今年初めての松山の夜。
今宵はどこに寄ろうかな?
寿司が食べたい気もしたが
やはり知ってる店にした。
二番町の次郎浜坊へ。
久しぶりの訪問である。
板前の息子さんの大将は
少々貫禄がついたような体つき。
美人で可愛い店長は相変わらず
ひょうひょうと働いていた。
お変わりなしといったところかな?
遅れてやってきたお母さんは
ちょっと表情が以前と比べて
緩やかになったように見えた。
ちょっと歳とったかな?
目の前の水槽では
大きな鯛とカワハギが泳いでいた。
これが見ているだけで
結構楽しいし興味深い。
特にカワハギ。
背びれ、腹びれに胸びれを
まるで精密なゼンマイ仕掛のように
小刻みに動かしてバランスをとり
海中に浮かんでいる。
全体にひょうきんな姿態だが
正面から見る顔つきは
結構はっとするほど精悍である。
ゆっくりとひとり酒しながら
しばしこの水槽を見とれていた。
このカワハギという魚
鑑賞魚としてもなかなか値打ちである。
かんぱちの造りとかまの塩焼きを頼む。
ここは板前仕込みだから料理は
値段の割りに値打ちがある。
この日のカンパチも上質であった。
刺身ひとつで居酒屋との違いが際立つ。
やはり板前料理は違うなあ。
それでいて何より値段が
お手頃なのがこの店の魅力である。
喉うるおしのビールを
中瓶で呑んだ後は
伊予の酒“雪雀”を熱燗で。
もちろん一合で済めば苦労はしない。
続けて土佐鶴を二合ほどひとり酒。
カンパチを楽しんだ後は
ボードの品書きに書かれた
“生わかめのしゃぶしゃぶ”
が目に留まった。
へえ、面白いなあと思って注文。
お母さん曰く
この時期だけの逸品だそうだ。
美味しいという。
出てきた具材を見れば
それは何のことはない。
鍋の具のお肉なし!
といった感じなのだが
この生わかめのしゃぶしゃぶ
シンプルな料理だが何とも絶品の味わい!
ポン酢で食べるのだが
ささっと湯にくぐらすと
瞬時に鮮やな深緑に変わる。
この変化がなんとも興味をひく。
まず目で楽しみ、そして
口に入れると
「こりっ、ずるっとした」
ぬめりの食感がなんともたまらん!
「これは家でもできるなあ。」
ヘルシーで酒の肴にはお薦めである。
大阪恋しいお父さんが
この日もカウンターで熱燗を
ひとり飲む姿を見かけなかったのは
残念だった。以前
私の話し相手をしてくれたのだ。
今年もまた松山の夜を
何回楽しめるだろうか。