A Day in The Life

主に映画、ゲーム、同人誌の感想などをコンクリートミキサーにかけてブチまけた、ここはいいトシしたおっさんのブログ。

冬コミ戦利品レビュー・東方編その14

2020-04-08 22:21:26 | 同人誌感想

・ムガムビル6(薬味さらい)
 重厚なストーリーとバトル、そして切れ味鋭いギャグが魅力のサークルさん、今回が早くも6冊目の総集編となります。
 今まで本サークルさんの総集編を大長編ドラえもんだのなんだのと言ってきましたが、今回はずばりグルメ・デ・フォアグラwithゴールデンカムイといったところでしょうか。食材には関してはもちろんアレも出るよ! やったね!
 今回の大きなテーマは料理……というよりもむしろ「食べるということ」。
 収録5編+書き下ろし1編+おまけ冊子の全7編の物語で、幻想郷における「食べるということ」を描いています。
 それでは収録作品ごとに感想を。
・怒レ神
 しょっぱなから「諏訪子と手をつないでる純狐さん」というショッキングなシーンから始まるお話。
 早苗さんはいくらなんでも怖いもの知らずオブジイヤーだと思います。
 つうかこんなの(失礼)が人里うろついてたらパンピーは気が気じゃないだろ。
 何を食べても同じ反応しかしない純孤さんにさまざまなイヤガラセを敢行する諏訪子。
 そんな二人には「祟りと怒り」という意外な共通点があった。
 この作品における「食べるということ」は、ヒトならぬ神が人の行いである「モノ食うこと」を行うことで人の外面を保ち、安定した姿になるための行為、といったところでしょうか。
 同じ「祟りと怒り」をその根源とする存在でありながら、純孤と諏訪子はその在り方が大きく異なります。
 泣いたり怒ったりと人間に近い感情表現のある諏訪子に対し、純孤はあとがきにもある通り、姿こそ人間の女性ですが「異物」なんですよね。
 純孤はこれまたあとがきにある通り、瞳孔が開きっぱなしだったりセリフのフォントが通常とは異なっていたりと「異物感」をことさらに強調して描写されれていましたが、ラストでの諏訪子との会話ではそうした要素がなくなっているのがなんとも象徴的。
 「味を感じる」というのはとても人間的な感覚なんだなあと思いました。
 あとうどんちゃんは胃をいたわってほしいと切に思います。
 ゲスト枠のヘカーティアが「珍妙な姿」呼ばわりされてて笑った。あと、「柱を並べ境とする」のくだりはなるほどなーといった感じです。
・カチコミ天愚
 射命丸怒りの放火(未遂)。
 狂犬と化した射命丸他2名が不可侵条約を破りネムノさんを急襲!
 しかしごちそうには勝てなかったよ……。
 椛は干し肉で即座に陥落、はたては家庭の温かさを知って取り返しのつかないことに……。というかはたてはなんでこんなに不憫なのが似合うんだろう……。
 そして狂犬と化した射命丸は無事今夜のごちそう(食材的な意味で)になったのでした。めでたし。
 この作品における「食べるということ」は、まあ美味いものには誰しも逆らえないよね、ということでいいんでしょうか?(疑問形)
・ハッピーバースデイ・レミリア
 東方二次創作における古典的テーマのひとつともいえる「レミリアと咲夜の別れ」ですが、まだこんな引き出しがあったのか……!といった感じです。
 このテーマについてはもうそれこそ東方二次創作を書いてる人ならだれもが一度は描いているといっていいくらいだと思いますが、このアプローチは新鮮でした。
 また、東方キャラの持っている能力の中でも特に抽象的で不明瞭な「運命を操る程度の能力」を具体的に、レミリア自身の口から解説している点も見逃せません。
 あと咲夜さんってこういう人だったよな……って感じです。おぜうおちょくりまくり。
 咲夜さんが突発的にレミリアの誕生会を開いてきたことで、自分の命日とレミリアの誕生日を同じ日にすることに成功したという結果は、咲夜さんの「時間を操る程度の能力」とレミリアの「運命を操る程度の能力」のふたつの能力でもって、本来は統御できないはずの大きな力である「運命」からもぎ取ったものであるように感じました。
 ラストから紅魔郷本編のスタート地点につながる構成も素敵。
 本作はほかの収録作と比べると「食べるということ」という要素は薄めですが、しいて言うなら「特別な日の食べ物」としてのバースデーケーキがそこに当てはまるでしょうか。
 あと、あとがき後のおまけ漫画で余韻が台無しになるの好き。
・最後の蛮餐
 今回収録の作品の中ではいちばん好きかも。
 本サークルさんはこれまでの作品で、幻想郷の妖怪は外の世界から供給され加工された人間を食しているという事実を明確に描写していましたが、本作では幻想郷に住んでいる退魔師と幻想郷の妖怪たちの「食う・食われる」という関係性を描いています。
 本サークルさんの世界観では、外の世界から供給されている人間は妖怪たちにはあまり好まれていないという描写がたびたびありました。
 無論それは一般的、人間的な意味で言う「味」のせいというわけではなく……。
 わたくし本サークルさんの作品の魅力をひとつ挙げろと言われたら、「幻想郷における妖怪と人間の関係性」と答えます。
 幻想郷における妖怪たちは「人食いの妖怪」ではあっても、「理性なき怪物」ではありません。なおかつ幻想郷に棲む妖怪たちにとっては、人食いは単なる食事ではない。
 本サークルさんはたびたび「人を食うこと」を作品のテーマとして挙げていますが、本作はそのストーリーも含めて、そのひとつの完成形と言えるのではないでしょうか。
 この作品における「食べるということ」は、妖怪と人間の間におけるある種のコミュニケーションと言えるでしょう。
・モミジロール
 なんか今回の総集編はシリアスとギャグが交互に来てるので、まるで高温の炉と冷水で交互に鍛えられている日本刀のような気分を味わえます。
 最初のぺージの椛がおめかししてるので一瞬誰かわからなかったなんて口が裂けても言えない。
 やりたい放題ガールの早苗さんですが、そもそも巫女が獣肉とか食っていいのか。まあアレの肉食ってるんだから今更か……。
 あと守矢の二柱は己が神という自覚を持つべきだと思います。
 だし巻き卵吹いた。閉鎖社会怖い。
 なお個人の経験ですがロールケーキ一本食いは若いうちにやっといた方がいいと思います。
 そしてなぜか始まるロールケーキ勝負。
 ところでそのコカトリスはいったいどっから幻葬入りしたんですかね……。
 そして始まる審査会、まさかの射命丸ガチ泣きからスタート! 今回はいいとこないな文……。
 先攻、椛が繰り出すのはなんと小鹿の脳入りロールケーキ!!
 後攻、咲夜さんが繰り出すのはけーきの形した人間!!
 なんだよこの世紀末な料理対決は。
 当然のことながら勝負はうやむやになってましたが守矢の二柱はオチてるので椛の勝ちってことでいいんじゃないですかねこれ。
 この作品における「食べるということ」は、なんというか……まあ美味いものには誰しも逆らえないよね、ということでいいんでしょうか?(疑問形)(2回目)
・書き下ろし・神明菜飯
 あとがきにもあるとおり、今回の書き下ろしは従来のようなバトル要素を排したものとなっています。
 本サークルさんの総集編の書き下ろしは、毎回各巻に収録された作品の要素をまとめて1本のお話を作るという形になっているんですが、今回は前述の通り収録作品が「食べるということ」をテーマにしているので、必然的に書き下ろしもタイトル通り「食」をテーマとしています。
 まあなんというかおぜう様のカリスマがここぞとばかりにほとばしりまくりです。こんなん咲夜さんでなくても一生お仕えしたくなるわ。
 冒頭の諏訪子と純孤さんというのも意外なカップリングでしたが、本作でのルーミアと純孤さんというカップリングも意外でいいな。
 そして咲夜さん、早苗さん以上に危険行為をホイホイやらかすよなこの人……。
 この書き下ろしは当然のことながら巻末に収録されているわけですが、うまい具合に今回の「食べるということ」の総まとめになっていると思います。
 作中のセリフを借りれば、最終的に「神妖人間関係なく」誰もが手ずから獲物を捌きその命を頂くというところに終着しているのはまさに構成の妙と言えるでしょう。
 この作品における「食べるということ」は、もうまさに文字通り「同じ釜の飯を食って仲間になる」ということでしょう。
 今回の面子の中ではもっとも人間から遠い存在である純孤さんが、自らの手を汚して獲物を捌き、それを口にしたときの表情がどんなものであったかを想像するのも面白そうです。
・おまけ漫画
 早苗さんはこういうの長引きそう。
 諏訪子は苦労してるなあ……。
・OMAKE BOOK
 本編で出番が少なかったのでここぞとばかりに表紙を飾っている文ですが、全体的にひどい目に遭ってます。あとなんでそんなマガジン的な描写が多いんだろう今回。
 純孤さん、人間味が出てきたのはいいんですがその目で包丁持たないで。あと個人的趣味で申し訳ないんですがひよこエプロン着けてくださいなんでもしますから!!!
 なんか今回咲夜さん絶好調だな……。
 タピオカ粥ですが、その卵の出どころ次第では大人気メニューになるかもしれません。

 ……といった感じで今回も大ボリュームで楽しませていただきました。
 それでは締めの挨拶は今回のテーマから言ってもこれしかないでしょう。

ごちそうさまでした! 
 

コメント
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