昨年タイに行ったときはどこも観光しなかったので、今回はどこかに行こうと
思っていた。人に聞くと、ワット・アルンを勧められた。
「三島由紀夫の『暁の寺』に書かれているところよ」
三島は少しは読んだ積りだったが、その題名は記憶に無かった。
通訳のプイはチェンマイ出身で、まだ行ったことがないと一緒に来てくれた。
川に出て船で向かう。
一番前の席に坐り、サア出発、と思いきや、
船が走り出したとたん波が飛び込んできて、被ってしまった。
寺は聳え立っていた。
タイは中国との交流の歴史が古く、仏像にも随分影響が残されている。
歴史を知るまでは、違和感を覚えてしまった。
塔を見上げる。
急な階段が付いていて、自由に上れるようになっている。
それにしても1段の高さが高い、いや高過ぎる。
「昔のタイ人は体が大きかったからだ」
プイは説明するが、つい「嘘だろう」と突っ込みを入れたくなってしまった。
それ程高いのだ。
もともとマライ人が住んでいたところに中国人やインド人がやってきて、
現在のタイ人が形成されたのだ、とは別のところで聞いた。
何とか下りて寺を出たところで、プイは天秤棒を担いだ行商人を呼び止めた。
焼卵を売っているという。
ピンと来ない。目玉焼きか何かを売るのか?
それにしても七輪のような火はない。
プイは、卵を1個袋に入れてもらっている。
そしてちまきを一つ。
「この商売は若い人に人気が無く、今では珍しいのです」
珍しいといっても、美味くないとなぁ・・・
卵はゆで卵のよう、3人で割って食べる、なかなか風味があって美味い。
ちまきはというと、何で味付けしたのか、独特の甘味がする。
地元の人が食べているものをいつも食べたいと思っていたから、
得した気分になった。