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主に映画、ゲーム、同人誌の感想などをコンクリートミキサーにかけてブチまけた、ここはいいトシしたおっさんのブログ。

TOHOシネマズ梅田「悪魔と夜ふかし」見てきました!

2024-10-07 23:34:55 | 映画感想
 今日は所要で梅田まで行ってきたので映画を見てきました。オタクは1日のうちに予定を詰め込みがち。
 今日見てきたのはこれ!
 
 
 TOHOシネマズ梅田の上映スケジュールを調べてたときに見つけて気になったので見てみることにした作品。
 時は1977年。人気番組「ナイト・オウル」の司会者ジャック・デルロイは、かつては大きな人気を博したものの現在は人気が低迷していました。そこで彼はハロウィンの夜に降霊術や霊視といったオカルト生放送を行い一気に人気を回復しようと目論みます。その日のスタジオでは数々の超常現象が発生、視聴率はうなぎのぼりに。しかし、番組のクライマックス、かつてカルト教団で生贄用の子どもとして確保されていた少女・リリーの登場によって、生放送中のスタジオでは恐ろしい怪現象が発生。
 本作はそのときの放送を収録したマスターテープが発見されたという設定で当時のようすを描いたいわゆるファウンド・フッテージものの作品です。
 
 わたくし人形使いはもういいトシのおっさんなので、80~90年代の心霊写真やUFO、ミステリーサークルといったオカルトブームを経験しているんですが、本作はオーストラリア映画とはいえその当時の「明らかに胡散臭いけど、もしかしたらこの中に『本物』があるのかも……?」というあの疑念と期待の入り混じった感情を思い出せる作品でした。
 主人公である司会者ジャックは直接的にオカルトを行うわけではありませんが、なんかこう雰囲気が明らかに胡散臭いというか何かを隠してる空気がにじみ出てるのがすごいと思いました。彼の背景は直接的には描写されないものの、表情の細部に後ろめたさや気まずさが出てる感じ。
 そして番組の、ひいては本作の非常にショッキングなキャラクターである少女リリー。本作はテレビ番組を収録しているマスターテープということで各種カメラを切り替えながらスタジオを映し出しているんですが、ときどきリリーが明らかに「こっち側」、つまりカメラの向こうにいる視聴者=この作品を見ている観客に視線を送ってるんですね。この違和感、居心地の悪さがたまらん。
 あらすじを知っているので「このスタジオでなにかとんでもないことが起こる」ということは確定なんですが、それがいつ来るかはわからない。この崩壊の瞬間がわからないという居心地の悪さ、嫌な空気感、これが本作の「生放送を行っている」という設定と相まって臨場感がありました。
 また本作は、いわゆるオカルト番組のお約束を一通りやってくれるのもよかった。胡散臭い霊能者による霊視、スタジオの観客の死んだ家族を言い当てる、でもどうもやらせっぽい、霊能力の研究者vs批評家のバトルといったこのテの番組に欠かせないもろもろを楽しめました。今じゃあこういうのは一笑に付されるでしょうしオカルトブームも過去のものになっているので、ノスタルジーを感じました。海外のこうした番組のことはあまり詳しくないんですが、詳しい人はスタジオの作りや雰囲気なんかも楽しめるんじゃないでしょうか。個人的にはBGMや効果音をすべてスタジオ脇のバンドが生で演奏してるのにインパクトを感じました。
 
 そして本作はオカルトものとしての側面以外に、テレビ番組の裏側を描くという側面もあります。本作は先述の通り番組を収録したマスターテープという体裁なんですが、それに混じって番組がcmに入ったあとのスタジオの舞台裏でのスタッフのやり取りも描かれてるんですよね。
 本作ではスタジオのシーンはカラーなんですが、舞台裏のやり取りはモノクロ。これがなんとも示唆的で「メディアの暗部」といった感じです。そしてこうしたやり取りはここだけでなくあらゆるメディアで当たり前に行われているだろうという。
 危険を承知で視聴率のために番組を続行しようとする番組のプロデューサー、人気回復の視聴率リスクとの間で板挟みになるジャック、スタジオでは決して出てこない人間模様がモノクロで描かれるさまはある意味オカルト現象よりもショッキングだったかもしれません。
 そして番組ではついにリリーへの悪魔憑き、生放送での悪魔の登場が実行されます。ここで引き込まれたのが、怪現象が起こるだけでなく、起こった怪現象を検証するパートがある点。さらに反証を掲げる批評家も憑依現象を催眠術とみなして、自らの手で悪魔憑きを再現してみせます。これによって観客はだんだん自分が見ているものが信じられなくなっていくという流れは非常によかった。
 ……という番組の流れの中に、実は司会者であるジャック自身が本作で紹介されたカルト教団に関わっている疑惑を少しずつ忍ばせているのがうまい。ジャックは「グローブ」という高いステータスを持つ人々で構成された紳士クラブに所属しているんですが、この集団が劇中で紹介されたカルト教団であろうことが終盤で明らかにされます。終盤、リリーの悪魔憑きが極限状態に達しスタジオは大混乱に。その中で「生放送を収録しているマスターテープ」という体裁だったはずの本作のカメラはルールを破り、スタジオではなくジャック自身の悪夢の世界を映し出します。ここは賛否あると思いますがわたくし人形使い的にはアリでした。最終的に自分の過去を暴かれるというのが皮肉が効いてて好き。
 しかしそのバレパートが短かったのでけっこう消化不良で終わってしまった感もありましたかね。「生放送を収録しているマスターテープ」というルールはすでに破っているので、いっそパプリカ並みに現実を飛び越えた幻覚パートにしてもよかったかも。
 本作の舞台は架空の深夜トークショーということで作中のライティングや色調もビデオテープっぽいチープさやにじみ感が出ているのが画面づくりに凝ってる感が出ててよかったですね。また、生放送ゆえのトークのギリギリ感やアクシデントも今ではなかなか見られないもので懐かしい気持ちになれました。あと悪魔憑き全開のシーンはなんかやたら派手で逆に笑ってしまった。
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