というわけで「都市伝説解体センター」、ゴールデンウィーク中にクリアしました! なので早速感想を書いていこうと思います。なお、タイトルにもある通り今回の感想はクリア直後のものなのでネタバレ全開で行こうと思います。
言うまでもありませんが本作はネタバレがプレイの驚きを大きく損なうタイプの作品なので、もし未プレイでこのブログを読んでいる人がいたら初見は帰れなのだ。
できるだけ多くの人にこの作品をネタバレ無しで味わってほしい。それだけが私の願いです。どーん。(ひぐらし)
というわけで感想なんですが騙されたあああああああ!!
わたくし人形使いがゲームをプレイする動機はたくさんあるんですが、その中のひとつに「騙されたい」があります。
予想外の展開、意外な黒幕、トリッキーなゲームシステムなど、あっと驚くような仕掛けに騙されたい。そういうのがゲームの大きな楽しみだと考えています。
しかるに本作はいやーもうラストで最高の騙し方、最高のどんでん返しを食らわせてくれました!
以前書いたプレイ中の感想で、「本作はあえてゲームとしての難易度を落としているので、AVGよりはビジュアルノベルに近い」という感想を書きました。
確かに本作では選択肢をミスってもペナルティやゲームオーバーはなし、謎解きに関してもゲーム側が誘導してくれるので行き詰まることはありません。いわば、ゲームとしての攻略要素自体を極力廃した作りになっています。
こう書くと、「じゃあ別にゲームじゃなくてもいいのでは?」と思うかもしれません。しかし本作には、プレイヤー自身が操作するゲームという媒体でなくてはならない理由があります。
それは、プレイヤーとキャラクターの癒着。
映画や小説とは異なりインタラクティブなメディアであるゲーム、特にキャラクターが全面に出るAVGというタイプのゲームは、プレイヤーは主人公と同じ視点でゲームを進めていきます。なので、プレイヤー=主人公、プレイヤーが知らないことは主人公も知らない、プレイヤーに見えている/いないものは主人公にも見えている/いないという図式が当然と思い込んでしまうわけです。
本作のラストのどんでん返しとネタバレは、まさにそこを突いたものだったと言えるでしょう。
主人公である福来あざみは、都市伝説解体センターの所長である廻屋渉、チャンネルTKCの配信者、そしてオカルトサイトSAMEZIMAの管理人の3者を演じていたという本作最大の「騙し」、最高でした。
まさか自分が操作しているキャラクターが、最初から自分の意図とは離れた部分で暗躍していたという……。この「騙し」は、プレイヤーが能動的にキャラクターを操作する「ゲーム」というメディアならではのものだったと言えるでしょう。
この「騙し」が効いたのは、前述の「プレイヤー=主人公」という先入観もさることながら、本作のラストバトルとも言える最後の謎の解体にて、いわゆる主人公覚醒という大イベントを持ってきてたのが大きいと思います。
これまでは謎の解体はセンター長である廻屋があざみと問答を行う形で行っていたんですが、ここで満を持してあざみが天眼錠を発動! あざみが彼女自身の力で最後の謎を解くというクライマックス展開なんですが、クリア後に思い返してみればこれ隠れ蓑だったんですよね、前述の福来あざみの正体という本作最大のネタバレからプレイヤーの意識をそらすための。
プレイしていて、最終的な黒幕は廻屋だというのはなんとなーく感づいてはいたんですよ。「主人公のいちばん近くでサポートしてくれていた人物が実は……」というのはお約束じゃないですか。
でも「主人公が信頼できない語り手だった」ってのも考えてみればお約束なんですよね。お約束を隠すためのお約束!
いやーもう見事に騙されました。完全にノーガードになってたところに顔面パンチを食らって前が見えねえ。ナイスパンチ。
また本作で感動したのは、「ゲーム中で起こっている出来事はすべて『ゲーム的な都合』ではなく現実的な理由付けがあった」という点。
前回の日記では「ゲームシステムがキャラクターの能力として反映されている」という点が良かったと書きましたが、クリア後には一連の事件はすべて幽霊や悪霊といったオカルトの存在はなく、すべて実在の人間が引き起こしていた事件であることが判明します。さらには、あざみの念視能力や廻屋の千里眼といった能力さえも超常的な能力ではなかった。
本作はそのタイトルと都市伝説というテーマから、超常的な存在が出てきてもおかしく感じる人は少なかったでしょう。しかし本作では全ての出来事や能力は現実的な説明が可能というスタンスを貫いています。
これが本作の大きなテーマである「都市伝説を情報収集と仮説で解体する」というところに効いているのだと感じました。
本作にはさまざまな都市伝説が登場しますが、それらの源泉として扱われていたのがSNSであるというのはこの時代ならではの設定だと感じました。そもそもことの発端であるオカルト学者・如月努の死もSNSで槍玉に挙げられたことがきっかけでしたしね。
本作の謎解きにおけるクライマックスは都市伝説の解体ですが、実は本作のテーマの核にあるのはSNSという媒体そのものであると感じました。
さまざまな意見や無責任な憶測、悪意と善意が濁流のように入り交じるこのSNSの生々しい感じは、ある意味で都市伝説よりも恐ろしい怨念の坩堝として描かれていたように思います。
そして多くの人々はそこから生まれる根拠不明の噂に踊らされてこれだけの混乱を生み出してしまうというのは、この時代ならではの、いわば最新のオカルトと言えるでしょう。
いやー実に面白かった! ゲーム的な難易度をすっぱり切り捨てて、しかしゲームという媒体の特徴と強みを最大限に活かしてプレイヤーを没入させ、そして騙すというこの構成はもう大正解だったと言えます。最高に気持ちよく騙してもらえました。
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