休日にゆっくり呉を訪れた。
呉は海軍さんの街だ。
あの円形の海軍帽を被り
まばゆい真っ白な制服の若者が
駅前の道を恋人と仲良く歩いていた。
そういう光景が絵になる街が呉である。
てつのくじら館から大和ミュージアムと観て
アレイからすこじまへ立ち寄り
さらにバスで音戸の瀬戸へやってきた。
ここは日本一短い定期航路
“音戸の渡し舟”で有名なところで
平清盛が切り開いたという名勝地である。
音戸の瀬戸公園を散策した。
この狭い水道を抜けてフェリーをはじめ
多くのいろんな船が行き交っていた。
しばしぼんやりと海を眺めていた。
多島美の瀬戸内海は本当に美しい。
“ともすれば君くちなしになりたまふ
海な眺めそ 海にとられむ”若山牧水
あれは忘れもしない中学二年の時
国語の授業で先生がこの歌を披露した。
「恋人よ、海ばかりみないでくれ
君を海にとられてしまいそうだ…。」
その先生は感情を込めてそう解説してくれた。
私は鳥肌が立つほど感動して、それ以来
牧水好きになり、自ら短歌に嵌ったのである。
その歌を思い出すほど、ここから眺めた海は
それほどに美しかった。ただし私の場合は
ひとり旅であったのが牧水と違うところ。
残念だが、こればかりは仕方がない。