雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

キミは知らない

2011-12-30 21:25:40 | 

大崎梢著"キミは知らない"を読みました。
悠奈は高校生、数学の臨時教師津田と親しくなります。
悠奈の父は悠奈が幼い時に火事に巻き込まれ旅先の
ロッジで亡くなっています。
被害者は父と若い女性の二人でした。
津田はやぼったい服装と外観、つまらない話で人の目に
付かない人です。
図書館で悠奈の父の著作を手にしているのをきっかけに
話をするようになります。
2ヶ月ほどして突然津田は学校を辞めて実家に帰って
しまいました。
悠奈は私物を送る宅配便の宛先を見て津田を追いかけて
いきました。
そこで出合った津田は学校での津田とは正反対という
服装、性格の人でした。
知り合った千穂と父が亡くなったロッジの跡を見に
行った悠奈は怪しげな男たちに拉致されました。
行った先は地元の有力者大公路家の豪邸でした。
当主の大公路に悠奈は曾孫だといわれます。
両親は大公路家になんのゆかりもありません。
悠奈は津田の助けを借り屋敷を抜け出します。
家に帰るよう言われます。
しかし悠奈は父の知り合いに連絡し、父が死ぬ前に調べて
いた日次村に行ってみたらと言われ出かけて行きます。
そこでは三つの家が勢力がありました。
一つは巫女を出す西園家です。
もう一つが大公路家、もう一つが東山家です。
この村に来て悠奈は東山家に追われます。
追い詰められ、殺されかけます。

父親の死の真相や不思議な出来事の理由を求めて
トラブルに巻き込まれていく高校生の話です。
津田先生がなにものなのか、敵か味方なのか、
父と同じ時に亡くなった女性は何ものなのか、
大公路がなぜ曾孫だといったのか。

普通の高校生がどんどんわけのわからない深みに
はまっていきます。
すぐに家に帰れと何度も忠告されているのにいつも
それを無視してトラブルの中に飛び込んでいきます。
勇敢だというよりなんと無鉄砲なんだと感じさせ
られます。
敵だと思っていた人たちが本当はそうではなく助けて
くれます。
真実が悠奈に明かされます。
母親は知っていたようです。隠しておくことではない
のになぜ真実を子供に話しておかないのだろうと
思います。
昔ながらの人付き合いの密度が濃い地方では起こりうる
話しなのかなと思いつつ読みました。

杉下右京の事件簿

2011-12-29 21:08:30 | 
碇 卯人
朝日新聞出版
発売日:2010-11-05

碇卯人著"杉下右京の事件簿"を読みました。
テレビドラマの"相棒"の右京さんです。
この本はドラマや映画のノベライズではなく本のために
書かれたものだそうです。
たまたま図書館の棚で見かけたので借りてきました。
"霧と樽"と"ケンムンの森"の二編です。
右京一人だけの登場で相棒はいません。

"霧と樽"
特命係が潰され右京が警察学校の教師をしていた時に
休暇を取りイギリス旅行中、スコットランドのウィスキー
の蒸留所で起きた事件に遭遇します。
10年、20年、30年、40年、50年と蔵に寝かせて
置いたウィスキーをそれぞれの年に開けて売り出します。
50年目の蔵開けに行きあたりました。
40年目の時には当時の当主が密室の蔵の中で亡く
なりました。
今回はスチルマンが樽に押し込められて亡くなりました。
隣には現代的な大量生産を行っている仲の悪い蒸留所が
あります。
蔵は林の中に5つ並んでいます。保管されているのは
10樽だけです。
さて何が起こったのでしょう。
ねたばれですが・・・
この事件は殺人ではなく事故にあたるものです。

"ケンムンの森"
亀山薫が警察を辞め海外へ行ってしまった後の出来事です。
座礁した船で見つかった暴力団幹部を奄美大島へ引き取りに
行った右京が出合った出来事です。
安岡は中国人3人と見つかりました。
彼らは怪我をして病院に収容されていましたが逃げ出しました。
仲間は次々に理由がわからず死んで見つかりました。
奄美の警察と協力して安岡を追いかけます。
この話は謎を解くという話ではありません。
淡々と追いかけているだけです。
安岡が何を思って森の中をさまよっているかがみそです。

おもしろい、というほどの話ではないですが読書の楽しみは
味あわせてくれます。

虚栄の肖像

2011-12-28 19:43:09 | 
北森 鴻
文藝春秋
発売日:2008-09

北森鴻著"虚栄の肖像"を読みました。
続けて花師であり絵画修復師である佐月恭一の登場する
本です。

"虚栄の肖像"
加賀美家から火事で焼けた絵の修復依頼がきました。
有名な人が描いた絵ではない父親が母親を描いた絵です。
修復代にと古備前の甕が預けられます。
貿易商の朱大人、その娘の朱明花、大人のボディガードの
ミヤギ、政治家の渡瀬泰三、その秘書の折本、そして
冬の狐の冬狐堂の陶子などが関わってきます。
話がややこしくて説明しにくくていけません。
詳しくは読んでください。
依頼された絵にはメスで切られた跡があり何かが隠されて
いたように見られます。
加賀美が企みを仕掛けてきます。

"葡萄と乳房"
この話もややこしくて説明がむずかしいです。
大道寺家から藤田嗣治の作品の修復依頼がありました。
藤田の作品は贋作が多いそうです。
佐月は大学時代の師の倉科の娘の由美子と恋人でした。
倉科に反対され、さらに陥れようとされ由美子を
諦めた過去がありました。
その由美子とばったりと出会いました。
偶然と思えましたが由美子は大道寺の妻になっていました。
依頼された藤田の作品は倉科が昔学生に修復させたため
贋作とみなされ持ち主は金策に失敗し自殺しています。
由美子は病死してしまいます。

"秘画師異聞"
秘画あるいは秘図といわれる女性の緊縛画が持ち込まれ
ました。
縮緬図(ちりめんず)といわれる紙をもんでちりめんの
ようにしたものです。
名前が世に出てない作者の絵です。
緊縛師を探し出して聞き出してこの絵が5年前から
2年前までの間に描かれた新しいものであることが
わかりました。
使われている絵の具の材料は花でした。
どんどん退化していきます。
紙を伸ばし2枚に剥いで裏から手当てする方法を
取ろうとします。
佐月はこの絵を誰が描いたかに気づきます。
前作に登場した倉科由美子です。
自分でモデルをして自分で描いて佐月が目にすることを
意識して描かれました。
この絵の依頼者は姪の九条繭子です。
佐月は結局絵に修復を加えませんでした。
自分と共に絵も老いていく道をとりました。

絵の修復という仕事があるということはテレビで
紹介されたりしてますから知っています。
絵というものを長持ちさせる技術は難しいものですね。
でも何回も手が加えられているとその絵は本物
なのかどうかわからなくなる様な気がします。

深淵のガランス

2011-12-27 17:47:37 | 
北森 鴻
文藝春秋
発売日:2006-03
北森鴻著"深淵のガランス"を読みました。
北森さんの今まで読んだ冬狐堂シリーズや蓮丈那智の
シリーズとは別のシリーズです。
花師と絵画修復師の二つの顔を持つ佐月恭一が主人公です。
バーなどに頼まれて花を活けるのが花師としての仕事です。
流派には関係なく活けています。
絵画修復師はある人から紹介されたものしか仕事をしません。

"深淵のガランス"
長谷川宗司がパリで描いた絵の修復を家族から依頼
されました。
修復をする前に写真を撮り斜光撮影、赤外線撮影、
紫外線撮影、X線撮影をして準備をします。
それで絵の下にもう一枚絵があることがわかりました。
未発表の絵を表に出すことはできますが上の絵はダメに
なってしまいます。
隠された絵を見たいと画策する人が暗躍します。
佐月は絵の裏から針を刺し絵のタッチを調べていきます。
構図はいろんな撮影でわかっています。
絵を再現します。
この絵には画伯がどうしても隠しておきたい秘密が
描かれていました。
佐月の描いた絵はある人の手に渡りました。
これって贋作っていうのじゃないのかな。
佐月は贋作には手を出さない信念の人なんだけど。
ガランスは赤い色の名前だそうです。

"血色夢"
東北の石室内壁画の仕事が舞い込みます。
個人の土地でその土地の持ち主が依頼主です。
この話と同時期に分割してばらばらにされそれぞれ
別のキャンバスを継ぎ足し描き加えられ複数の真作の
作品として出回っている絵がありそれをすべて
集めたいとしている人たちがいます。
集めて本当の1枚の絵に戻そうとしています。
この過程で殴られ骨を折る怪我をさせられたり、
画商の恨みを買い薬剤を噴射した危険な洞窟に閉じ込め
られたりします。
分割された絵画は5つ、4つが見つかり真ん中の絵が
ありません。継ぎ足して描くよう依頼されます。
佐月は描きます。

こういうことしていいのでしょうか。
贋作ではないのかなぁ。
絵というものの扱われ方がわかっておもしろい本でした。
絵はばらばらにされたりふたつにはがされたり、描いた
画家が思いもよらない運命をたどっています。
何が本物で、何が偽物か、わけがわからなくなりました。
絵を購入しようなんて思うものではありませんね。
汚れた絵は溶液でウォシングするときれいに戻せる
なんてことも初めて知りました。

行き詰ったらコーヒーブレイクしよう

2011-12-26 21:26:09 | コンピュータ
プログラムのデバッグに行き詰った時によく言われる
ことは「コーヒー飲んで一休み」です。
これはよく効くんですよ。
休んでいるのに却って能率が上がるのです。
やり続けていると堂々巡りになって抜け出せなくなって
しまうのです。
同じことをいくら繰り返しても新しい展開は望めません。
一休みした後は視野が広がります。
不思議なことに。

プログラムの修正をしていました。
Aというプログラムの中でBというプログラムを起動
させています。
AはBを起動させBの処理が終了するまで待機します。
Bの処理を除いたAの処理は修正前に較べて驚くほど
処理速度が上がりました。
ところがBは物理的に速度を上げることは不可能です。
今までは全体の速度からすればBの速度の遅さは
目だちませんでした。
修正後は目立ってしょうがありません。

なんとかできないかと考えました。
Bの処理を待っている必要はないことに気づきました。
AからBを起動させた後は両方が平行して走ればいい
のです。
処理を平行して走るように修正してテストしてみました。
ところがBの処理がぜんぜん実行されません。
待つか、待たないかだけの違いでBは同じ処理をする
はずなのになぜだ!と実に2,3時間考え込みました。

そこでコーヒーブレイクです。
やっとわかりました。
Bの処理が終了後、AがBの使用したファイルを削除
する部分があるのですが、待たない処理ではBが処理
する前にAがBの必要とするファイルを削除してしまう
のです。
視野を広げてよく考えればすぐわかることなのに
ぜったい正しい、うまくいかないのがおかしいのだ
と思いこむと正しい解答が得られません。

削除しないよう変更したら、裏でBが走るようになり
いい感じになりました。

行き詰ったら一休みすることですね。

本日は大安なり

2011-12-25 19:13:15 | 
辻村 深月
角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日:2011-02-26

辻村深月著"本日は大安なり"を読みました。
ウエディング・プランナーが主役です。
ある1日の出来事です。
4組の挙式が予定されています。
"相馬家・加賀山家"
"戸倉家・大崎家"
"東家・白須家"
"鈴木家・三田家"

加賀山紀美子は鞠子と一卵性の双子の姉妹です。
二人は強く結びついていますが複雑な感情をお互いに
持っています。鞠子が活発で紀美子がめだたないと
思われています。
紀美子は結婚式に鞠子と入れ替わることを提案します。
英一に見破ることができるか試すためです。

白須りえは母と姉と姉の夫、甥の真空と暮しています。
りえは東との結婚を家族から反対されていました。
間空は東と職場の女性が結婚式のりんごに毒を入れる
相談をしているところに出くわしました。
りえを守るため結婚式をぶち壊そうと画策しています。

プランナーの山井多佳子は大崎玲奈を担当することに
なりました。
玲奈は多佳子にとって忘れられない人です。
多佳子の結婚を壊した人です。
婚約者を横取りされました。
しかし婚約者とはすぐ別れて別の人との結式です。
玲奈は多佳子が誰なのか忘れています。
わがままで身勝手な性格です。
打ち合わせも振り回され通しでした。

鈴木睦夫は貴和子とすでに結婚しています。
貴和子とは彼女しかいないと思いつめて結婚しました。
それなのに三田あすかと既婚を隠して付き合い始めました。
成り行きから結婚するよう追い詰められ事実を告げること
なくとうとう結婚式の当日になり絶体絶命の状態です。

この4組の話が交互に登場します。
多佳子は結婚は出来なかったけど結婚式を挙げるつもりで
下見に廻った時のウエディングプランナーの仕事を、
してみたいと思うようになりました。
多佳子の仕事に対するがんばりが描かれています。

当日のそれぞれの結婚式は進んでいきますが火災警報が
鳴り大騒動が起きます。
鈴木睦夫が放火を企んでいましたが幸いにもこのぼやは
本物の火事でした。
すんでのところで事件を起こさずにすみました。

結婚式を挙げるのは読んでいてもため息がでる大仕事
なんですね。
結婚する二人を追い込んで無理やり協同で仕事をさせ
絆を深めさせ、大変だけど一生思い出を残させようと
するものなのでしょうか。
ハレの日だからどんな高額な金額を要求されてもお金を
出すんだというのは本当でしょうね。

1000ヘクトパスカルの主人公

2011-12-24 23:08:37 | 
今日もJAZZを聞いてきました。
最近結構あちらこちらでJAZZが聞けます。
(無料または安い入場料で)
JAZZ 流行っているのかな。
今日はノリタケの森です。
長瀬良司さんのグループです。
よかったです。



安藤祐介著"1000ヘクトパスカルの主人公"を読みました。
義元は大学三年生、石段に座っていた時に友恵に声を
かけられました。
「空はどうして青いのか知っていますか」
彼女は子供の時に大雨で中州に取り残され自分は救助
されましたが母親は流れにさらわれ亡くなりました。
彼女はそれから天気に興味を持ち気象庁で働くことを
夢見ています。
義元はバンドを組んでいます。だけど真剣にやっている
わけではありません。
毎日義元のアパートに集まり酒を飲んで時間を無駄に
しています。
友恵に会って義元も空に興味を持ちます。
気象予報士試験を受けてみようと思い立ちます。
仲間から部屋の鍵を返してもらい勉強を開始します。
大学三年生になっていて就職活動を開始する時期です。
スーツに身を包み企業を回ります。
全然うまくいきません。
こんな生き方でいいのかと疑問を持ち始めます。
マリーというお婆さんの歌手と知り合います。
静という運送屋の奥さんと千春という小さな娘とも
知り合います。
就職試験を50社受け自分がやりたいことは違うと
感じます。
雲の写真を取り始め、これを仕事にしたいと思います。

大学生の生活、仲間との交流、就職試験の大変さ、
どのように生きていくかというような学生と社会人との
堺にいる若者の様子が描かれています。
なかなかいい本でした。
最初は部屋に集まってだらだらくらしてしょうがない
なあと思っていました。
現実の就職の大変さも見聞きしてため息が出ます。
100社受けたという話も出てきます。
企業が求める新入社員の能力の高さときたら冗談
じゃないと思います。
新入社員に完璧さを求めるなといいたいです。
自分のことを省みるとまったく知識セロの人間に
よくまあ嫌な顔をせず辛抱強く教育してくれた
ものだと感謝しています。

義元はカメラマンというやりたいことに向かって歩き
始めました。
本当にやりたいことは続けられます。
彼らの仲間も人生を歩き始めました。
義元に影響を与えた友恵は父親の病気で大学を中退
して故郷へ帰りました。
天気に関する仕事の道を歩き始めました。

学生の話はなかなか中へ入りにくいのですが
この本はすんなり入っていけます。

ランの館でJAZZを聞きました

2011-12-23 22:05:35 | 日常の出来事
ランの館へ行ってきました。
クリスマスシーズンだからきっとイルミネーションが
きれいに違いないと思って夕方に行きました。
イルミネーションはとても素敵でした。
知らずに行ったのですがイベントが催されていました。
5時からなんて名前だったか覚えていませんがダンス
スタジオの小学生から二十代ぐらいの年齢層の人たちの
クリスマス音楽にあわせたダンスがありました。
サンタの衣装を着て楽しく踊ってくれました。

6時から約一時間JAZZピアニストのダニー・シュエッケンディック
さんとベース(名前忘れました)のJAZZ演奏がありました。
シュエッケンディックはなめらかな日本語を話され
気さくな人です。
力強いピアノでした。
また好きな演奏者が増えました。
ランとイルミネーションに囲まれすてきな音楽でここちよい
ひと時を過ごしました。








つるかめ助産院

2011-12-22 21:59:07 | 
小川 糸
集英社
発売日:2010-12-03
小川糸著"つるかめ助産院"を読みました。
まりあの夫の小野寺君はある日突然失踪しました。
まりあは以前に二人で行ったことのあるハート型の
南の島へ一人で出かけて行きました。
海岸をふらふらしている時に女性に声をかけられ
食事会に招かれます。
そこはつるかめ助産院でした。
声をかけてくれた先生は鶴田亀子です。
フィリピン人の看護師のパクチー嬢、長老、畑仕事を
手伝うサミーがいます。
明るい雰囲気のただよう場所です。

まりあは先生に妊娠していると告げられます。
ここに居ていいのだよと先生はいいます。
まりあは仕事を手伝うことにしてつるかめ助産院で
暮らすことにします。
明るい人たちですがみんな過去にはつらいことを
経験しています。
まりあは捨て子でした。里子として引き取られましたが
里親になじめませんでした。
本当の娘は海で事故で亡くなりました。
その娘の替わりだと思われて本当の自分をみてくれて
いないと苦しみました。
先生もパクチー上もそれぞれ苦しい過去があります。

この島で先生や長老、パクチー嬢、サミー、島の人々と
交わるうち自分を見つていきます。
人間として成長記であり、妊娠、出産というものが
詳しく語られます。
まりあと共に日々変っていく妊娠の状態を経験している
感じがします。
いい本でした。

ただ最後はちょっと安易な終わり方だという気がします。
まりあがしっかりと生きていってくれるといいね。

新参者

2011-12-21 19:37:59 | 
東野 圭吾
講談社
発売日:2009-09-18

東野圭吾著"新参者"を読みました。
阿部寛さん主演でテレビドラマになりました。
先にテレビで見ました。
おもしろかったです。
本はどうかなと思いながら読みました。
本もよかったです。でも本が普通の魚ならドラマは
肉付きがいい魚です。うまい具合に膨らませてあります。

小伝馬町のマンションで中年の女性が殺されているのが
発見されます。
捜査にあたる所轄の刑事が加賀です。
捜査で出会う殺された峯子と接点があった人形町の人々
との交流が描かれます。
ミステリーというより人情話といった方がいいです。
加賀は不思議な出来事の解説をして人々がほっとしたり
温かな心になります。

"煎餅屋の娘"
保険屋は疑われているのにどうして本当のことをいわないのか。

"料亭の小僧"
人形焼を店主に頼まれて買っていた小僧。
現場にその人形焼が置かれていました。

"瀬戸物屋の嫁"
キャバクラに勤めていた麻紀と結婚しました。
瀬戸物屋をしている母親と同居しています。
仲が悪そうな二人ですが本当のところは。

"時計屋の犬"
娘が家を出て気に入らない男のところへ行ってしまいました。
いつも犬を散歩させている父親の心境は。

"洋菓子屋の店員"
殺された峯子は勘違いして洋菓子屋の店員を息子の恋人
だと思い込みました。彼女は妊娠しています。
店員はいつもやさしく接してくれる峯子を不思議に
思っていました。
息子は演劇をやりたいと何年か前に家を出ています。

"翻訳家の友"
峯子は主婦の生活に不満を抱いていました。
離婚をして翻訳家の友の下請けをして生活をしていける
よう努力をしていました。
その友が仕事を辞め結婚して外国へ行こうとしています。

"清掃屋の社長"
峯子の夫は清掃会社の社長です。離婚後若い娘を秘書と
して雇いました。峯子は離婚前から付き合いがある愛人
ではないかと疑います。

"民芸品屋の客"
独楽を買っていったのは清掃会社の経理をみている
男でした。
息子の家庭を訪ねます。小さな男の子がいます。
息子夫婦は不相応に贅沢な生活をしています。

"日本橋の刑事"
大事に育てた息子が無免許運転をして警官に捕まったのを
見逃してくれるようたのみます。
そのせいで息子はバイク事故で死にました。

事件は息子の育て方を間違った男が引き起こしたもので
やりきれないものです。
人を信用してまかせっぱなしにするのは却って悪い
結果をうみます。
きちんと監査していたなら事件の発生を防げたでしょうに。

加賀はやさしい人です。
たぶんこんな刑事さんはいないでしょうね。
ミステリーは苦手な人でもこの本は気に入ると
思います。

ブラック・コーヒー

2011-12-20 19:09:20 | 
アガサ・クリスティー著"ブラック・コーヒー"を読みました。
ポアロにヘイスティング大尉が登場する話です。
サー・クロード・エイモリーは科学者です。
原子爆弾に関する発明をしました。
郊外の家で仕事をしています。
家族の誰かが化学式を盗もうとしているから家にやって
きて資料を持って行って欲しいとポアロに依頼が
ありました。
息子のリチャード、妻のルシア、妹のキャロライン、
姪のバーバラ、秘書のレイナー、客として来ていた
医師のケネスが家にいます。
化学式が金庫から盗まれエイモリーが電気を消した間に
机の上に返せといいます。
電気が消えまた点いた時にエイモリーは死んでいました。
コーヒーの中に入れられた毒で殺されました。
ちょうど到着したポアロとヘイスティングが調査を開始
します。
秘密がありそうなイタリア人の妻ルシア、そのルシアに
つきまとっているケネス。
借金に苦しんでいる息子のリチャード。

クリスティの本によく出て来るのがお金持ちと借金で
困っている扶養されている家族という関係です。
館の主がけちでお金を出さないという不満が満載という
状況が描かれているのを何冊かの本で見ました。
お金を出さないのが悪いという雰囲気なのですが
ちょっとおかしいのじゃないと感じてしまいます。
仕事もせず遊んで暮しながらお金を出してくれない
などとどうして言えるんだろうと思います。
お金のある人が一族の面倒をみて、面倒を見てもらう
側はそれが当然のことなのでしょうか。

殺人犯に脅迫犯がつかまりめでたしめでたしに
なります。
化学式はどうなったかは・・・・・。

ほらふき茂平

2011-12-19 19:51:05 | 
宇江佐 真理
祥伝社
発売日:2010-08-31

宇江佐理恵著"ほらふき茂平"を読みました。
六篇の短編集です。
このうち"千寿庵つれづれ"と"妻恋村から"は同じ人が
登場します。

"ほら吹き茂平"
茂平は大工の棟梁ですが現場の仕事は若いものにやらせ
様子を見に行くぐらいになりました。
本当は仕事が好きなのですが棟梁が顔を出すのを嫌う
職人たちに年だから怪我したらいけないからなどと言われて
仕事から遠ざけられています。
ほらを吹くのが大好きです。

"千寿庵つれづれ"
本所小梅村の千寿庵に真銅浮風という庵寿さんが住んで
いました。元は刀剣商を営んでいましたが夫に先立たれ
店を畳みました。
千寿庵の桜が咲くころ飾り物屋のお内儀お峰が毎年
やってきます。桜の下で娘と弁当を広げて楽しい時を
過ごします。
蝋燭問屋のお磯もやってきます。
実は浮風には見えるのです。幽霊が。
娘もお磯も幽霊です。

"金棒引き"
佐兵衛は菓子屋の吉野屋の主人で妻はおこうといいます。
佐兵衛は佃煮屋の川越屋の新兵衛と幼馴染で大人に
なってもいつもいっしょにいます。
おこうはうわさ好きでどこへでも飛んで行きます。
徳川家茂に嫁いだ和宮のうわさを追いかけていました。

"せっかち丹冶"
丹冶は大工です。お清という娘がいます。
年下の仕事仲間に銀太郎がいて家によくつれてきます。
おきよに米問屋の新倉屋との縁談が差配から持ち込まれます。
両親の介護が必要で妻というタダで使える労働力を
求めてのものでした。
そのことを知っておきよは断りました。
銀太郎とおきよが親しくなりいずれは所帯をもつことに
なりそうです。

"妻恋村から"
ふたたび千寿庵が舞台です。
前妻お春と娘のおゆみの供養をしてもらいたいと
浅間山の麓にすむ長治が浮風を訪ねてきます。
浅間山の噴火で熱泥流にのみこまれて二人を亡くしました。
その後家族を亡くしたものどうしが結婚をするよう
すすめられおすと結婚しました。
幸蔵という息子が生まれますがおすがは亡くした息子と
較べて幸蔵を虐待します。
そのおすがも亡くなりました。
その晩、お春、おゆみそしておすがまで現れます。

"律儀な男"
醤油屋の冨田屋の市兵衛は養子で女房のおまきと姑の
おやすは刺し殺されました。
おまきは市兵衛には見向きもせず名前だけの夫婦でした。
二人で芝居に明け暮れていました。
仕事で旅に出た時に行き倒れ状態の夫婦を助けて
やりました。
市兵衛は家庭の不満を二人にぐちりました。
おまきとおやすを殺したたのはその時に出会った留蔵です。

千寿庵の浮風の話はおもしろかったです。
あとの話はなんだかしりきれとんぼで物足りません。

虹の岬の喫茶店

2011-12-18 19:22:17 | 
森沢 明夫
幻冬舎
発売日:2011-06

森沢明男著"虹の岬の喫茶店"を読みました。
海に突き出た小さな岬にポツンとある喫茶店が舞台の
話です。
この場所のイメージは表示の絵から得たものです。
この絵が喫茶店はこういう場所にあるに違いないと
思わせるびったりの絵です。
こんな場所で海を見ていたい、こんな場所でコーヒーを
飲みたいと思わせます。
これに似た場所を知っています。三重県の志摩の安乗
灯台がある場所です。絵の岬よりはもっと大きくて
台風でもだいじょうぶそうな場所です。
絵の岬の家はとても魅力的なんですがちょっとした風で
飛んでいってしまいそうです。

喫茶店を経営しているのは初老の柏木悦子さん。
喫茶店の奥の部屋で暮しています。
壁には亡くなった夫が最後に書いた虹の絵が掛かって
います。いつか二人で見たいといっていた虹をいつか
見たいと願っています。
この喫茶店に迷い込むように訪れた人たちとの
ひと時の交流が描かれています。
病死した妻を亡くしたばかりの夫が小さな娘とやはり
虹を追いかけて喫茶店へやってきます。
就職試験に落ち続ける大学生がやってきます。
事業に失敗し妻子と別れた男が夜ドロボウとして
やってきます。
甥が喫茶店の隣にスタジオ付きのバーを自力で建築して
います。出来上がった時に若かった時のバンド仲間と
今一度演奏したいと願います。
悦子さんを思っている男性が遠まわしに告白しますが
わからない風を装います。
台風で吹き飛ばれそうになった翌日の朝日を見て
見たかったもの目にします。

とてもいい話です。悦子さんのやさしさが伝わってきます。
きっとそばにいて話をしたいと思う人です。
でもなんか物足りないのです。
とてもさみしいのです。
甥は、建物が完成した後ずっと隣に住んで家族が出来て
小さな子供もいます。それでもさみしさがただよいます。
喫茶店がこの話のような場所なら常連さんがいて、常に
数人の人がいる和やかな場所であるはずです。
それなのに本の雰囲気はいつも人がいないように
描かれています。
前に登場した人がリピータとして訪れている気配が
ありません。
ちょっとへんと感じます。

あぁ、いつかこんなふうな海の見える場所で何日か
過ごしたいです。ずっととはいいません。
1週間ぐらいでいいです。
やろうとすればできることです。
出かけたらいいのだとはわかっているんですけどね。

聞き屋与平 江戸夜話咄草

2011-12-17 21:38:11 | 
宇江佐 真理
集英社
発売日:2006-05-26

宇江佐真理著"聞き屋与平 江戸夜話咄草"を読みました。
薬種屋仁寿堂の隠居の与平は仕事を息子にゆずりひまを
もてあましていました。
話を聞いてくれる人がいたらと話している人の言葉が
耳に入り自分が聞き役になろうと五と十の付く日の
夜に机を道に出して話したいという人を待ちます。
岡っ引きの長兵衛が与平につきまとっています。
与平の父親は先代の仁寿堂の番頭でした。
先代は放蕩物で店のお金を持ち出すばかりで店は
傾いていました。
一帯の火事で先代は焼け死にました。
その妻から仁寿堂の暖簾を譲り受け大きくしました。
先代の妻は今頃になって与平が先代を見殺しにしたの
ではないかと長兵衛に調べてくれるよう頼んだのです。

武士の妻だったのに男と出奔して夜鷹に落ちぶれた女、
家が貧しく売られそうになっている少女、顔に痣があり
縁談にしり込みしている武士等さまざまな人が与平に
話を聞いてもらいます。
与平の次男が養子に行った先で子が出来なく妻の
両親につらくあたられています。
両国に床見店を出してやり離婚して家を出て来ることを
了解してやります。
離婚を受け入れられない次男の嫁はあとを追って
家を出て来てしまいます。
売られそうになっていた少女は三男の出店へ女中として
世話をしてやります。

晩年の長兵衛の聞き屋をしながらの家族の移り変わり、
先代の妻おのうと長兵衛とのやり取りが書かれています。
与平は大きな秘密を抱えて生きてきました。
与平が亡くなった後は妻のおせきが聞き屋の後を継いで
机を出しました。

聞き屋はただ聞くだけで助言はしないとはいっても相槌
ぐらいはうたなければいけません。
それだけでも難しいことです。
聞いたことはしゃべれませんしかなり苦しい役目です。
今の世の中でもボランティアで聞き手を努める人がちが
活躍されている記事が新聞に出ています。
人は聞いてもらうだけで気分が楽になるものなのですね。
与平の秘密、悪いことなのですがとっさの判断が一生
背負う重荷となったことは確かでしょう。
読んでいて楽しいなぁという気分になる話ではなかったです。