雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

要介護探偵の事件簿

2012-03-31 20:35:08 | 
中山 七里
宝島社
発売日:2011-10-07

中山七里著"要介護探偵の事件簿"を読みました。
前に読んだ"さよならドビュッシー"で火事で亡くなった
香月玄太郎が主人公です。
病気で体が不自由になって火事に会うまでの間に起こった
事件の連作短編集です。
ワンマンで言いたいことを誰に向かってでも言う
大規模な不動産業を営むお年寄りです。
名古屋が舞台です。身近な地名が出て来るので
親近感を覚えます。

今気がつきましたがシャーロックホームズの題名を
もじってあるのですね。
"要介護探偵の冒険"
付合いがある建築会社が建築中の家でその家の施主で
建築家の男性が殺されていました。
家は密室でした。
場所が建築中で関わった人達が建築に関係あるという
ことを聞けばきっとこうなんだろうとわかる人は
多いのではないかと思います。

"要介護探偵の生還"
玄太郎が倒れた時の状況、病院でのリハビリ、
みち子が介護をするようになったいきさつが
描かれています。
最初は言葉を発することもできませんでした。
手も動きません。
好きだった模型作りを勧めると真剣にのめり込みました。
そして会社の株主総会でしっかり発言して解任される
のを回避できるまで回復しました。
リハビリ施設で親を熱心に訓練させている息子夫婦を
見かけます。
彼らが実は訓練中に死ぬよう企らんでいるのを
見抜き防ぎます。

"要介護探偵の快走"
お年寄りが襲われる事件が連続して起きます。
最年長の佐分利亮助も襲われます。
玄太郎が地域の運動会で車椅子の競技を行い勝者に
百万円を贈ると提案します。
競技は行われることになりました。
玄太郎に佐分利翁も参加します。
佐分利翁が勝ちます。しかし意外な結末に。

"要介護探偵と四つの署名"
4人組の銀行強盗が押し入った時に玄太郎も
居合わせました。
計画停電で地下金庫の扉が開けられることを知って
いて押し込みました。
金庫にあったのは銀行が所有していた金塊でした。
玄太郎はこの金塊が偽物であることを見抜き
首謀者が誰かを知ります。
押し込んだ4人に名前を書かせ刑務所を出たら
会社で雇うと約束します。

"要介護探偵最後の挨拶"
"さよならドビュッシー"に登場するピアニストの岬との
出会いの場面です。
国民党の金丸公望が殺されました。
レコード鑑賞をしている時に毒殺されました。
何も口にしていなかったのにどうして毒殺されたのか
わかりません。
聞いていたのがレコードということでどうやって
殺されたか岬が推理します。

おもしろいです。
会社を大きくするには押しが強くなくちゃできません
から強引な人です。
正義感のある人でいい人なんですけど側にいたら
疲れるだろうなと思います。

てのひらの父

2012-03-30 21:36:50 | 
大沼紀子
ポプラ社
発売日:2011-11-16

大沼紀子著"てのひらの父"を読みました。
この本好きです。というより登場するトモミさんが
好きです。
こんな感じの人が側にいたらいいなと思います。
こんな雰囲気の人いると思います。

タマヨハウスという女性専用の下宿屋があります。
食事付きです。
下宿人は3人です。
永瀬柊子34歳、就職活動中です。
久遠寺涼子26歳、司法試験の勉強中です。
北田撫子、でこちゃんは36歳アパレル業界に勤めています。
下宿の経営者のタマヨさんは60過ぎだと思いますが
恋人がアメリカで入院していると聞いてアメリカへ
行ってしまいました。
代理人に選出されたのがアメリカで暮しているタマヨ
さんの従兄弟のトモミさんです。
名前から女性だと思われていましたが現れたのは
こわもて顔の男性でした。
犬を乳母車に乗せてやってきました。
リタイヤしたということですので60過ぎなんでしょうね。
タマヨさんに言いつかった通り真面目に管理人の仕事を
こなしていきます。
家事をやってくれます。料理も作ってくれます。
3人に深くかかわってきます。

柊子の仕事仲間が会社のお金を横領して逃げました。
柊子は関わっていないのにとばっちりで首になりました。
そのうえ社長は柊子の就職活動のじゃまをします。
そのせいでいくら受けても就職はうまくいきません。

涼子はかたくなな子です。父親、兄が弁護士です。
でも家族は涼子が弁護士になるのに反対しています。
父親が病気で危険な状態です。

でこちゃんは10歳も年が下の同じ職場の上堂園潤に
結婚をせまられています。
お腹に赤ちゃんがいます。
お酒の席での軽い付き合いから始まりました。
でこちゃんは結婚に乗り気ではありません。

下宿の近くをうろうろしていて潤や涼子の兄の司が
トモミさんに投げ飛ばされています。
トモミさんはクリスマスや七夕などの行事も
準備してやってくれます。
トモミさんは下宿人を思って個人的なことに関わって
きますがさりとて高飛車というわけではありません。
うろうろおろおろとしていたりして、なんか愛嬌が
あります。

トモミさんがいなければ3人はお互い干渉しあうことは
なく淡々と暮したことでしょう。
潤や司も加わって彼女たちの付き深くなりました。

でこちゃんは潤と結婚して下宿を出て行きました。
柊子は司の紹介で弁護士事務所で働き始めました。
涼子は試験勉強続行中です。

タマヨさんが帰国したのと入れ替わりにトモミさんは
アメリカへ帰っていきます。
トモミさんには日本にやってくる理由がいっぱいできました。
残されていたテープには
「君らの未来が見たい。どんな人生を生きて、どんな
人間になって、どんなことにつまずいて、どんなふうに
それを乗り越えていくのか-。それが、見たくなった」
とありました。

"てのひらの父"って題名は内容と合ってない気がします。

2012-03-29 22:33:20 | 
横山 秀夫
徳間書店
発売日:2002-10

横山秀夫著"顔"を読みました。
主人公は婦人警官の平野瑞穂です。
鑑識で似顔絵書きをしていましたが、書いた似顔絵が
捕まった犯人に似ていなくて本人に似せて書き直しを
命じられます。
それを受け入れてしまって心を壊し何ヶ月か休職しました。
休職から戻った時は鑑識から出されてあちらこちらへ
移動します。
この本の初版は2002年です。
そんなに昔ではないのにひどく古い話のような印象を
受けます。
女性の地位が異常に低いです。
なんとか向上させようとがんばっている瑞穂の先輩に
あたる女性警察官が登場します。
女性警察官の姉や母と言われている人です。
彼女のやりきれなさにぎりぎり歯ぎりしている音が
聞こえそうです。
確かにそういう時期がありました。
でも今はそういうものはかなり越えてきたと思います。
警察というのは世の中から何十年も遅れている社会
なのでしょうか。
それともこの本の中だけの話なのでしょうか。
それぞれの地域や社会、会社ごとに状況は違うでしょう
から、あちらとこちらではまるで違うということは
あるでしょう。
書かれているように女性をとらえていては世の中の
半分を理解していないようなものです。
事件の本質だって見つけられないでしょう。
違和感を感ます。

東京ピーターパン

2012-03-29 19:00:27 | 
小路 幸也
角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日:2011-10-29

小路幸也著"東京ピーターパン"を読みました。
2011年6月30日から7月1日の出来事を登場人物が
語っていくという方法で書かれています。

杉下辰吾60歳
杉下は元は有名なバンドのギタリストです。
人気が影って来た時に家族も仕事も捨てて家出をしました。
今はホームレスになっています。
時々道端でギターを弾いてお金を得ています。

吉川宏52歳
交番勤務の警察官です。
杉下の過去を知っています。
荷物を預かってやったり緊急時に電話をするよう電話番号
を教えています。

石井和正34歳
印刷会社の営業をしています。
学生時代はバンドを組んでボーカルをしていました。

小嶋隆志26歳
ミュージシャンです。ベースです。
組んでいたバンドが解散してしまいました。
杉下がたまに路上で演奏をしていると聞いて探しています。

田中聖矢16歳
家はお寺です。
離れになっている蔵を改造してそこに住んで閉じこもりを
しています。

田中茉莉26歳
聖也の姉です。レストランや飲食店を経営する会社の
企画をしています。
母親がいなくて聖也は姉を頼っています。

ねたばれになりますので注意。
聖也の住む蔵に杉下、石井、小嶋が飛び込んできました。
そこへ茉莉も帰ってきます。
石井が杉下のギターを抱えて走り始めたのでいっしょに
いた小嶋と追っかけてきたのでした。
石井は車に人がぶつかってきたのに慌てふためき逃げて
しまったのでした。
気が動転しての行動でした。
話を聞いて杉下は知り合いの吉川に連絡します。
石井は逃げながらも救急車を呼んでおりぶつかってきた
人は病院に搬送されていることを知ります。
その人は病気でふらふらしていてぶつかってきたのだと
わかります。
聖也、茉莉の父親が騒ぎに気づきやってきます。
問題を起こせば蔵から追い出されます。
聖也は音楽を共にやろうとしている仲間だと言います。

言った手前一晩だけ共に結果をだそうと即席の
グループが結成されます。
聖也が作りためておいた曲のなかの一曲が編曲され
演奏することになります。
やって来た石井も加わります。
石井は昔ドラムをやっていました。
一晩集中して曲を作り演奏し歌いました。

朝になりグループは解散しました。

夢中になって何かを作ったということは関わった全ての
人が何かを得たことでしょう。
物語はこれでおしまいです。
これから先どうなるんだろうという思いが残ります。
何かは変るでしょう。
蔵という演奏できる場所があるんだから一晩だけと
いわず時々集まったらいいじゃないと思います。
人生を逃げてしまった杉下には将来は過酷ですね。
現状から抜けるには逃げた時以上のエネルギーが
必要です。
ところで題名の東京ピーターパンって何を現して
いるのかわかりません。
突然飛び込んできた人たちをピーターパンに
見立てているわけですか。
ちょっと無理があるような気がします。

鉄の骨

2012-03-28 20:40:03 | 
池井戸 潤
講談社
発売日:2009-10-08

池井戸潤著"鉄の骨"を読みました。
ゼネコンの談合を描いた物語です。
談合の話だと帯に書いてありとっつき難そうだと最初の
うちはあまり入り込めずに読んでいました。
そのうちスピードが出てあっという間に読み終わりました。
とてもおもしろいです。
おもしろいんですがすっきり感はなく、どよんとした
読後感があります。
登場人物達、信念に一本すじが通っていません。
ふらりふらりとしてちょっとむかっとします。
悪いことをするならするで自分はこれをすることになんら
抵抗がないと自覚してやれといいたくなります。
サラリーマンだから命令とあらばしかたがないという
状況はわかるのですが、それだからこそ嫌だなぁと
感じてしまいます。

永山徹男が主人公です。
建設の現場で指示をするのが仕事でした。
現場から業務課へ移動になりました。
公共事業の仕事を取ってくるのが仕事になりました。
最初は道路工事です。
談合するのが当たり前の状況で各社が集まるのですが
新しく指名された業者ががんとして談合に加わりません。
結局その会社が仕事を取ります。
加わらなかったからその会社が清い会社かといえば
そうではなく別の力が働いています。

もっと大きな地下鉄工事の入札があります。
徹男の会社の一松組も参加します。
何が何でも取りたい仕事です。
フィクサーといわれている三橋とその妻の兄で代議士の
城山がいます。
城山は情報を入手できる立場にあり業者を操っています。
お金も城山に流れています。
検察が城山のお金の流れを暴くのに懸命に動いています。
三橋は談合をなくして競争をしていくべきだと談合に
関わりたくないと考えを変えています。

徹男には学生時代からの恋人の萌がいます。
銀行に勤めています。
働き始めて4年あまり、二人の仕事に対する考えが離れて
いきます。
萌は銀行の先輩の園田からのアプローチを受けています。
一松組の取引銀行であり、銀行員の方が一松組の状況が
よく見えています。
萌は園田と結婚する約束をします。

一松組は談合に参加しないという方針でいます。
工法の新技術で他を引き離す低コストで工事が出来る
自信があり談合に加わらなくても取れると考えています。
しかし談合参加を求める要請が加わってきます。

三橋は徹男の母の郷里の近所の出身で母を知っています。
それで三橋は徹男に目をかけてくれます。
義兄とのしがらみではからずも談合のフィクサーとなって
しまって抜け出せません。
一松組も談合に参加するという話になります。

検察は城山のお金の流れをとうとうつきとめます。
入札のその日、一斉に捜査が開始されます。
一松組が地下鉄工事を取りました。
逮捕者がでます。
一松組からは逮捕者は出てません。
その裏には驚くべき出来事があります。

三橋に近づくために業務課に移動させられた徹男は
現場に呼び戻され元の仕事に戻りました。

登場人物の中で苦悩する三橋が一番好ましく感じました。
萌の態度はなんだかなぁ、二人を天秤にかけたように
思うのですがこんなの普通ですか。

どこいったん

2012-03-27 20:22:38 | 
ジョン・クラッセン
クレヨンハウス
発売日:2011-11-25

ジョン・クラッセン作、長谷川義史訳 "どこいったん"
を読みました。
絵本です。英語の題名は"I Want My Hat Back"です。
この本を紹介されている文をいくつか目にしたのですが
最期が恐い、これを子供に見せていいものかといった
感想です。
結末ははっきり書かれていないのでどんな内容なのか
実際に見たいと思って借りました。

お話はお気に入りの帽子を失くしたくまさん(たぶん)が
帽子を探して出合った動物たちに"ぼくのぼうしどこ
いったん"と聞いて廻ります。
どういうわけかこのくまさん大阪弁をしゃべります。
"しらんなぁ"
"みてへんで"
という答えや全然関係ないこというかめさんや
"みたで。あおうて まるいやつ"と違うぼうしの
こと教えてくれたりします。
そのうちはっとします。
あいつ、ぼくのぼうしかぶっていた、と思い出します。
取り返しにいきます。
といった話です。

なんとなくけんとうがついた結末です。
たしかに子供にどうしたのと聞かれたらどう答えたら
いいか困ります。
もっとも子供は深く考えることなく楽しんでいる
そうです。
童話というものは本来かなり残酷なものだそうですから
こういう話もありですね。
大人は残酷な結末を想像してしまいますが実際は
ぜんぜん別の結末だったのかもしれませんしね。
この訳が大阪弁というのがこの本にぴったしです。

あらら、落合恵子さんが発行人です。

追伸:3/28
一日経って思うこと。
くまさんとうさぎさん、
うさぎさんはぼうしを盗ったとくまさんに決め付け
られていますが盗ったのか拾ったのかは書かれていません。
どちらにしてもさっさと返せばよかったのに。
さもなければくまさんに出会わないようさっさと
逃げなさい。
くまさんは怒りのコントロールができないみたい。
怒った時に抑えて対応できるよう努力が必要です。
絵本の最後はくまさんがぼーとしている絵です。
くまさんが間違えたと放心状態になっているように
私には見えます。
この本はこの話から何かを学びなさいとか、見出しなさい
とかいっているわけではないのですがつい考えてしまいました。

私のミトンさん

2012-03-26 20:46:14 | 
東 直子
毎日新聞社
発売日:2011-07-12

東直子著"私のミトンさん"を読みました。
この本は読みにくくはないのですがよくわかりません。
ミトンさんは顔をみなければ赤ちゃんに間違えられる
小さなおばあさんです。
アカネは叔父さんが海外赴任で空いた家にタダで住む
ことになりました。
その家の地下室で眠るミトンさんを見つけました。
叔父さんはミトンさんを知っていました。
子供のころに出会っていなくなり又出合ったということです。
ミトンさんは果物が好き。

アカネには庄司くんという恋人がいます。
真剣にこの人だと考えている間柄の二人には見えません。
ミトンさんに驚き一旦は別れた二人ですがうやむやに
また付き合っています。
生まれた時から赤ちゃんが眠り続けているみほさんという
友達がいます。

ミトンさんを赤ちゃんにみえるように装って外に連れだし
川原で過ごすことがあります。

ミトンさんは普通の人間ではありません。
長い時を越えて出現するのですから妖精といっていいのかも
しれません。

ミトンさんがどういう性格なのかぜんぜんわかりません。
アカネがミトンさんを好きなのもどうしてなのか
わかりません。
だってミトンさんに魅かれる部分がありませんもの。

とびきり屋見立て帖 赤絵そうめん

2012-03-25 19:44:04 | 

山本兼一著"とびきり屋見立て帖 赤絵そうめん"を
読みました。
幕末の京都で道具屋の若夫婦の真之介とゆずの話です。
ゆずの実家も道具屋でそこの奉公人の真之介と駆け落ち
しました。
なんかそのへんの事情がわからないなぁと思って
いましたが、この本はシリーズの3冊目なのでした。
前のものも読んでみたいです。

"赤絵そうめん"
銅屋吉左衛門は何世代にわたって集めた莫大な道具を
持っています。
そのうちの赤絵50品をまとめて売りたいととびきり屋へ
声をかけてきました。
三国屋権太郎は病気の孫娘のため赤絵の鉢を欲しがって
います。
赤絵の鉢でそうめんを食べさせてやりたいということです。

"しょんべん吉左衛門"
談合で安く買おうとしている人々の話にのらず適正
価格で買い取る約束ができましたが吉左衛門が
しぶりだしました。
吉左衛門の心に沿うように宗太郎とゆずは大勢の人に
声をかけせりを開きます。
まとめて一人に売るより高い値段で売れました。

"からこ夢幻"
赤絵を買うつもりで店の品物を全部売って現金に
したため店には何もありません。
仕事ができないので店をお茶室にしつらえて奉公人たちに
お茶の手ほどきをすることにしました。
がらくたに見える物を収集していた人が亡くなりすべて
の品を引き取りことになりました。

"笑う髑髏"
引き取ってきた品物の中にミイラとか髑髏とか
いうものがいっぱいあります。
相撲興行の隣で頼まれて見世物小屋をすることに
なります。
手代たちが楽しんで小屋をやることになりました。
お茶の家元がそれらの品物は自分がもらう事になって
いた品だと全部を買い取っていきました。

"うつろ花"
銅屋吉左衛門から蔵にある品の目録を作って欲しい
と頼まれます。
品物を点検しながら作業をしていると空の入れ物が
あります。
中には借用書が入っています。
お茶の家元の宗春が借りていってます。
真之介は返してもらいにいきます。
宗春はゆずに家にきてお茶を立ててくれるならと
いいます。
ゆずはお茶会の準備をしに宗春のところへ行きます。

"虹の橋"
桂小五郎にお寺の別邸で三条実美をもてなすために
お茶をたててくれるよう頼まれます。

北森さんの冬狐堂シリーズで骨董品を扱う人々の
姿を見ました。
いろいろ細工したり人を陥れたりと、品物をただ
愛するというのとは違う姿が描かれていました。
その点こちらの本はそういう、えげつなさが薄く
構えて読み始めましたが肩の力を抜きました。
ただまったくないというわけではないです。
道具を愛する部分が強いです。
お茶会やお茶の道具がよく出てきます。
お茶を習うっていったい何習うのだろうと知らない
者は思います。
本の中でお茶室の準備をする場面や実際のお茶会の
描写などで、あー、こういうのいいなぁと感じます。
自然の美しさと人工の美しさが混ざり合って幸せな
時なんだろうなと思わせられます。

じゃお茶習ってみるかといわれれば、いえ結構ですと
しり込みします。

よろず占い処 陰陽屋へようこそ

2012-03-24 19:33:28 | 

天野孔頌子著"よろず占い処 陰陽屋へようこそ"を
読みました。
瞬太は中学生、お母さんと歩いている時に地下にある
陰陽屋というお店に入りました。
美しい顔をした安倍祥明という陰陽師が現れました。
いろんな心配事を抱えたお母さんは安倍の話すことに
納得していました。
瞬太はいんちきだと反発して乱暴を働いたことで店を
アルバイトで手伝うことになります。
瞬太には秘密があります。
王子稲荷で赤ん坊の時拾われて今の両親に育てられました。
瞬太は妖狐の血が流れて狐の耳になったり尻尾が出てきたり
します。

"陰陽屋はじめました"
アルバイトを始めるいきさつ、瞬太が妖狐であることが
あかされるプロローグです。

"狐憑き疑惑"
クラスメートの高坂史尋が登場します。
小学生の女の子が両親が殴りあっているとやってきます。
狐憑きだといいます。

"失せ物探し"
お祖母さんが亡くなり遺書を隠してあるからそれを
見つけた人に財産をやると書き残しました。
頼まれた二人は田舎の家の家捜しに出かけます。
お祖母さんが愛した飼い猫が一匹残っています。
この話はね、どこに遺書があるか私にもわかりました。

"家出人探し"
十何年も前に家出した娘を探して欲しいと頼まれました。
家を出る時妊娠していたといい瞬太のことをその時の
子供だと何の証拠もなく思い込んでいます。
娘を探し出しました。

"キツネ取材日記"
高坂史尋の日記です。
瞬太は妖狐であることを隠していてクラスメートに
ばれていないと思っていますが実はみんなが知って
いて知らんふりしていました。

"大きな桜の木の下で"
安倍祥明はお母さんを一生許さないと話しています。
その原因が明かされます。
インチキ陰陽師だと思われていましたが本当に
安倍家の人でした。

瞬太は中学生で子供っぽい話ですが瞬太と祥明の
二人の雰囲気いいです。

峠うどん物語上

2012-03-23 20:06:09 | 

重松清著"峠うどん物語上"を読みました。
中学生の淑子が語り手です。
祖父母はうどん屋を経営しています。
店のすぐ前に市営斎場が出来てしまいました。
"長寿庵"から"峠うどん"に店名を変えて斎場帰りの
近親者や親しい間柄というほどではないけどさっさと
帰る気になれないという人たちを迎える店になりました。
淑子は別の場所に住んでいますが休みの日に親に反対
されながらも店を手伝っています。

"かけ、のち月見"
淑子の同級生の従兄弟が交通事故で亡くなりました。
暴走族でした。ずっと会ってません。
手を焼いていた子でしたが親戚の人たちは大声で
泣いていました。
彼は理解できないでうどん屋を訪れます。

"二丁目時代"
お母さんが子供のころ育った町で知り合いだった人が
亡くなりそうです。
その人は子供達の心を掴みました。しかし大人たちから
お金を借りて消えました。
貧乏だった当時の人たちはいまだに付き合いがあります。
彼らの葛藤を描いた話です。

"おくる言葉"
子供のころは暴れん坊だった人が家を継いでお坊さんに
なりました。
ずっと担任だった先生が亡くなりそうで彼は葬式の
導師をしてくれるよう頼まれました。
おくる言葉をさがしています。
淑子も教えてもらったことがなくほんの数ヶ月在籍
していた先生におくる言葉をさがしています。

"トクさんの花道"
斎場の霊柩車の運転手のトクさんはテレビに出たことで
三十年前に離婚した奥さんの目にとまりました。
再婚して幸せに暮してきましたが認知症になって
入院していてもう長くありません。
幸せに暮してきた夫を忘れてトクさんに会いたがって
います。元妻の夫と、妻が引き取った自分の娘に
来てくれるよう頼まれますが頑として行きません。
トクさんの気持ちわかります。
元奥さんは本心から言っているのではないと
思います。人は本心を口にするとは限りません。

"メメモン"
小学生のミヤちゃんはグループで斎場の見学をしたいと
望みました。
百歳近い曾祖母と、祖父母、両親、兄弟と暮してきました。
曾祖母の死が近くなりました。
でも彼女は悲しくありません。物心ついたころより
曾祖母は認知症で両親の苦労を見てきました。
曾祖母が亡くなっても泣けないのではないのかと
思っています。

死を前面に出したお話です。
中学生が主人公ですから子供たちにも読んで欲しいと
いう思いで書かれているのだと思います。
取り上げられている主題が重いですからおもしろい
とはいえません。
難しい話はありません。
深く何か感じることがあるかといえば私はありません。
下巻を読みたいか、うーん、今はいいです。
いつか読む時があるかもしれません。

カワセミの森で

2012-03-22 18:50:50 | 

芦原すなお著"カワセミの森で"を読みました。
"山桃寺まえみち"に出てくる桑山ミラが主人公で語り手です。
"山桃寺まえみち"よりも数年前の高校二年生の時の話です。
父親は愛人と出奔、母親は自律神経失調症になりましたが
再婚しました。
女子高に入学し陸上部へ入部しました。
深山サギリはミラに憧れライバル校から編入してきました。
大金持ちのお嬢様です。
夏休みに誘われてサギリの別荘で過ごすことになります。
サギリのお母さんは双子だった実母の姉妹です。
サギリも双子でしたが兄は育ちが悪く、実母も出産時
共に亡くなりました。
サギリはそのことを自分のせいだと思ってきました。

家庭教師、サギリの祖母、クラスメートのリン、
サギリの両親と別荘で次々と人が殺されていきます。
サギリが自分にナイフをつき立てようとしている
ところが見つかります。
犯人かと思われましたが、被害者の一人でした。
犯人は意外な人物でした。
それにしても十何年も復讐に燃えて計画を練って
いたとは驚きです。
時はもっと有効に使わなくてはいけません。

芦原さんの独特の調子で文章が綴られています。
しかし、殺されすぎです。

ばくりや

2012-03-21 20:06:49 | 
乾 ルカ
文藝春秋
発売日:2011-10

乾ルカ著"ばくりや"を読みました。
『あなたの経験や技能などの「能力」を、あなたにはない
誰かの「能力」と好感いたします。』こういうことを
うたった店がばくりやです。
連作短編集です。

"逃げて、逃げた先に"
女性にもてまくります。
ついには家に住み着いてしまう女性まで現れます。
この能力を捨てたくてばくりやへ行きます。
交換する能力は選べません。
都合の良い相手が見つかって新しく手に入れたものは
刃物とぎです。

"雨が落ちてくる"
地元から離れると豪雨となって学生時代の旅行の催しには
まったく参加できませんでした。
豪雨でやむなく引き返してくると晴れるということを
繰り返しやがて参加をあきらめるようになりました。
この能力と交換して得たのは大食いでした。

"みんな、あいのせい"
勤める会社がすべて倒産してしまいました。
手にしたのは動物に好かれる能力でした。
動物園に勤めてうまくいくように見えましたが・・・

"狙いどおりには"
ドラフト一位で投手として入団したもののまったく
活躍できません。
同棲の女性に乱暴を振るう日々です。
彼女はタレントを目指していますがこちらも
ぜんぜん芽が出ません。
交換した能力はお互いがもっていたものです。
彼女は速球の能力を得て人の目をひきつけました。
彼が得たものは・・・

"さよなら、ギューシュン"
里親の元で育った男は泣き虫ですぐに涙が出てきます。
交換して仕事をバリバリこなす能力を得ました。
里親の息子で兄弟のように育った人を立ち退かせる
はめになる企画を経てました。
その人は彼に贈る花を取ってくるため火事の中へ
飛び込み亡くなってしまいます。
男が泣いていいのはほんとうに大切なものを失った時、
人生で一番うれしい時だと亡くなった人は言ってました。
男は彼を失って大泣きしました。

"ついてなくもない"
ついてない人生で見たくないものを見てしまったり
怪我をしたり旅行にいけなかったりしました。
交換してもらおうとばぐりやをおとづれます。
しかしばくりやは休みでした。店にいた人に
かえりなさいと交換を断られました。
ついてないように見えましたがそうすることで
もっと悪くなる危険を回避していたのでした。

"きりの良いところで"
何人目でしたというきりのいい出来事に出会う
男は女性につきまとわれてばくりやをおとづれます。
交換したものはばくりやの店員でした。
ノルマを達成するまで店にしばられることに
なりました。

"さよなら、ギューシュン"と"ついてなくもない"が
よかったです。
交換して得た能力は幸せを持ってきてはくれません。
相手がもてあました能力なんだからしょうがありません。

シューマンの指

2012-03-20 19:19:03 | 

奥泉光著"シューマンの指"を読みました。
こういう話はどういうジャンルなんでしょうね。
一応ミステリーってことなんでしょうがミステリーの
部分は弱いです。
いくらなんでも捜査のプロの警察がここまで何も
考えないかものかと感じます。
人の心の複雑さとか二面性とかを描いたものです。
ヒッチッコックのサイコのような感じですかね。
おっと、こんなこというとおもしろさ半減どころが
すっかりなくなってしまいますね。
一回ひねって事件の実態はこうだったんだと示され
ますが、もう一回本当はこうだったのですねと
示されます。
本の半分以上が音楽に対する論議で費やされてます。
この意見についていける人は幸せです。
まったくわかりません。ただ目で追っているだけです。

ピアノを弾く音大を目指している高校生の語り手が
天才ピアニスト永峰修人に出会います。
「僕らのダヴィンチ同盟」を鹿内堅一郎と共に作ります。
永峰の弾くピアノを私が聞いていた時プールに女子
高校生が投げ入れられるのを見るという事件が
起こります。

その後永峰は指を切り落とされ外国へと行ってしまいます。
本の中で私は永峰の弾くピアノを三回しか聞いていません。
鹿内は海外で指を失った永峰がピアノを弾いているのを
見たといいます。

読みにくい本でした。
それでも最期まで読みました。

柿のへた

2012-03-19 21:20:32 | 
花粉症でつらいです。
薬を飲んでいると楽です。
でも段々効き目が弱く短くなってきた気がします。
はっきり薬の効き目が切れたとわかる症状がとつぜんに
盛大に出ます。
目がかゆくくしゃみが出て喉が痛いです。
薬が切れた、ってなんだか薬物中毒みたいじゃありませんか。
飲むと治まると、これだけ症状をコントロールできるのに
なぜ完全に症状を押さえ込む薬が開発されないのでしょうね。


梶よう子著"柿のへた"を読みました。
小石川養生所に併設されている御薬園に勤める同心
水上草介が主人公です。
まだ役を継いだばかりの22歳です。
上司にあたる芥川家の娘の千歳は17歳です。
千歳は道場へ通い腕もいいです。
草介は荒子(薬の精製をする)や園丁に水草どのと呼ばれ
います。
草介は植物が大好きです。ですから仕事も好きです。
植物が話題になる連作短編集です。

"安息香"
奉行所の小石川養生所見廻り同心高幡はおよしという
看護人が気になります。
草介に惚れ薬はあるかとたずねます。
安息香の話が出ます。
高幡とおよしのなれそめの話です。

"柿のへた"
千歳からいっしょの道場に通う少年のため強くなる薬は
ないかと訪ねられます。
実際は強いのに試合となると力が出せません。
しゃっくりを止めるため胃や腸を暖め血のめぐりを
よくするため柿のへたを勧めます。
この少年は強いがため負けてしまうのでした。
強いから負ける、おかしいでしょ。
やさしいのです。
草介が少年の父親に大人と練習でくきるよう
お願いしました。

"何首烏"
蘭方医の川島は漢方医が多い養生所で漢方医と対立
しています。
園丁の胃腸の手当てについて論争します。
手ぬぐいを被っていた頭から手ぬぐいを取られたら
円形脱毛症ではげていました。
草介は何首烏(かしゅう)の粥を作って川島をもてなします。
何首烏は腎にいいそうです。腎はストレスで弱るそうです。

"二輪草"
平太という絵のうまい少年と足の疼痛の父親が養生所に
入所しています。
平太に絵を習わせてやろうと出てきましたが絵師は大金を
要求してきました。
誰かにトリカブトを抜かれて持ち去られました。
二輪草は疼痛に効くそうです。

"あじさい"
勝俣という隠居が若者達に好かれたい、必要とされたいと
努力しています。
息子は大阪在藩で、息子の妻と暮しています。
嫁の料理は薄味で口に合わない、離れた墓地に通って
お参りするよう強要すると嫁に不満をもっています。
頼られた男に金を渡し、いっしょに旅に出ようとします。
嫁が力ずくで阻止します。
その男はよからぬ男でした。
熱を出したお嫁さんのため草介はあじさい茶を
持っていきます。

"ドクダミ"
唐物問屋いわし屋の籐右衛門から草介が医者になるため
勉強する援助をしたいとの申し出がありました。
便秘の薬としてドクダミ茶を勧めます。
植物が好きな草介はいわし屋の申し出を断ります。

"蓮子"
万福屋という菓子屋の国太郎は漢方薬をまぜたお菓子を
完成させようとしています。
妻おたよは体が弱いです。
妻を実家へ帰してしまいました。
本当は妻のために新製品を開発していたのです。
蓮根の実は蓮子と呼ばれて滋養にいいといわれています。

"金銀花"
海産問屋の隠居が昔別れた娘だといっておりんを寮へ
住まわせています。
高幡と結婚したおよしはおりんと幼馴染です。
隠居を騙しているのではないかと心配しています。
実際は隠居が無理を言っておりんを連れてきたのです。
金銀花はスイカズラです。歯にいいそうです。

"ばれいしょ"
草介は園でばれいしょを作っています。
ばれいしょを広めたいと願っていて研究のためも
育てています。
食べ方の研究をまわりの知り合いが手伝ってくれます。
またしても医者にならないかとの話が持ち上がります。
草介は園にいたいと断ります。

好きなことがあって打ち込める草介は幸せです。
植物の知識でまわりの人をいやそうとします。
正義感があって元気な千歳も好感が持てます。

"一朝の夢"も朝顔をめぐる話でした。
著者の梶さんは植物がお好きなのか詳しいです。

キングを探せ

2012-03-18 19:28:09 | 

法月倫太郎著"キングを探せ"を読みました。
著者名と同じ法月倫太郎とそのお父さんの警部が登場
するシリーズの一冊です。
この設定エラリー・クイーンとそのお父さんの設定と
同じです。

この事件が4人による交換殺人だということは最初に
犯人たちが相談している場面が登場して読者には
わかっています。
名前はニュックネームで呼び合っていて誰だかは
明かされていません。
最初に交換で殺人を実行し、自分の妻を仲間に殺させ、
自分は事故死してしまう男がいます。
この男が事件を解きほぐしていく鍵となっています。
殺人事件のうち二つが関係していることがわかります。
そこから徐々に全貌が明らかになっていきます。

三人による交換殺人、それが4人による交換殺人と
倫太郎は考えを進めていきます。
誰が誰を、どの順番でというのをトランプのカードが
示しています。
その組み合わせが何度となく示されます。
その説明の難しいこと、数学の授業みたいです。
これがさっと頭に描ける人はこの本を充分に楽しめる
でしょう。
私にはすっと頭に入ってきません。
読み飛ばしです。

倫太郎が犯人に罠をしかけます。
しかし犯人には罠だと最初から見抜かれてその裏を
かいた反撃に出られます。
最期には法月親子が勝ちます。

父親が警察官で情報は筒抜けで自分は警察官でないから
警察が出来ないこともできる倫太郎です。

すんなり理解できないのでなんだか消化不良です。

物事は計画通りにいかない突発事が出現するものです。
4人での交換といったら思いもかけない出来事が起きて
収集がつかなくなるのが目に見えています。
そんなことそもそも無理でしょうと感じました。
やぱり早々にほころびが出てきたという話です。