雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

三世相 並木拍子郎種取帳

2013-11-29 20:06:55 | 

松井今朝子著"三世相 並木拍子郎種取帳"を読みました。
"並木拍子郎種取帳"の三作目です。
二作目を読む前に三作目を読んでしまいました。
かぶきの戯作者になりたくて五瓶に弟子入りした拍子郎が
主人公です。
五瓶のために作品のねたになるような話を集めています。
まだ書かせてもらえず、芝居小屋で雑用をしています。
五瓶の家をよく訪ねてくる料理茶屋の娘のおあさとは
お互い惹かれています。
しかし拍子郎は武士の出でありまだ戯作者になる覚悟が
出来ておらず二人の間は進展していません。

"短い春"
拍子郎は役者の万之介にむりやりに芝居茶屋に連れて
行かれました。
そこには二人のお女中がいました。
万之介と一人の女中が少しの間二人で座敷を空けました。
万之介が借りていた簪がなくなりしばらくしてばらばらに
なって見つかりました。

"雨の鼓"
長屋に鼓打ちが越してきました。
夜中に稽古されて隣の住人は迷惑がっています。
ある妾が殺されました。
長屋の鼓打ちと妾に付き合いがあるようで疑われています。
殺害された夜隣人は鼓の音がうるさかったといいます。

"子ども屋の女"
深川では茶屋のことを子ども屋といいました。
子ども屋の尾花屋へいった喜右衛門はしばらく席を
はずしました。
息子は父が芸者と付き合っているのではないかと疑います。
尾花屋には娘分といわれるしっかり者の娘が芸者衆を
しきっています。

"三世相"
三世相とは前世の行いで現世が決まり、現世の行いで
来世が決まるということをいいます。
人々に信頼されていた医者が殺されました。
女房は占い師の元を訪れて占ってもらっていました。
中間もいっしょでした。
医者は表の顔はいいものでしたが、家では酒癖が悪く
家人にむごい暴力をふるっていました。
殺人はある人物にそれとはわからずに吹き込まれたことに
よって起きました。

"旅芝居"
拍子郎は頼まれて下積みの役者が行く旅芝居の下見に
出かけました。
弟子が踏み倒されたりひどい仕打ちをされたり売り飛ば
されたりするのではないかと心配した役者に五瓶が
頼まれたものです。
おあさにも勘当された酒問屋の息子が同じ地にいるので
父が倒れたので帰るよう伝えるよう頼まれます。

まだこのシリーズは続くようです。
おもしろかったです。

乳呑児の瞳 口入屋用心棒

2013-11-27 19:28:46 | 

鈴木英治著"乳呑児の瞳 口入屋用心棒"を読みました。
こちらもシリーズになっているものの途中のものです。
やはりこのシリーズは初めて読みました。
昨日の"父子十手捕物日記"と同じ作家さんでしたね。
主人公は用心棒の湯瀬直之進といいます。
口入屋から用心棒としてあちこちへ雇われていくようです。
このへんは前を読んでいないのでよくわからないです。

米田屋という口入屋から仕事を紹介されているようです。
そこの娘と恋仲です。
娘の父で米田屋の主が行方不明になりました。
まわりの口入屋の数人がいなくなっています。
みんな信頼できる人物ばかりです。
直之介と娘の双子の姉妹は父が消えた場所へ探しに
行きます。
同心の富士太郎とその中間の珠吉も口入屋の行方不明の
事件を調べています。
富士太郎は直之介が好きでそのことはまわりの人も
知っています。
七右衛門は歌舞伎役者の美しい男ですがこの人が
富士太郎を好きだとまとわりついています。
あやしげな人物です。
直之介は琢ノ介といっしょに事件を調べています。
やがて複数の口入屋たちはある人から家を斡旋して
くれるように頼まれそれぞれが家を斡旋している
ことがわかってきます。
行方不明になったのはこの家の場所を聞き出そうと
するものだとわかってきます。

この本もすらすらっと読めて楽しいです。
登場人物も好感が持てます。

今年もあと少し

2013-11-26 19:08:08 | 日常の出来事
昨日は午後からざあざあ降りの雨でしたのに
今日はいいお天気です。
もう11月も終わり12月になろうとしています。
聞き飽きたでしょうが、1年が早いです。
日々が滝の水が落ちるようにゴウゴウと流れ落ちて
いきます。
やらなければいけないことはいくつかあるのですが
なかなか動く気にはなれません。

家にはカレンダーは100円ショップで買ってきた
卓上置きの小さなものしかありません。
これで充分です。
大きくてきれいな写真や絵のものを飾ってもいずれ
じゃま、目障り、とイラッとしてきて片付けてしまう
ことになるのですから。
毎年ありがたいことにどこからもカレンダーは
持ち込まれませんでした。
ところが今年はどういう風の吹きましかいっぱい
もらいました。
一つ目はどんなものかまあもらってみるかと意識
してもらいましたから私が悪いです。
後の二つ目、三つ目は家に居ない時に玄関に置かれて
いました。
家に居たなら断ったものを。
カレンダーに罪はないのに使われないのはかわいそう。


P.S
やることの一つのインフルエンザの予防接種に
行ってきました。
去年は2時間以上待ってたいくつになってはぁーと
ため息ついていましたが、今年は早かったです。
30分ぐらい待っただけで済みました。
去年よりだいぶ早めに行ったのでそれでかも
しれません。
「チクリとします」「はい、終わりました」その間1秒
ぐらいの早業で、えー本当に打ったのーって感じです。
痛いと思うひまもありませんでした。
費用は3500円でした。

ふたり道 父子十手捕物日記

2013-11-25 20:07:15 | 

鈴木英治著"ふたり道 父子十手捕物日記"を読みました。
最近時代小説をよく読んでいます。
実在の人を描いた戦記物ではなく捕物帳みたいな軽い
小説です。
気軽に読めてなかなかおもしろいです。
でもどんどん読んでいく種類の本であまり書き残して
いません。
この本はシリーズで何冊も出ているようですが初めて
読んだので書いておきます。

シリーズのかなりうしろの方のものを最初に読んで
しまいました。
前の状況はわかりませんがわからないまでも楽しめます。
父子十手捕物日記と題名がなっていますがこの本では
父の丈右衛門は隠居しています。
丈右衛門には若い奥さんがいて赤ん坊の連れ児の娘が
いてかわいがっています。
そのうえ奥さんのお腹には赤ちゃんがいます。
息子は文之にはお春という妻がいて別の所に住んでいます。
文之介の中間は勇七で幼馴染で主従というよりは友達の
ように話ます。
一冊で話が完結せず次巻に続きます。
解決編を先に読まなくてよかったです。
父子が出会う場面がほとんどなく題名と違うなぁとは
思いますが途中から読み始めたのでしょうがありません。

お茶を商う砂栖賀屋の従業員から主人一家の皆殺しの
押し込みがありました。
この事件が解決しないのに三人の焼け焦げの死体が
見つかります。
一人が子供のころの知り合いでした。
丈右衛門は将棋の相手をする仕事をしています。
相手はおぐんという女性で孫だという喜吉という赤ん坊と
暮らしています。
子供は事情がある子です。
文之介は風邪でふらふらです。

この巻では事件は解決していません。
さらさらと読める本です。

激流

2013-11-23 18:32:01 | 
徳間書店
発売日 : 2005-10-21

柴田よしき著"激流"を読みました。
中学の修学旅行で京都に行きました。
班での行動中に路線バスに乗りました。
気がついたら班の一員の冬葉がいなくなっていました。
バスは混んでいました。冬葉が自分でバスから降りたに
違いありませんがそれから20年たっても消息は
わかりません。
同じ班員はいじめたのではないかとさんざんに疑われました。
いじめはなかったと班員にはわかっています。

20年経ったある日美弥と貴子のところへ「私を憶えて
いますか? 冬葉」というメールが届きます。
冬葉と同じ班だった美弥は10代からミュージシャンと
作家として認められています。
薬物に手を出し前科があります。
貴子は誰もが認める美人です。専業主婦をしています。
桂子は編集者をしています。
東萩耕司は刑事です。
鮫島豊は一流電気会社に勤めていますが主流から外れています。
長門愁悠樹の行方はわかりません。

殺人事件がらみで東萩は美弥に逢いにきます。
桂子は電車の中で鮫島と出会います。
メールのことで貴子、美弥は桂子と会います。
こんなふうに20年経って班の仲間がまた会う事に
なりました。

桂子は作家からもらった原稿を盗まれるといういやがらせを
うけて左遷になります。
貴子は裕福な生活をし娘を私立の通わせるため高給コール
ガールの仕事をしています。
彼女の客で個人的に付き合いだした男がホテルで殺され
ました。
彼女は殺人の疑いをかけられ危機に陥ります。

鮫島は前に付き合って別れた女に付きまとわれています。
やがて事件が起きます。

昔の仲間達がつぎつきトラブルに見舞われます。
彼らは昔のことを少しずつ思い出し話し合いしだいに
あの時何が起きたのか組み立てていきます。

冬葉はどうなったのか。生きているのか?
当時の嫌われ者だった担任の旭村も何年か前に失踪して
います。
冬葉は有能なフルートの奏者でした。
彼女の才能を信じていた音楽教師の毛利はどう関係して
いるのか。
班員で外国にいるらしい長門は?

いろんな事件が起きます。
一直線上に事件があるのではなくそれぞれから枝が
伸びている感じです。
でも誰かが何かが起きるよう引き金を引いたのです。

複雑に入り組んで事件は起きます。
一番ダメージを受けたのは桂子です。
怪我をして生死をさまよったのは鮫島です。
冬葉の行方がわかって事件が終結してみんな新しく
出発です。

ひとつ変だと思うのは冬葉の母親です。
彼らが大人になってあの出来事はこういう意味だった
のかとわかっていくのですが、母親は当時にだいたいの
検討がついたのではないかと思うんですけどね。

読み応えがあっておもしろかったです。

政と源

2013-11-22 21:35:48 | 

三浦しをん著"政と源"を読みました。
これはおもしろかったです。
読みながらアハハと笑う本は久しぶりです。

国政と源二郎は73歳の幼馴染です。
東京の墨田区の川に面した家に住んでいます。
源二郎が小型船を持っています。
源二郎は国政の家へ船でいきます。
歩いても5分だといいます。
最初二人の家は川を挟んであるのかなと思っていましたが
同じ側みたいです。

国政は大学を出て銀行に勤めました。
妻は数年前に娘のところへ行くといって出て行ったまま
帰ってきません。
連絡をとるのもうっとおしがられます。
仕事中心の人生を送り妻が話すことを聞き流し、家族を
ないがしろにしてきた結果です。

源二郎は子供のころにつまみ簪職人として修行を始めました。
戦争で家族を全て失いました。
奥さんは小学校教師です。
恋に落ちて奥さんの両親が反対するのを夜家出させて
船に乗せ略奪して結婚生活を始めました。
この顛末には国政も一枚かんでいます。
二人は子供はいませんが奥さんが40歳で病死するまで
愛し合って幸せに暮らしました。
源二郎は現在も仕事を続けています。
20歳になる徹平という弟子もいます。

徹平はもとちんぴらの一員でした。
つまみ簪を熱心に習っています。
27歳の美容師のマミという恋人がいます。

国政の目線で書かれています。
自分の残念な現在に較べたら源二郎は仕事があり弟子は
いるしいいなとうらやんでいます。
古い友達はいいですね。
国政が台風の日にぎっくり腰で動けなくなりこのまま
死ぬのかと寂しい気持ちの時に連絡したわけでもない
のに源二郎は船でやって来てくれます。
呼んでいるような気がしたのだそうです。

徹平とマミが結婚したいと両方の両親に打ち明けたところ
大反対されます。
それでもきちんと仲人を立てて結婚式あげるよういわれます。
徹平は国政に仲人を頼みます。
国政は妻が仲人を引き受けてくれるようハガキに身の回り
で起っていることを書いたり、今の気持ちを書いたり、
妻の幸せを願っていることを書いたりして毎日送ります。
妻の心は簡単には解きほぐせませんがちょっぴり
ほぐれてきたようです。

性格も仕事も違っていても言いたいことが言える友達です。
ふらっといってご飯食べていったり、泊めてもらったり
できる相手がいて幸せです。

嘆きの美女

2013-11-21 22:01:18 | 
著者 : 柚木麻子
朝日新聞出版
発売日 : 2011-12-20

柚木麻子著"嘆きの美女"を読みました。
耶居子は引きこもりです。
ブログのコメントで激しく非難するのを喜びにしています。
「嘆きの美女」というサイトを攻撃していましたが更新が
止まってしまいました。
オフ会を覗きに行って嘆きの美女の管理人のユリエを
ストーカーしている男を見つけました。
彼を追っていって交通事故に会い骨折しました。
退院後はユリエの家に引き取られて療養することになります。
ユリエは耶居子の小学校時代の同級生でした。
裕福な家の美女です。
ユリエの家はシェアハウスのようになっています。
看護師の優子、美容師の葉月、フードコーディネータの
玲子が住んでいます。
彼女らはみんな美女です。
耶居子がコメントに書き込みをしていたことは知ら
れていません。
耶居子は思っていることをはっきり口に出来る人です。
そんな性格の人がなぜ引きこもっているんでしょうね。
自分に自信がないわけじゃないけど人とうまくやって
いけないという人から閉じこもっているようです。
彼女は美女にコンプレックスを持っています。

怪我が治って耶居子はフードコーディネータの玲子の
手伝いをすることになってそのまま家に住むことになります。
みんなに磨かれて外見が変わって行きます。
料理という仕事にも熱意をみせます。

美女だと言われてきた人たちにも悩みがあります。
四人ともが美女であるがための辛さを味わってきました。
本来の自分を押し殺して人に好かれるように殻を
被って生きてきた人もいます。

耶居子が来たことによって美女の彼女らも変わっていきます。
ユリエも激しく変わりました。
本来の姿が表に出てきたと言ってもいいかもしれません。

しかし耶居子がネットでしていたことがばれてしまいます。
耶居子は家を出て行くことになります。

最初は身を入れて読んでいませんでしたがだんだん
おもしろくなっていきました。
美女だと言われることが重荷になるなんてことは
考えたことがありませんでした。
そんなことを言う人がいたらなんて贅沢なこと言うの
だろうと思ったことでしょう。
そんなこともあるんだ、と初めて知りました。

美女たちとそうでない引きこもりの女性の両方が
前に進んでいく話でした。

お伊勢ものがたり 親子三代道中記

2013-11-20 19:16:31 | 

梶よう子著"お伊勢ものがたり 親子三代道中記"を読みました。
こういう安心して読める本が好きです。
まつは娘の香矢の嫁ぎ先へやってきました。
孫の雪乃をお伊勢参りのお供にしたいといってきたのです。
香矢はとんでもないと断りました。
夫は京都へ今でいう単身赴任中です。

夫の友人の立花三郎太が夫に密書を届けて欲しい。
怪しまれないようにまつ、香矢、雪乃でお伊勢参りに
行くよう装って行って欲しいと頼まれました。
それで三代でお伊勢参りにいくことになりました。
伊勢までの案内役を御師(おんし)といいます。
見習いの久松が初めて一人で案内していくことに
なりました。
叔父が腹痛で寝込んでしまったためです。
一人での案内に久松は不安でいっぱいです。
御師の仕事は向かない、これで辞めるつもりだといいます。

途中で掏りのお由と数日いっしょになります。
旅をしている浪人の瀬尾がお由につきまとっています。
お由を心配しているのです。

抜け参りの子供の与一と知合います。
何人かの子供といっしょに来たのですが規律を乱すので
置いてけぼりをくって一人になりました。
抜け参りだというと昔は喜捨してくれたり食べ物を
くれたりとお金を持っていなくても行けました。
与一はシロと名づけた犬といっしょになりました。
犬だけでもお伊勢参りはできました。
嘘みたいですけど犬の首にお札を買うお金を結わえて
送り出すとお札をもらって帰ってきたそうです。

与一を心配して飾職人の武次がいっしょに旅しています。
武次は体を壊していてずっとほっておいた女房のところへ
帰ろうとしています。

旅の途中は思いもしないことが置きます。
おろおろする久松ですがまつがてきぱき判断します。
香矢は武術の心得があり落ち着いています。
雪乃は陽気な女性です。
縁談が持ち上がっていますが何か隠し事をしています。

いっしょに行動していくうちに久松も落ち着いてきて
どうしたらいいか判断できるようになっていきます。

途中で数度出会った浪人の瀬尾が仇討ちの旅をしている
のを知ります。
瀬尾の息子が陥れられて死んだとはいえ、仇を殺したら
殺人者として処罰されてしまいます。
仇が伊勢にいることを知った香矢らはどうにかしたいと
瀬尾を待つため先回りします。

いろんな出来事がありましたが無事伊勢に着きました。
夫とは二見浦で会い手紙を渡しました。
この手紙は彼女の家の吉成家にとっては重大な出来事
であるのは確かです。

久松はこの三代の女性たちとの旅で御師としてやっていく
心積もりができました。
旅は伊勢に着いたら終わりではありません。
帰りがあります。
帰りの話は数行で述べられているだけです。

話の前後に久松が語る部分があります。
何十年も経って孫がいる年です。
三人の女性の案内をした時のことを語っています。

三代のそれぞれの女性が魅力的です。
一番年取っていますがまつが一番行動的で先進的で
判断力があり策士です。
香矢は真面目ですがちょっと型にはまったようなところが
ありますが彼女も旅で変わったようです。
雪乃はこれからの人生の方向を決めたようです。

昔の人はよく一月以上も歩いて旅したものだと感心します。
いまやれと言われてできるかな。
伊勢が華やかだったことが窺えます。
名古屋から伊勢はすぐ近くで簡単に行けます。
今伊勢に行ってもそれほど感慨がないのですが昔は
憧れの場所だったのですね。

ドンナビアンカ

2013-11-19 21:09:40 | 

誉田哲也著"ドンナビアンカ"を読みました。
読んだというよりざっと見ました。
同じ登場人物の"ドルチェ"の方はおもしろかったのに
この本はどうも好みではありません。
どのように話が進むのか見えてしまっておもしろみが
ありません。
外国から来た幸せではない女性と、日本のやはり幸せ
ではない男性の淡い恋というのは何度も書かれている
題材でまたかという感じです。
女性ががんじがらめに管理され搾取されているわけ
ではないというところがまだほっとします。
自分の意思で外国で勉強なり仕事なりするという人は
しっかりした強い人に違いないと思うのです。
しかしこの女性ははっきりしたところもありますが、
なんかたよりないところがあります。
男性の方もなんでこんなふうに人に引きづられていくのか
よくわかりません。
刑事が出てきますがこれはミステリーなんでしょうか。

暗くなるまでこの恋を

2013-11-18 19:56:21 | 映画
著者 :
20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
発売日 : 2005-10-21

映画を見てきました。
名演小劇場という映画館で1週間ずつ3週間カトリーヌ・
ドヌーヴの作品が上演されています。
今日観たのは"暗くなるまでこの恋を"です。
44年前の作品です。
主演はカトリーヌ・ドヌーヴとジャン=ポール・ベルモントです。
題名から単純な甘いロマンス映画だと思っていました。
近松門左衛門のどんどん追い詰められていく心中物みたいな
感じがします。
もっとも近松の作品は角田光代さんが現代風に書き直した
"曾根崎心中"しか知りませんけど。

ルイは南アフリカの近くのフランス領レユニオン島で
タバコ工場を経営しています。
文通で交際した女性と結婚することになりました。
船でやってきたのは写真とは違う美しい女性です。
幸せな新婚生活を過ごします。
妻が個人と会社の預金を引き出せる手続きをした後に
全てのお金を引き出して姿を消しました。
本来の妻となる女性は船上で殺されたと思われます。
女には仲間の男がいました。
ルイは本来妻となるはずの女性の姉と共同で探偵を
雇います。

フランスでルイは女がクラブを紹介するテレビに出て
いるのを見つけます。
彼女のホテルに入り込みます。
殺すつもりでしたがルイにはできません。
二人で逃避行を開始します。

途中で雇った探偵に見つかります。
見逃してくれという願いを聞いてくれません。
ルイは探偵を撃ち殺してしまいます。
探偵を借りた家の地下室に埋めまた逃げます。

工場を安く処分してお金を手にします。
しかし探偵の死体が見つかり警察の手が伸びてきます。
ホテルに置いてきたお金を取りに戻ることも出来ません。

雪の降る中逃げます。
非難小屋のようなところへたどり着きます。
ルイはマリオンに毒を盛られます。
ルイはマリオンに君に殺されてもいいと言います。

二人は雪の降る中歩き出します。

男は女に魅入られてどんどん破滅していきます。
親から引き継いだ工場を経営していれば裕福に暮らせた
ものを持っていたものを失くしていくばかりで最後は
何もありません。
女はいっしょにいれば男の身を滅ぼしてしまう人ですが
悪女とは違うと思います。
男は最初から恵まれた人生で苦労はしていないし、女は
貧乏で惨めな人生を過ごしてきて盗んだり男に貢がせたりの
人生で二人とも普通の人生を生きていく方法を知らない
のでしょう。
女を賞賛する言葉、反対にさんざん非難する言葉、
よくこれだけの言葉がでてくるなと感心します。
男と女の駆け引きを見るのもおもしろいです。

二人は映画が進むにつれどんどん破滅していきます。
雪の中の二人は逃げられるのでしょうか。
まるで雪の中へ心中をしに行くように見えます。

ドヌーヴは美しいです。
ジャン=ポール・ベルモントの懐かしい名前を聞きました。
ちょっと頼りなげな雰囲気が出ていました。

次の作品は"恋のマノン"だそうです。
マノン・レスコーの現代版だそうです。
マノン・レスコーは学生時代に本を読みました。
行けたら観に行きたいです。
その次は"シェルブールの雨傘"だそうです。
これは何回か観ましたし、あまり好きではないので観る
つもりはありません。

映画館は小さな所でチケット売り場が劇場のすぐ脇です。
チケットを買う人の半分ぐらいが題名を言わずに
"ドヌーヴ"って言っているのが聞こえました。
それで通じてしまうのだからすごいです。

狩人は都を駆ける

2013-11-17 19:46:08 | 

我孫子武丸著"狩人は都を駆ける"を読みました。
仕事がない探偵が近所の動物病院の院長に紹介された
動物がらみの仕事をするという連作短編です。
1話目が他と比べられないほど強烈です。
やるせない話です。

"狩人は都を駆ける"
気難しい老女から誘拐されたドーベルマンの身代金を
届け犬を取り戻すよう依頼されます。
探偵は犯人が誰だかわかりました。
彼は犯人たちに殴られ縛られ腹を空かせた犬に咽を噛み
切られそうになります。
必死の反撃で犬は牙を犯人の一人に向けます。

"野良猫嫌い"
猫が次々に殺されていきます。
犯人探しの依頼がありました。

"狙われたヴィスコンティ"
ドッグショーの優勝をねらっているシーズ犬の飼い主
から犬の護衛を頼まれます。
依頼者に断ってトイレに行って戻ってきたら依頼者が
どこかへ行ってしまって犬だけがいます。
犬の毛にはガムがくっつけられていました。

"失踪"
町の猫が車に箱を積んだ男にさらわれていると噂が
あります。
さらわれた猫の救出を頼まれます。
何匹もの猫がいなくなっています。
犯人を取り押さえてみるとほぼ同業者です。
依頼された一匹しか捕まえてなくてその猫は依頼者に
渡したといいます。
他の猫はどうしたのでしょう。
猫の写真を持って飼い主を回ってみると意外なことが
わかります。

"黒い毛皮の女"
夜暗い細道を車で走っていて猫を轢いてしまいました。
猫を知合いの獣医に治療してもらい飼い主を探し回ります。
家や事務所が荒らされるということが起ります。
探偵は犯人は猫を探しているのではと思い当たります。

"狩人は都を駆ける"はこんなことはお話だといいきれない
ところが怖いです。
探偵が真実を警察に話しても信じてはもらえないかも
しれません。

謎解き道中 とんち探偵・一休さん

2013-11-16 18:14:06 | 

鯨統一郎著"謎解き道中 とんち探偵・一休さん"を読みました。
アニメに登場していたあの一休さんです。
鯨さんはアニメの脚本に関わっておられたのでしょか。
この本の一休さんはちょっと生意気な感じです。
一休と茜と新右衛門の三人が茜の両親を探す旅に出て
その土地で出会う問題を解決していくというものです。
八話あります。
茜の父は猿飼いで母はアルキ巫女です。
お寺に泊めてもらいながら旅を続けます。
両親は見つかりません。
でもその土地を離れようとすると助けてあげた人が
後を追ってきて何年か前に見た人がいてどこそこへ
いこうとしていたと教えてくれます。
その言葉に従って行き先を決めて進んでいきます。
終わりのころ一休は茜の両親がどんな役目をもった
人達かわかってきました。
最後の章では驚くべきことがわかります。
そして三人は京都へ帰っていきます。

話の中に出てくるとんち話はこんな風です。
①明の風景と同じ風景を見せよ
②つっかい棒を二つに切ってもつっかい棒として使える
様にせよ
③お堂に貼られている札を渡した紙で全部隠せ
④筆に手をかけずに書を書け
⑤ある女性の庭をその庭よりはるかに大きい庭より
大きくして欲しい
⑥畳の上を歩かずにその先の襖をあけよ
⑦塩と胡椒が入って瓶を蓋を開けずにどちらに何が
入っているか示せ



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回答はこちら 本を読もうと思う人はパスして。

①夜空の月を見せる。月は明でも日本でも同じ
②棒を縦に裂く
③見ている人の目の前に紙を広げ見えないようにする
④誰かに筆を持ってもらって紙の方を動かす
⑤門を表と裏を反対にして広い外側を庭とする
⑥畳の上を走る
⑦二つの瓶を火の中に投げる。急いで取り上げられた
瓶が高価な胡椒の入った瓶

安吾探偵控

2013-11-14 19:56:45 | 

野崎六助著"安吾探偵控"を読みました。
探偵小説の作家が京都で老人に出会い昔話を聞いて
その話を書いたという形です。
探偵役は坂口安吾です。
昭和前半活躍した実在の小説家です。
この話をしてくれた老人が子供のころの話で彼が助手を
努めています。
安吾は探偵小説も書いているようです。たぶん読んだこと
ありません。
安吾の小説を読んでいたなら本の中で語られる安吾に
ついてずっと楽しめるでしょう。

下宿していた居酒屋の家出娘を探して欲しいと頼まれ
娘がいっしょにいる柳子の家である紅酒造を訪ねました。
そこで姉の婿の朔二郎が殺されているのに出会います。
複雑な家で代々女系家族でしたが寝たきりになっている
トキは二人の息子を生みました。
紅酒造を継いだ長男は1年前に家族と共に事故死しました。
娘三人を連れて戻ってきたのが次男の万造です。
満州にいたといういい加減な男ですが酒造を継いで
まじめにやっているように見えます。

雪が降り止み朔二郎の足跡だけが残っている倉庫の中で
朔二郎は見つかりました。
家には万造夫婦と三姉妹と酒の仕込みでやってきている
酒男たち数人と使用人三人がいます。
安吾は小僧を連れて話を聞いてまわります。
やがて万造夫婦と朔二郎の妻だった雛子、別の部屋で
食事をしていた杜氏が毒を飲まされ万造夫婦が死にました。

彼らの前に国税庁の宮田が列車に轢かれて死んでいます。
事故死とされましたが彼の死も一連の事件と関係が
あるのかも。

昭和の始めごろ話です。
そのころの雰囲気がただよっているような本です。
登場人物は存在感があります。
途中で小僧が朔二郎の犯人を言い当ててしまい、あれあれ
探偵役は安吾ではなかったのかと思ってしまいました。
安吾は雛子に過去に好きだった人の面影を見て積極的には
動いていません。
かといって真実が見えていなかったわけではありません。

朔二郎が死んだのはいってみれば、はずみです。
主人夫婦が殺されたのはいったいどんな理由だったの
でしょうか。
読み終わって理由ってあったのだろうかと疑問です。
家中の人が何か隠しているような本当のことをしゃべって
いないような雰囲気です。
犯人を知っていながら匿った人たちもいます。
それほどの深い絆があるようには見えない人たちです。

読み終わってなんか納得できない気分になります。
人を好きになったため起きた事件といえるのですが
想われた相手は何も感じていないようだし、事件後に
付き合うこともないし、いったいなんだったんだろうと
思います。
それでもたまに昭和の雰囲気のある本を読むのは
おもしろいです。
日本酒の製造工程の話もおもしろかったです。

ドッペルゲンガー宮 あかずの扉研究会流氷館へ

2013-11-13 19:13:52 | 

桐舎巧著"ドッペルゲンガー宮 あかずの扉研究会流氷館へ"
を読みました。
厚い単行本です。
二本松翔は大学に入学してあかずの扉研究会のメンバーに
出会い入りました。
推理力が抜群の会長の後動、自称名探偵の鳴海、鍵開けの
名人の大前田、霊能力をもつ咲江、由井広美の会員がいます。

お嬢様の全寮制の高校の純徳学院の先生が会を訪ねてきます。
去年家に帰ったまま学校に戻らなかった氷室涼香の祖父の
館に招待されている、涼香が家に閉じ込められているのでは
ないか探って欲しいと依頼されます。
去年先生は「たすけて」と書かれた紙を拾いました。
館に集まっていた人々に渡したといいます。
館には今年も推理サークルのメンバーが集まります。
先生と涼香の同級生の涼子に、追いかけてきたやはり
同級生の李岡もやってきます。
あかずの扉のメンバーの鳴海も館に入り込みます。

他のメンバーは遅れて車でやってきます。
翔たちが館に着いて屋敷に入ると誰もいません。
鳴海と携帯で連絡を取ると館とまったく同じ設計の
窓がない家に閉じ込められていることがわかります。
どこだかわからない場所で次々と人が殺されていきます。
外に出されたのは去年いなかった高校生の男子と
鳴海だけです。
鳴海は薬で意識を失わされ救命胴衣を着せられ川に
浮いていました。

後動が推理して場所を特定して乗り込んだときには
自殺しようとしていた一人以外の残っていた全員が
殺されました。

後動や鳴海の推理で事件は二転三転しながらも真犯人を
見つけ出します。

とにかく長いです。
もう少し短くしてもよさそうなものです。
隠された屋敷のトリックは現実には作るのは難しい
だろうなと思うものですがあったらおもしろそうです。
大勢の殺人を起こす理由は八つ当たり的なところが
あって無茶です。
あかずの扉研究会のそれぞれの人物の性格はていねいに
書かれています。
シリーズになっているようです。

パリの恋人

2013-11-12 19:23:43 | 映画
著者 :
パラマウント ジャパン
発売日 : 2006-04-21

映画"パリの恋人"のDVDを借りてきて観ました。
1957年の作品だということですが、古さを感じ
させません。
主演がオードリー・ヘップバーンにフレッド・アステア
のミュージカルです。
本屋の店員のジョーの店に女性雑誌のカメラマンをして
いるディックが撮影場所としてやってきます。
ジョーにモデルとしての才能を見出したディックはパリ
での撮影に誘います。
ジョーは共感主義に惹かれておりパリにいる提唱者の
教授に会えるかもしれないと行くことを承知します。
お決まりのジョーとディックが恋に落ちるという話で、
特に内容がある映画ではありません。
モデルとしてドレスを紹介するのですからオードリーの
美しいドレス姿がたくさん見られます。
現代でもぜんぜんおかしくない洗練された美しいものです。
オードリーは美しい人ですね。
歌やダンスのシーンがたくさんあります。
オードリーはクラシックバレエを習っていたということ
ですがダンスシーンは優雅です。
アステアが闘牛士のまねをして踊る場面があるのですが
ほれぼれと見入ります。
着ていたコートを脱いで赤い裏側を闘牛士の持つ赤い布に
みせて振るのですがその動きが美しいです。
今のダンスは体力がなけれなできないような激しい
動きですがこの映画のダンスは静かで緩やかで優しいです。

ジョーはパリで教授に出会い仕事をめちゃめちゃにしたり
すっぽかすのではないかと大勢の関係者をやきもきさせます。
お話に、現実の責任感を持ち込んでどうのこうのというのは
野暮ですが仕事は真面目にやった方がいいよ。
美しいオードリーをみたり優雅なダンスを見たりと楽しい
映画です。