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『西洋美術史入門 実践編』池上英洋

2014-04-25 | books
ローマのサンティニャーツィオ・デ・ロヨラ教会の天井画はアンドレア・ポッツォによるもの。300年以上前に描かれたものなのに、遠近法を巧みに使っただまし絵になっているそうだ。ロヨラという名前でピンときた人。そう、その通り。イエズス会を作ったイグナティウス・ロヨラの名前。イエズス会の教会なのだ。描かれたのはアメリカ・ヨーロッパ・アフリカ・アジアいう「四大陸の寓意」であって…

という話から始まる本書は「西洋美術史入門」の続編。うそーん、と思うほど面白い。

イエズス会に批判的な見方をすると、天井画はある地点に立つとだまし絵に見えるので、強制してどこかに来させること自体がイエズス会の独善的な考え方を表すと考える人もいるとか。(うそーん)

カマッジョーレという北イタリアの小さな町の教会。キリストの磔刑像はずっと目を閉じていた。1999年に修復されたものは目を大きく見開いていた。元々は目を開いたものとして作られたのだけれど、閉じた状態に塗り替えられ(どうしてそうなったのかは本書に書いてある)、800年ほど閉じた状態で信者に信仰されていた。元々の目を見開いた状態に戻すのが「正しい」のか、ずっと地元の人に信仰されていた状態のままにしておくのが「正しい」のか。というようなことを考えるヒントがある。(どっちだと思います?)

他には、クリムトやゴッホに対して日本の絵画が与えた影響(クリムトってあまり興味がなかったのだけれど、文章を読み画像を見ているうちにすごく好きになってしまった)とか、「美術の何を見るか」「さまざまな視点で見る」ことを教えてくれる。

この先生の大学の授業を受けたいなとやや真面目に思った。

西洋美術史入門・実践編 (ちくまプリマー新書)

今日の一曲

西洋、ウエスト。Pet Shop BoysでWest End Girl



1985年の作品だけど、Too many shadows, whispering voices. Faces on posters, too many choices.という歌詞は現代にも通じるように思う。SNSとか。

では、また。




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