私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

ブログを書くということ

2016-02-29 22:46:27 | 日記・エッセイ・コラム
 この『私の闇の奥』というブログの初回の日付は2006年2月15日で、この回は470回目になります。何の目的でこのブログを始めたかを知っていただきたいと思いますので、初回『コンラッドの「闇の奥」を読む』の内容を再録します。:
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 ポストコロニアルという言葉、何とはなしに世界の現状に対応しているかのようにひびくこの言葉は、世界史の時空で途絶えることなく綿々と続いているコロニアリズムを巧みにごまかし、覆い隠す役目を果たしています。1975年のチヌア・アチェベの抗議に端を発したコンラッドの「闇の奥」をめぐる盛んな論議は、この問題に深く深くかかわっています。
この小説の新訳を出版(三交社)する機会をとらえて、私はこの小説をたたき台にして、色々な話題を取り上げ、日本のコンラディアンの方々のご意見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。
 まず、最初の演題は「エリオットもアチェベも勘違いした」です。「闇の奥」の中で黒人たちが口にするコトバ - その最も有名なのは「Mistah Kurtz he dead」 - が片言の英語であったと二人とも思ったようですが、それらは片言のフランス語で発せられたものをコンラッドが英語に移したものと私は考えます。その詳しい理由は次の機会に。
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つまり、このブログは、コンラッドの「闇の奥」を広く読んでいただき、広く議論していただきたいという思いから出発したものでした。それから一年間ほど、日本のコンラディアンの方々からご意見をいただくのを待ち続けましたが、ほとんど全く反応がなく落胆いたしました。私がコンラッドの「闇の奥」を過度に政治的に読んだことがいけなかったのでしょう。
 気がついてみると、この頃は10年前に比べて、ポストコロニアルという言葉はすっかり使われないように思われます。それに変わって、ネオコロニアルという言葉の方がよく使われています。植民地化時代は全く終わってはいないということでしょう。
 私のブログにコメントを送ってくださる方々はごく少数ですが、最近、ホセ・ムヒカに関して、桜井元さんと佐々木恭治さんとのお二人から、久しぶりにコメントをいただきました。このブログの出だしの頃から読んでいただき、励ましていただいたことに感謝しています。佐々木恭治さんのコメントから、最近、日本でホセ・ムヒカが一種のブームになっていることを知り、ちょっぴり嬉しくなりました。佐々木恭治さんからのコメントをここに再録させていただきます。:
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藤永先生お元気になさっておられることこのブログで拝察するばかりです。
久し振りに投稿します。
さてホセ・ムヒカさんのことは高橋源一郎さんが数ヶ月前にラジオで紹介していましたので、本と絵本を二冊づつを買い本一冊を親戚の女性に絵本一冊をアフリカでNPO活動している人に送りました。
本も絵本も感動する言葉でいっぱいです。
「ムヒカさんあなたは本当に偉い人です」と心から賞賛と敬意を表します。
世界中の政治家いや政治業者どもに何十編も聞かせてあげたい、また日本国の銭金ばかりを追いかける人々にも読ませて、目を覚まさせたいと思います。
しかしそんな連中にはムヒカさんの言葉は馬の耳に念仏、蛙の顔に小便でしょうが、中には心入れ換えてムヒカさんみたいになる人が出てこないとも限りません。
私達が尊敬する藤永先生がムヒカさんに惚れるのは宜なるかなと思います。
『世界一貧乏な大統領のスピーチ』はこのブログを読まれている方は是非とも購読して読まれること推奨します。
佐々木恭治
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私はこの5月で90歳になります。ブログをなぜ書き続けるのか? 英語に「bad taste in the mouth」という表現があります。現在の私の心境です。

藤永茂 (2016年2月29日)