。20万個の死体バッグ購入もその典型的な一例でしょう。
  John Mekalanos 教授が製薬会社や軍部とどのような関係にあるかは、インターネットで調べれば直ぐに分かります。私にそのチェックをやる気にさせたのは、もう一人のハイチ人女性 Dady Chery です。彼女の拠点の一つは Axis of Logic という反マスメディアの姿勢を明確に取る報道サイトで、その常連コメンテーターとして名を連ねています。彼女はこのサイトにフランスのエクス-マルセーユ大学教授ルノー・ピアルー(Renaud Piarroux) の長いインタビュー記事を発表し、私はそれを読んで前回のブログを書いたのでした。このサイトでは極めて興味ある投稿記事や世界ニュースを読むことが出来ます。近い将来にその幾つかを報告するつもりです。
  John Mekalanos 教授 はハーバード大学のコレラワクチン開発の指導者的立場にあると思われますが、幾つかのバイオテクノロジー会社の創始者でもあり、特にPharmAthene という会社は生物(細菌)兵器に関する事業を専門としていて、当然ながら米国政府、特に軍部との関係は密接だと考えれらます。そのため、ハイチの一部では、今回の大規模のコレラ禍を対細菌兵器防衛の予行演習としてJohn Mekalanos 教授たちが利用しようとしたのではないか、という疑惑まで語られるようになっています。私個人としてはそのような無残なことは信じたくありませんが、前回のブログで紹介したScience Watch によるJohn Mekalanos 教授のインタビューでの彼のnonchalant な語り口には確かに一種の不気味さが漂っています。自国の黒人兵士たちを性病対策の生体実験に使った過去が実証された米国軍部のことですから、ありえないことではありません。とにかくアメリカという国は開国以来一貫して恐るべき残忍性を発揮し続けて今日に到っています。内的にも外的にも実に残忍な国であります。

藤永 茂 (2011年10月5日)



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2 コメント

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日本の商業メディアには「調査報道」の伝統が乏し... (おにうちぎ)
2011-10-05 14:20:29
日本の商業メディアには「調査報道」の伝統が乏しく、また記者の署名記事も多くはありません。公的機関の発表を、多くは記者クラブを通じて集め、それを並べて是としているメディアが真実探査に有効であるわけがありません。
(東京新聞の特報部の努力はこうした歴史や風潮のなかで例外的です。)
「私の闇の奥」を、わたしは一種の調査報道のようにみなして読んでいます。関係者へのインタビューこそありませんが、主にインターネット上の極めて広範囲の情報を集めては分析して真実を探るという困難を日々自身に課しておられます。
本ブログには繰り返しさまざまな女性の傑物が登場します(悪女もですが)。わたしもかねがね世界的にみて女性発信者には優れた人びと、信頼できる人びとをよく見かけると思っています。むろん国内でも信用できる女性発信者を追っています。今回の登場人物もそうですね。そして、同時に、AxisofLogicというサイトの存在を教えていただき、感謝しています。
科学者も研究者も自分の利益のためとあれば没倫理のウソを言うことは(もともといくらもありましたが)、その大規模なこと長期的なことを原発事故が世間に教えてくれました-よい(?)社会教育でした。権力の周辺にある者たちの言葉に対する軽信がこの先大幅に減ってほしいものです。ハイチ、商業新聞には昨今ほとんど載らない事項ですが、そこでの真実を探ってゆくと、とんでもない事象に出会うようです。John Mekalanos 教授 が記事通りであれば、あやしげな行動のようです。本人がどこまで自覚しているかは分かりませんが、実質がそういう意味(対細菌兵器防衛)を持つことも大いにありそうです。米軍には自国兵士を核兵器実験施設で放射能にさらした歴史があります。そしてヒロシマ被爆者を治療目的でなく調査のためだけに調査した長い症状収集の実績があります。
次の記事は(表題「36万人の子供の被曝調査に執着する日本のメンゲレ」はともかく)日本でも同様なことが現に起こりつつあるのを見ることができます。立ち位置というか、方向というか、それが根本からずれているのを感じます。
http://kaleido11.blog111.fc2.com/blog-entry-886.html
このような問題提起もまた商業メディアでは見ることがありません。
本ブログについては、結果として成った記事を読むだけでなく、それが生まれた経過もまた想像しながら読んでいます。
そして一方、トーマス・クーン解体新書の方の進展も期待しています。 -以上
おにうちぎ 様 (藤永 茂)
2011-10-08 21:05:56
おにうちぎ 様

重い内容のコメントと、励ましの言葉を頂き、有難うございました。コメントの形でなく、ブログの記事の一つとして、別途にお答えします。

藤永 茂

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