頭の中は魑魅魍魎

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『インド・クリスタル』篠田節子

2015-02-23 | books
惑星探査機につける送信機には、温度変化に強く安定性に優れた水晶振動子が必須である。山梨に拠点をおく、山峡ドルジェは超高性能の水晶振動子の開発に成功している。その開発には元となる天然の水晶が必要となる。しかも超高品質のものでないといけない。先々代が会社に残していた水晶を探すと、条件に合うものが一つ見つかった。そこには「インド・クントゥーニ」と記されていた。社長の藤岡がインドでそれらしきものを探す。そして見つかった超高品質の水晶。藤岡は発掘し、日本へ輸出できるのか。合法的に持ってくるのは難しい。それにインドでのビジネスはややこしい。地元民、政治家、NGO、州政府、過激派、ライバル会社…

これはなかなか面白かった。

インドという国について色々考えさせられる。カースト、先進国に食い物にされる体質、宗教、ビジネス慣習。特に、インドで仕事をしようと思っている人は絶対読んだ方がいいと思う。それだけじゃなくて、漠然と海外で仕事をしたいと思っている人や、何の仕事がしたいのか自分には分からない人にも、何かヒントを与えてくれると思う。いや、働くとはどういうことなのかという根源的なことについても考えさせられる。自社の利益のためなのか、やりがいのためなのか、自分の金のためなのか。インドという、我々の常識が通じない所だからこそ、「普遍的なルール」とは何なのかについてもまた考えてしまう。

「失礼な言い方になってたいへんに申し訳ないが、日本人は自分の考えを持っていない。だから人に何か忠告されたり、非難されるとすぐに心がぐらつく。もちろんあなたは別ですよ。我々、インド人に対しては、そうした非難や脅しは無用だ」

不思議な力を持った少女が登場するのだが、彼女のエピソードははたして必要だったかと思うのだけれど、あれがないと篠田節子らしくないような気がする。

インドクリスタル

今日の一曲

クリスタルと言えば、これしかない。クリスタルキングで「大都会」



初めてこの曲をテレビで観たとき、背筋がゾクッとしたことを今でも覚えている。そして今聴いても、やっぱり凄い曲だ。

では、また。
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