頭の中は魑魅魍魎

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『シティ・オブ・ボーンズ』マイクル・コナリー

2015-02-25 | books
丘の上で人骨が発見された。調べてみると、20年以上前、しかも10歳ぐらいの男の子のもの。強烈な虐待の痕も認められた。解決するのが難しそうな事件にLAPDハリウッド署のハリー・ボッシュは挑む。遺骨の発見現場の近くに住む男には、幼い男の子に対する性的いたずらの前科があった。事情を訊くと、男は自殺してしまった…

魂が震えた。なんという小説なのだろうか。

真の悪を世界から取り除くことはけっしてできない。せいぜい、深淵の暗い水のなかへ水漏れするバケツを両手で抱えて果敢にとびこんでいるといったことろだ。

少年の事件、しかも虐待の痕がある。読みながら、なんとか真犯人を捕まえてくれと望む。そして起こる悲劇。人が死ぬ。

真相に近づいたと思えば、その手からこぼれ落ちる。苦悩するボッシュ。二転三転する巧緻なプロット。

ミステリーとしての醍醐味を充分に楽しめるだけではなく、ハードボイルド的な主人公の苦悩と前進をも思う存分堪能できる、傑作だった。

解説で、関口苑生氏が「おお、これほど早く次を読みたいと思わせる作品も今までになかった」としている通り、本当に次が讀みたくなる。

ハリー・ボッシュ・シリーズはこれで8作目。読んできてよかった。

シティ・オブ・ボーンズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

「ナイトホークス」
「ブラック・アイス」
「ブラック・ハート」
「ラスト・コヨーテ」
「ザ・ポエット」
「トランク・ミュージック」
「エンジェルズ・フライト」
「夜より深き闇」

今日の一曲

ボッシュが好んで聴くのはジャズ。Miles Davisで"So What"



では、また。
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