・ASSORTED BOX WEB再録404 Not Found(ツミがバツ)
同じバロック小説サークルとして一方的に親近感を抱いているサークルさん。
前者はバロック&バロシンの短編小説集、後者はかなり分厚いWEB再録の掌編小説集です。
それでは感想を。
まず「ASSORTED BOX」、8篇の短編小説が収録されています。
・培養液はプロテイン
まさかのブートキャンプ。
カンオケ男に違和感がない……。
マッチョ天使虫にはなんだか超兄貴みを感じます。
・番外:欲骨はプロテイン!?
なんでライ〇ップごっこなんだ……ネタのチョイスが予想外過ぎる。
・十二、十三
「十二は十三を止めるための数字である」というのがなんとも示唆的。
こういう掌編は締めが肝心だと思ってるんですが、ラストでバロック屋をだしてバロシンとのつながりを見せているのが好き。
・個性/型
1ページの範囲に話を収めるって何気に高等技術だよな。
異形と人間の対応はバロッカーなら一度は考えることだと思いますが、「個性的過ぎて異形になれなかった」というのは印象的な一文です。
・個性/A
そしてそのあとにこの話を配置してるのが上手い。
クローン体であるアミならではのメンタリティからくるセリフがいいですね。
・扉越しの風景・一
二次創作の魅力の一つが「原作では描写されていない部分が見られる」なわけですが、この掌編はバロシンにおけるアミ編の前日譚として秀逸です。
「扉越しの風景」というタイトルがまたいい。
・アリアドネの糸
バロシン二次創作では、バロック屋であるキツネと依頼者の会話から始まるのがお約束ですが、それを組み立てるのはかなり難しいですし、ぶっちゃけバロック考えるのが大変。
この掌編では短い中にそれらがしっかりまとまってて、なおかつオチが不気味でまさに「歪んだ妄想」といった感じ。
・扉越しの風景・二
締めにこれを持ってくる配置が完璧と言えるでしょう。
続けて「404 Not Found」、こちらはバロシン・バロック合わせて30篇の短編が収録されています。
まずバロシンの二次創作小説についてですが、この「短編小説集」という形態がいかにも「バロック屋の業務記録」といった感じでバロシンの二次創作によく合っていると思います。
前述の通りバロシン二次創作はキツネが依頼を受けるという形態で書くと、依頼者のバロック、そしてその解決法を考えなくてはいけないのがすごく大変。
しかも相手には理屈が通じないのでこっちもバロック脳フル回転で妄想してなんとか理屈を合わせなくてはいけないんですが、それを考えるとこの短編集では30種類ものバロックが考えられてたってことになるんですよね。それはもう単純に引き出しがすごいなあと思います。
また、バロシンと言えば個人的にはキツネとルビのやり取りも魅力的なんですが、小生意気なルビとそれに振り回されがちなキツネのコンビは読んでて楽しいですね。
短編小説集という形態もあって、まるで連続テレビドラマを見ている気分になりました。
バロック二次創作の方は、本編前や本編中を舞台にした作品のほか、大熱波後の荒廃した世界で生きる歪んだ人々を描いているのが印象的でした。
覚えている限りでは少なくとも今までこの視点での作品は読んだことがなかったので新鮮でした。
二次創作にオリキャラを出すのはかなりリスキーなことだと思ってるんですが、本作での歪んだ人々は「ほかにもたくさんいる(であろう)歪んだ人々の一部」といった位置づけで、登場人物というよりはむしろ舞台設定の一部となっていました。
そのため、原作の世界観を邪魔しないようになっていたのが良かったんでしょうかね。
今日はここまで。