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『日本語の歴史』山口仲美

2015-02-27 | books
漢字をどのように自分たちの言葉として使いこなせるようになったか、ひらがな、カタカナはどのように生まれたか、平安時代から鎌倉時代にかけてどのように言葉が変化していったか、近代の言葉はある程度江戸時代に完成したと言ってもよいのはなぜか、江戸の言葉と上方の言葉の違い、言文一致体の浮き沈みなどなど、とっても分かりやすく面白かった。

例えば、高校で習った人がたぶん多いであろう、「ぞ、なむ、や、か」→連体形、「こそ」→已然形という「係り結び」というルール。それぞれの違いなんて考えたこともなかった。

指し示して強調する「ぞ」

その竹の中に、元光る竹「ぞ」一筋あり「ける」 
: その竹の中に一本あったのは、根元の光竹だった。

念を押して強調する「なむ」

むかし、男、武蔵の国までまどひ歩きけり。さて、その国にある女をよばひけり。父はこと人にあはせむといひけるを、母「なむ」あてなる人に心つけたり「ける。」父はなほ人にて、母「なむ」藤原なり「ける。」さて「なむ」あてなる人にて思ひ「ける。」
: 昔、ある男が武蔵の国までさ迷い歩きました。そして、その国に住んでいる女に求婚しました。女の父親は、別の男と結婚させようと言ったけれど、母親はデスネ、高貴な人のと心掛けていたのです。父は、並みの身分の人で、母親はデスネ、藤原氏出身だったのです。それですからこそネ、高貴な人にと思ったのでした。

「や」と「か」は疑問と反語で「こそ」は、取り立てて強調する。

我「こそ」死な「め」
: 私こそ、死んでしまいたい

なるほど。

しかしいつの間にか係り結びを使わなくなってしまった。
1.鎌倉時代から室町時代にかけて、武士的な強さやたくましさを求める時代になると、「~デネ~」という女性的な表現の「なむ」が段々使われなくなってきた。
2.「ぞ、なむ、や、か」がなくても文末を連体形で終える文が登場した。
3.なので、終止形が連体形に吸収された。(我々の使う「する」は、終止形も連体形も同じになった)
4.主語を表す助詞「が」が使用されるようになった。(花こそ無けれ、とは言うけれと、花がこそ無かれとは言わない。「が」を使うのなら「こそ」は不要になる)

てな具合で係り結びが現代語から絶滅していったとのこと。なるほどー。目からウロコが落ちまくった。

日本語の歴史 (岩波新書)

今日の一曲

本とは関係なく。Simple Mindsで"Don't You Forget About Me"



では、また。
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