西澤保彦著"夢は枯れ野をかけめぐる"を読みました。
腕貫探偵の作家さんの作品です。
何が主題なのかよくわかりません。
たぶん家族とか高齢者介護とかの問題なんだと思います。
羽村祐太が主人公です。
祐太は百貨店に勤めていました。
48歳で早期退職の募集に応じて退職しました。
独身です。趣味はなし、給料は貯金してきたためすぐ
働かなくても生活できます。
百貨店ではどう見込まれたのか成績を上げ部長にまで
なりました。
自分では人づき合いが苦手だと思っています。
働くことが苦痛でした。
同窓会で出合った理津子にアルバイトを頼まれます。
どんな仕事だと知らされずに引き受けます。
家まで車でやって来た理津子はゴミ袋を降ろします。
分別して回収に出して欲しいといって去っていって
しまいました。
ひどい臭いと状態の生ゴミをプラスチック、ペットボトル
と分けていきます。
理津子の行動を怪しんだ理津子の娘の詩織が訪ねてきます。
理津子の夫は理津子が自分の両親の面倒を見ることを
嫌います。内緒で両親の元へ手伝いに行っています。
認知症が進んでゴミの分別ができません。
食料は食べられないほど多く買ってきてしまいます。
理津子は打ち明けませんが祐太はそう推理します。
娘の詩織が手伝いにくるようになります。
理津子の夫は妻は家庭の仕事のみをしっかりすればいい、
たとえ病気であっても食事等家事を強要する人物です。
現実にこんな男性いるでしょうね。最低です。
祐太は隣の家の高齢者の弓削宗則と会話を交わすようになります。
3人の子供がおり昔は祐太と遊びました。
3人とも家を出ています。
長女は自然食のレストランを経営して成功しています。
長男とは疎遠になっています。次男の妻は長女の食に対する
考え方に共感して彼女を慕っていてその縁で結婚しました。
宗則は風呂場で倒れて亡くなります。
何日も姿を見なかったため警察と共に最初に発見したのは
祐太です。
長女の佐智子は祐太より年上ですが最初に出合ったときから
祐太が好きだったとみんながいる前で公然と言います。
結婚したいとまでいいますが祐太には結婚願望はありません。
やんわりと断ります。
祐太の母親は病気の祖父、父、祐太を捨て男と出奔しました。
父は残された借金を返し家族を養うため死に物狂いで働き、
働き過ぎで亡くなりました。
祐太はその過去の出来事から結婚も家族を持つことも
したくありません。
異父妹らしい人物が登場します。
祐太は知らずにいますが母らしい人の死を目撃しています。
隣の家が取り壊され佐智子の新しいレストランがオープン
する予定でしたがそのやさきに佐智子がトラックに
轢かれます。
最後の章は祐太が佐智子を病院へ見舞う所ですが
どうも話しが噛みあいません。
作者は何か勘違いしているのだろうかと思いました。
そうなら編集者がチェックするでしょに、何か変と
思いつつ読みました。
それにはちょっとした細工がしてありました。
佐智子の求めに応じて祐太が「いっしょのお墓に入り
ましょうか」というところで終わっています。
祐太という人のやさしさが好きです。
相談を持ちかけられれば暖かいことばでしっかりと
考えを述べられる人です。
人づき合いが下手なんてことはこの本からは感じられ
ません。思いやりがある人です。
家族ってたいへんなことが多いですね。