十薬というのはある意味貴重で可哀想な草です。
何が貴重な存在かというと、まず何処にでも生えている草でありながら、色んな薬効や用途のある草だからです。煎じて薬にしたり、ドクダミ茶で日常飲んだりできます。根も茎も葉も使えます。勿論薬用に使える十薬というのは、何処にでも生えている其処らのものは、品質的にはあまり使えないのかもしれませんが。
だから暮らしにとってはとてもありがたい存在なのですが、雑草のようにどこにでも見かけるのです。じめっとした溝や草叢の日影、空家になって放置された家の庭などに蔓延(はびこ)っているのをよく見かけます。深山に行ったり危険な谷や崖に生えているという存在ではないのです。それに独特の臭気もあります。そういう意味であまりありがたみを感じない可哀想な草花なのです。
歳時記では夏・六月の候に載る季題です。白い十字の花を咲かせますが、これは苞(つと)です。真ん中の淡黄の穂が花です。どくだみとも言います。どくだみの方が一般的に知られている名ですね。
十薬や重宝されて疎まれて