能楽堂に足を運ぶのは、20数年振りであろうか。
一時期薪能など結構見に行ったものだ。
何がきっかけかわからないが、あるときふっと興味がなくなってしまった。
1日かけて五番能まで見たこともあったのだが・・・
能楽者に知り合いができた。
私よりずっと若いのだが、酒席で出会って気が合い、随分話が弾んだ。
その彼が数年前からシテを取るようになった。
案内を頂くのだが都合が付かない。
今日やっと機会を得た。
彼の番組は「熊坂」。
これほどまでに細かく芝居をするのかと、驚く。
私自身が20数年前と見方が違っているのかもしれない。
後シテになって出てくるとき、ちょっと身体が小さく見えたのは
緊張したからだろうか。それとも衣裳のせいか。
いろいろ経験を積むうちに、きっと大きく見えるようになるだろう。
薙刀を使うなどの舞もなかなかのものだったが、
舞い終えて、橋掛かりを去っていくときの空気が良かった。
それにしても、能がこれほどまでにドラマチックだったとは。
私は今までなにを見ていたのだろう。
終わり方にしても、
笛や鼓、大鼓が一斉に「オヒャー、テン」と打ち上げた後の静寂の中に
なんともいえない余韻が残り、
私はショックを受けた。
こんな終わり方、他のどんな舞台にもないだろう。
仕舞は「杜若」
なんともいい感じで力が抜けているというか、
枯れているというか、
いつか私もあんな感じで人形が遣えたらと、思ってしまった。
舞い手は、梅若万三郎。
こうしてたまに能を見るのは、刺激を受けていいものだ。