雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

『アリス・ミラー城』殺人事件

2012-11-30 20:02:16 | 

北山猛邦著"『アリス・ミラー城』殺人事件"を読みました。
孤島の館に集まった複数の人達が次々に殺されていくと
いう館物です。
探偵が八人島に集められます。
依頼者はルディというイギリスの女性です。
ルイス・キャロルのアリスの作品にちなんで城は作られ
ています。
ルディはこの城にあるアリス・ミラーを探して欲しいと
依頼します。
最後まで生きていた人に城は渡されるといいます。
翌日起きた時から殺人は起こります。
最初の事件は密室で起きました。
次々に事件は起きます。
錯乱状態になり斧を振り回し誰彼かまわず殺そうとする
人が現れます。
屋上に連れ出し鍵をかけて締め出し寒さで動けなく
なるまでほっておこうとしました。
その人が連れ出されて殺されてしまいます。
首を吊っている人が見つけられます。
精神的なことで口がきけなくなった依頼人を連れて島に
やってきている探偵がいます。
彼らはお互いの手に手錠をかけられて行動を共にする
しかなくなります。
恐怖で館を出て行ったお手伝いを追ってルディーは
館を出ます。
やがてその二人も殺されて見つかります。
後半はこの人が犯人なのかと思わせる人が何人か出てきます。
そのたびに殺されて誰が犯人かわからなくなります。
とうとう手錠で繋がれた二人も犯人に追い詰められます。
彼らも殺されてしまいます。
ここまでくるとあれ、一人多いと気づきます。
作者の仕掛がやっとわかります。
わざとぼかされた出来事があります。
なんかおかしいと思ったことの理由がわかります。

なるほどと理解しました。
しかし大量殺人というのはやはり気持ちのいいものでは
ありません。
殺人をするという理由がちょっと腑に落ちません。
こんなことをしようとするのは異常者なのだから
理由が変でもしょうがないということですか。
最近のミステリーは犯人が捕まって終了ではなく
捕まらないものがあります。
これもそうです。
でもやはり探偵が決着をつけて犯人が捕まるものの
方がいいです。

遥かなる水の音

2012-11-29 19:11:07 | 

村上由佳著"遥かなる水の音"を読みました。
よかったです。
話の中に引き込まれました。
久遠周(あまね)はパテシエです。
高校を卒業してフランスへ来て10年あまりです。
死者の世界を感じることが出来る人です。
彼はホモです。
やはりホモのジャン=クロードと同居していました。
姉の緋沙子もやはりフランスで暮らしています。
旅行代理店に勤めています。
ビストロのオーナーのアランと同棲しています。
奥村浩介と早川結衣はアマネの中学時代からの同級生です。
二人は共同で雑貨店を経営しています。
結婚はしていません。
アマネが病気で亡くなる前に死んだら灰をサハラ砂漠に
撒いて欲しいと姉とジャン=クロードに頼みます。

浩介と結衣はアマネの葬式にフランスを訪れそのまま
サハラ砂漠に出発するというジャン=クロードと緋沙子と
共にサハラに行くことにします。
彼らは少し前に浩介が酔っ払って結衣と関係を持ちました。
それから二人はぎくしゃくとしています。
緋沙子はアランとの関係に悩んでいます。
アランは離婚経験者でもう結婚はしないと堅く決めています。
緋沙子は孤独を感じています。
ジャン=クロードはアマネよりずいぶん年上です。
アマネとの間に体の関係はなかったと最後の方で打ち
あけています。
しかしジャン=クロードのアマネへの思いはすごく
深いものがあります。
彼はお金持ちで言いたいことをそのままに口にする人です。

アマネとジャン=クロードとはサハラで知り合いました。
アマネがその時通ったルートでいこうとスペインの
セビーリャからジブラルタル海峡を渡ってモロッコへ
入るルートで1週間ほどかけていくことになりました。
アフリカからはチャーターしたバスで行きます。
ドライバー兼ガイドはサイード・アリです。
ちょうどラマンダの時期で彼は昼間は食事も飲み物も
取りません。

旅は続きます。
旅費はジャン=クロードが出してくれてホテルは
りっぱなところに泊ります。

ジャン=クロード、緋沙子、浩介、結衣そして
亡くなっているアマネの魂が交互に語る形式で
物語は進んで行きます。
途中で浩介が仕事でフランスへ戻り、飛行機でまた
戻ってくることになりました。
戻りの飛行機が墜落したニュースが流れ一時全員が
動揺しました。
地元の人々がアラーの神に祈ってくれます。
浩介は腹痛で飛行機に乗り遅れ、携帯の電源切れで連絡
出来ずで次便で突然現れます。
この出来事で浩介と結衣の間は深まります。

こうやってみんなはサハラ砂漠へと到着します。
サハラの描き方がいいです。
旅の間、いっしょに移動しているような感じがします。
雄大な砂漠に立ってその風景を見ているような気持ちに
なります。
緋沙子はここでアランとは深く心が繋がることはないと
理解します。
ジャン=クロードのアマネへの深い思いは心を打ちます。
家族、友人と決別するための旅であり、また亡くなった
人を思い出す旅でもあります。
いい本でした。

月は怒らない

2012-11-28 19:58:33 | 

垣根涼介著"月は怒らない"を読みました。
三谷恭子は市役所の戸籍課に勤めている公務員です。
美人ということもなく覚めた感じの人です。
質素に暮らしています。
梶原彰はどこにも所属せず一人で仕事をしています。
債権者から頼まれて借金まみれになった人を漁船や
工事現場や風俗に売り飛ばして手数料を得るという
仕事をしています。
小倉弘樹は学生です。
子供の時祖父に合気道を教えられました。
和田は市役所近くの交番に勤める妻帯者の警察官です。
この三人が恭子を好きになります。
梶尾は戸籍を手に入れるため市役所の窓口で恭子を
見てそれまでの女性には感じなかったものを感じます。
弘樹は恭子が仕事仲間と食事している時酔客に絡まれて
いるのを助けて知り合いました。
和田は交番前を通る彼女を見かけて惹かれました。
最初に梶原、次に弘樹、そして和田と三人と付き合い
始めました。
和田には他に二人と付き合っていることを打ち明け、
妻帯者とは話すだけと承知させています。

三人とは別に彼女には話す相手がいます。
公園で亀に餌をやっている老人です。
彼は短期記憶障害があって昔の記憶は残っているの
ですが近くの記憶は1週間ぐらいしか残りません。
毎週始めて会うようなふりをして老人と会話します。
老人は忘れてしまうため日記を書いており読み返して
彼女とは毎週会っていたのだということを知ります。
老人とはかなり深く人生を語りあっています。

三人とは恭子が望んだのではなく彼らに望まれて
付き合いだしました。
覚めた恭子に彼らは深く踏み込んではきません。

恭子は老人と話して一人の男と深い関わりを持つ
ようにしあとの二人とは別れようとします。
まず和田にもう会わないと話します。
弘樹にも別れを告げます。

和田は警察官であり妻もいます。
つらくても思い切ることができます。
しかし弘樹は出来ません。
弘樹は梶尾に暴力を振るい、反撃されます。
恭子の家の前にいた和田にもナイフを振るいますが
誤って恭子の顔を切ってしまいます。
こんなことがありましたが恭子は梶尾を選びます。

似たような過去や呼びあう心を持った人たちが恭子の
元に集まりました。
かといって何も三人と付き合うことはなかろうにと
思います。
最後には血を見ることになるかもしれないことは
想像つくでしょうに。
梶尾と恭子は同じような過去がありだまっていても
理解し合えるような人間同士だったようです。
私には不可解な話でしたが、わかる人には共感
できることでしょう。

詩羽のいる街

2012-11-27 19:52:25 | 
角川グループパブリッシング
発売日:2008-09-25

山本弘著"詩羽(しいは)のいる街"を読みました。
詩羽は変わった女性です。
住家を持ちません。お金も持ちません。
人が求めることを提供して変わりの物を貰います。
わらしべ長者みたいなことですね。
そうやってコミュニケーションの輪を作り上げて
しまいました。
毎日誰かの家に泊まってどこかで食事をします。

"それ自身は変化することなく"
漫画家志望の飯野陽生が子供たちのカード交換を
仕切っている詩羽と出会います。
デートと称して詩羽に1日連れまわされます。
彼女がどのように暮らしているのか紹介されます。
賞味期限切れ間近の食品を仕入れてその日のうちに
安く提供するよう知識を提供したり、畑仕事をしたい
人に土地を持っている人との仲介をしたり、古書店に
インターネット販売の方法を紹介したりとします。
陽生は自費出版を仲介する人に出合って自分が書きたい
ことを曲げて描くより自費出版という手があるということ
を知らされます。

"ジーン・ケリーのように"
中学生の沙世は山の中で首つり自殺をしようとしています。
詩羽が通りかかります。
詩羽はペルセウス座流星群の観察会を山のてっぺんで
開こうと準備のため山を歩いていました。
詩羽は流星を見てからにしようと沙世を説得します。
坂城が書いた漫画"戦場の魔法少女"の内容が重要な
役割を果たしています。
彼女が死のうとした理由もこの漫画から起こった
出来事からです。
インターネットの書き込みで戦まほはさんざんに
叩かれました。沙世はただ書き散らして人々の間に争いを
起こすのが楽しい相手と文章で戦いましたが絶望して
死のうとしました。

"おそろしい「ありがとう」"
大学教授の長船紘一郎がネットの掲示板の荒しをして
いる犯人でした。
その他にコンビ二の商品に穴を開けたり図書館で重要な
部分を切り取ったりアイスをひっくり返して商品棚に
置いたりと様々な悪いことをしています。
長船の前に詩羽が現れます。
彼がしたすべてのことを知っています。
彼の後をつけている仲間がたくさんいます。
詩羽は長船を破滅させるのではなく生き方を改めさせ
ようとします。
誰かが料理をしに訪れてきます。
病気になった時には看病に来てくれる人がいます。
前話で沙世を痛めつけたのは長船です。
長船は抵抗します。しかし何かは変わってきます。

"今、燃えている炎"
詩羽の住む賀来野市でアニメのフェスティバルが
開かれます。
クイズ形式のオリエンテーリングに早紀は頼まれて紗世と
ペアを組んで参加することになりました。
ペアの相手と助け合い、別のグループとも交流しない
ことには先へは進めません。
そのように仕組まれたゲームです。
早紀は坂城しじま、戦まほの作者でした。
彼女も戦まほを書き上げてから息詰まっていました。

詩羽、おもしろいキャラクターの人物です。
こういう人物現実にいると思います。
人の心を暖かくしてグループの輪を広げていく人。
詩羽の自分に能力があると思っているところはちょっと
鼻につきます。
カリスマ性があってまかり間違うと人を狂気に落ち
込ませる力を持つ人でもあるのではないかと思います。
彼女は良い方に使って悪用することはない人だと
信じます。
小さなコミュニティで満足できる人なんでしょうかね。
お金を持たない、住みかを持たないというのは長続きは
しないように思います。
これから先どう生きていくのだろうと気になります。
"戦場の魔法少女"の内容も考えさせるものでした。
読み応えのある本でした。

空色バトン

2012-11-26 21:42:22 | 

笹生陽子"空色バトン"を読みました。
四十歳で主婦が急死しました。
高校生の息子と小学生の娘がいます。
葬式に母の学生時代の友人だという三人の女性が弔問に
訪れます。
息子、母、母の友人たちがそれぞれ時を違えて誰かに
語ったり独白したりする変わった構成の話です。

"サドルブラウンの犬"
望月(旧姓樹村)ショーコが亡くなる場面です。
セイヤ、マドカの二人の子供が残されます。
夫は単身赴任中です。
吉野、森川、陣ノ内の三人の女性が弔問に訪れます。
ショーコが彼女たちと中学の時漫画の同人誌を1冊
作ったことがあることを知ります。

"青の女王"
小学五年の時の話で陣ノ内が語ります。
陣ノ内は転校してきました。
前の家にいた時に絵画教室に通っていました。
人の輪に入ろうとしませんでした。
ショーコによって絵が好きな三人のグループに
出会いました。

"茜色図鑑"
中学三年で吉野が語ります。
森川はソフトボール部ですが盲腸をこじらせしばらく
運動はできません。
吉野は漫画を描いては投稿していますが認められません。
卒業記念に漫画の冊子を作ることを思いつきます。
4人のほかに仲間を募りました。
野球部の芹沢が加わりました。
先生の要望で登校拒否している平岡が加わることに
なりました。
平岡のうちの彼が住んでいるプレハブで作業することに
なりました。
平岡は内にこもっているタイプとは違ってよくしゃべる
タイプです。

"ぼくのパーマネントイエロー"
大学生の芹沢の語りです。
2浪後の1年生です。
平岡への手紙の形式をとっています。
平岡は大検の受検準備中です。
合コンで森川と出会います。
森川は専門学校で簿記を学んでいます。
吉野は国立大、陣ノ内は美術大学に行っています。
ショーコは地元の短大を出て結婚することになっています。
中学の時の冊子作りに関わった人達のその後が芹沢に
よって紹介されます。

"パステル・ストーリー"
亡くなったショーコが語り手です。
セイヤが8歳の時ですから10年ほど前30歳ぐらいの
時の話です。
夫が単身赴任となりました。
必要にせまられ車の免許を取りました。
陣ノ内が隣の市で展覧会を開くことになり車で出かける
ことになりました。
吉野はバリバリ働いています。ミクという子供がいます。
森川はママさんバレーや草野球を楽しむという生活を
しています。
ショーコはいわば平凡な主婦です。
仲間に会ってちょっと落ち込んでいます。

"マゼンダで行こう"
現在に戻って吉野の娘のミク14歳が語ります。
吉野は離婚して故郷にミクを連れて帰ってきました。
エプロンをつけて犬の散歩をしているセイヤに出会います。
セイヤの妹のマドカとも知り合っていました。

時間があっちへとんだりこっちへとんだりでへんな
雰囲気の話でしたがおもしろかったです。
ショーコを若くして死なせてしまう設定でなくても
いいじゃないとは思いました。
小説なんだもの、どんな設定だってできるんだもの
これからがある人を殺さないで欲しいな、と感じました。
学生時代の仲間が大人になって、それぞれ別々な
生き方をしているけどつながりがあっていいです。

おかえり、Mr.バットマン

2012-11-25 19:40:16 | 

佐川光晴著"おかえり、Mr.バットマン"を読みました。
山名順一は翻訳家です。
妻は学校の教頭をしています。
山名はずっと家で仕事をしてきました。
家事、息子の子育ては彼がしてきました。
息子は大学生になり家を出ました。
妻は仕事にのめり込みほとんど会話がありません。
山名は夫婦でいることにほとほと嫌気がさしています。
家を出て行きたいと考えています。

編集者からイギリスの有名作家クルスティーヌ・H・
リスメイヤーの娘のアガサをホーム・ステイさせて
くれるよう頼まれます。
アガサは山名が手紙のやり取りをしていた作家フィリップ・
ジェーロムの遺稿を手にしておりそれを元に本を書こう
としています。
昼間は二人それぞれ仕事をするという生活が始まり
ました。
バットマンとは動物なのか鳥なのか都合によって変わる
こうもりになぞらえて二つの言葉の間を行き来する
翻訳家の自分のことを指して言ってます。

最後には生り行きでアガサと北海道に逃避行することに
なってしまいます。
親友の田中がアガサの母、山名の妻、編集者の間を
うまく取り持ってくれてうまく決着がつきました。

翻訳家の仕事はたいへんだなってことがわかります。
編集者によってずいぶん内容が左右されてしまいます。
この内容がどこまで真実なのかわかりませんけどね。
でも最近の翻訳物って読めません。
2、3ページでもうだめってなってしまいます。
ティーンエージャーのころは日本の作家のものは
読めない、海外物でなくちゃと思って読んでいたの
ですけど今は反対になってしまいました。
大型書店の膨大な本を見て時々思います。
日本でこれだけ出版されているなら世界中ではどれだけ
の本が出版されていることか、でも自分が読むのは
日本のものとほんの少々の翻訳物だけです。
きっといっぱいおもしろいものが世界中の国々では
出版されていることでしょう。
宝の山のほんの一部だけしか手がだせないくやしさを
感じます。
でももう読めません。
若い人達には言葉の壁を乗り越えて世界中の本を
読んで欲しいと思います。

完盗オンサイト

2012-11-24 20:44:27 | 

玖村まゆみ著"完盗オンサイト"を読みました。
江戸川乱歩賞受賞作とあります。
しかしこの本ミステリーとはいえません。
普通の話です。普通というのもおかしいですけど。
どうして江戸川乱歩賞なのかなぁ。

水沢浹(とおる)はロッククライマーです。
高校を中退してずっと外国の山を登っていましたが
日本へ帰ってきました。
まだ二十一歳です。
やはりクライマーで八歳年上の伊藤葉月に振られました。
お金がなく公園と間違えて入り込んだお寺で倒れて
厄介になりそのままお寺に住むことになります。
和尚は岩代辿紹、お寺には斑鳩という子供がいます。

お寺はお金がなく岩代は孫受けの建築会社で働いています。
浹は岩代に頼んでビルの建築現場で働くことになります。
休憩時間にクライミングの訓練をしているのを建築主の
國生地所の國生環に見られてしまいます。
浹は首になります。そして浹のいた近江土木も切られて
しまいます。

國生環の兄の肇は甘やかされて育ち食欲を制御できずに
異常な肥満になり、自分で動くことができなくなり
ベットで過ごしています。
浹は國生環にクライミングのテストをされ兄の肇の元へ
連れて行かれ近江土木を救うためにある仕事をするよう
押し付けられます。
仕事は皇居の中で育てられている三代将軍と名づけられた
盆栽を盗んでくることでした。
報酬は一億円と提示されました。

斑鳩の父は瀬尾貴弘という医者です。
母の愛子は貴弘のDVから逃げています。
貴弘は精神に異常をきたしています。
貴弘が雇った探偵社の小出が貴弘の言動に危険を感じて
岩代に注意するほどです。
岩代は貴弘に会いに行きました。
火炎瓶を作っていた貴弘が起こした火事に巻き込まれ
やけどを負って意識不明です。
貴弘はこの時に死亡しました。

葉月は失意のうちに日本へ帰ってきています。
ドービングに手を出しスポンサーから賠償金を
三千万円請求されています。
葉月は浹の受けた仕事を自分にさせてくれるよう肇に
交渉して受けることになりました。

環は本当は盆栽を盗み出させたくはありません。
兄が盆栽をめちゃくちゃにしたいと思っているのを
阻止したいと思っています。
環は葉月より先に盆栽を盗み出すよう浹に依頼します。

浹は斑鳩の母の愛子を探し出そうと思います。
斑鳩を背負い皇居の中へ忍び込みます。
盆栽を盗み斑鳩を変わりに置いてきます。
新聞に斑鳩が載れば愛子が名乗り出るだろうとの
考えからです。

面白い話なんですが読み終わって欲求不満になりました。
こんな中途半端な状態では満足感がありません。
なんなんだーという不満でいっぱいになりました。
人それぞれですからこれでよかったよかったと満足
出来る人もいるでしょうが、私はまわりの人達が
その後どうなったのかとしっかり決着つけて欲し
かったと思います。

話の核心の皇居への侵入が大部分を占めるのかと
思いきやあっさりと入ってしまいます。
セキュリティーそんなにゆるいの。

闇色のソプラノ

2012-11-23 19:23:42 | 

北森鴻著"闇色のソプラノ"を読みました。
ねたばれあります。

遠誉野市の大学生の桂城真夜子は卒論のテーマに夭折
した童謡詩作家の樹来たか子の研究を選びました。
たか子は世間にほとんど知られていない人です。
真夜子は付き合っている男性が持っていた同人誌で
たか子を知りました。

たか子は幼い息子の静弥と山口に住んでいました。
夫の重二郎とは別居していました。
重二郎は別の場所で女性と暮らし子供もいます。
夫が離婚と静弥の親権を要求し、たか子に会いに来ると
いう夜にたか子はナイフで突いて自殺しました。
重二郎はその後行方不明です。

真夜子は図書館で郷土史研究家の殿村三味と知り合います。
二人がたか子について話しているのを聞いていた弓沢征吾
とも知り合います。
彼らもたか子に興味を持ち調査に加わります。
弓沢は病気でもう長くは生きられません。

たか子の息子の静弥は遠誉野市に住んで美術教師をしています。
偶然に真夜子は静弥のことを知ります。
静弥は腫瘍摘出の手術を受けてその後の栄養補給で
ビタミンBの摂取不足からウェルニッケ脳症になりました。
昔のことは記憶にありますが最近のことは記憶できなく
なっています。

静弥の主治医は櫟心太郎です。
櫟は静弥とつながりがあります。
たか子が亡くなった時に山口にいてたか子が重二郎に殺された
のだと推理してみせた人物です。
親類の者はそれを信じましたが表向きは自殺ということに
しました。
同じ病院の医師の美崎早音は静弥の恋人です。

危篤状態の弓沢が病院を抜け出して殺されているのが
見つかります。
刑事の州内一馬が捜査にあたります。
州内はたか子の同人誌を持っていた真夜子の男友達です。

静弥の友達が轢き逃げされました。
彼はラジオ番組に雨の日に山にドライブに行った時のことを
投書していました。
もう一人女性が行方不明となっています。

たか子が書いた詩の中にしゃぼろんとい擬音が書かれています。
この音がなんなのか真夜子や弓沢は気にしていました。

やがて犯人は姿を現しました。
櫟と美崎の二人が命を落としました。
現代に起きた事件は解決しました。

遠村は山口に行ったままずっと帰ってきません。
真夜子は山口に出かけていきます。
たか子が住んでいた家は壊されています。
庭があった所に水琴窟があったといいます。
庭に集まった人々は水琴窟のあった場所を掘ります。
出てきたのは白骨です。

たか子が殺した重二郎です。
たか子はやはり自殺だったのです。
州内が「お父さん」と呼びかけます。

この場面で終わっています。
えっ、州内が静弥なの、そんなはずはない、静弥は本物の
静弥のはず、州内はいったい誰?と頭が混乱しました。
静弥の兄弟?兄弟がいたとは書かれていなかったはずです。
しばらくして、あっそうだ重二郎にはもう一人子供が
いたんだった、州内はその子なんだとやっと気づきました。

州内が同人誌を持っていたわけもわかりました。
5人もの人が死んでいます。
真夜子が卒論に樹来たか子を選ばなければ事件は起き
ませんでした。
とはいっても真夜子が悪いわけではありません。
記憶違いや間違った愛情が引き起こした事件です。
州内と真夜子は結婚するつもりでいますが州内が
隠していた秘密はどう影響するのでしょうね。
過去の事件が現代に影響を及ぼした事件でおもしろ
かったです。

北森さんの本は好きです。
この本は名古屋市内の全図書館で1冊しかなくそれも
書庫に保存されています。
読まれてないんですね。

横溝正史探偵小説コレクション 赤い水泳着

2012-11-22 19:36:01 | 

横溝正史著"横溝正史探偵小説コレクション 赤い水泳着"を
読みました。
また横溝正史の短編集です。
14もの短編ですから1篇がほんの数ページというものも
あります。
それほど興味深いというわけではありませんが最後まで
一気に読んでしまいました。

題名の"赤い水泳着"はアガサ・クリスティーの作品を
彷彿とさせます。
海辺へ避暑にきていた夫婦を宿のベランダから見ていた
女性がいます。
夫婦は別の女性と出合って言葉を交わします。
夫婦は水着になって海岸へ行き戻ってきました。
隣の部屋に干された水着から赤い水滴が落ちました。
一旦戻ってから妻の方は一人で出かけました。
翌日になって夫が妻が出かけたまま戻っていないと
騒ぎだします。
妻は崖から落ちて亡くなっているのが見つかります。
見ていた女性は水滴が落ちた跡を調べにいきます。
夫と目が合って対決します。
水着で戻ってきてその後出かけていったのは妻では
なく別の女性だろうと問いただします。

横溝正史の小説、ちょっと前の時代の雰囲気をただよわ
せておもしろいです。

オリーブ

2012-11-21 20:16:40 | 

吉永南央著"オリーブ"を読みました。
短編集です。

"オリーブ"
早坂慎一の妻は響子です。
響子は笑わない女です。
でも慎一はそれが気に入っています。
仕事中に昼食に出て響子が喪服で歩いているのを見かけて
不信に思って後をつけていきます。
斉藤響子という人の葬儀です。斉藤は妻の旧姓です。
妻は翌日何もいわずに家を出て行きました。
響子は毎月渡されていたお金を切り詰め4年間で2千万円
も貯金して持ち出していることがわかります。
慎一の父親は西大野総合病院を経営しています。
医療ミスをいくつか起こしていますが反省しません。
調べが進むと響子の恋人が医療ミスで亡くなっており
亡くなった斉藤響子も医療ミスでずっと植物状態でした。

"カナカナの庭で"
井塚は病気でもう長くありません。
病院から一日早く一時帰宅が許されたので妻の純代を
びっくりさせようとタクシーで家に帰ってきました。
玄関では見知らぬ老人が作業しています。
家に入ると純代と寺島があわてて出てきます。
井塚は純代が好きだった寺島を騙すようにして純代と
結婚しました。
寺島はいまだに独身です。
翌日純代が出かけ友人の強矢がやってきます。
家の二階には荷物がいっぱいつめこまれています。
強矢に家の登記を調べてもらうと人のものになって
います。
純代が売ってしまい代金を寺島に渡したのだと思われます。
すでに他人が住んでいる家を臨時に貸してもらって
一時帰宅時に取り繕っているのだとわかります。
井塚はこれでいいのだといいます。
死んだら知っていたと二人に伝えて欲しいと強矢に
頼みます。

"指"
玲江は銅版画の製作と絵画教室をやっています。
目が見えなかったことがあり目をつむって粘土で造形を
する趣味があります。
妻のある画家の一俊と付き合っています。
ある美術館が玲江の塑像を展示したいから作品を
提供して欲しいと一俊から連絡があります。
玲江は一俊が玲江の作品を自分の作品として発表して
売っていることを知ります。
玲江の作品をだまってごっそりもっていってしまいます。
玲江は真実を知ってもらい一俊をやりこめるための
策をめぐらします。

"不在"
理都は高崎の輸入小物を扱う会社で店長をしています。
副社長の有坂英治と婚約しています。
理都の妹のユカリは統合失調症です。
東京で一人暮らしをしています。
調子がいい時は経理のパートをしています。
様子がおかしいと母親から連絡が入ります。
父母は娘のことなのにユカリにかかわろうとしません。
理都は婚約者に打ち明けていません。
店では理都が店長になったことで嫌がらせが続いています。
理都は翌日軽井沢の英治のマンションを訪れる予定でした。
ユカリはアパートにいません。
隣のガラス職人の富樫はユカリの状態を知っていて
友人が同じ病気であることから普通に接してくれます。
英治のマンションの入り口でユカリが目撃されタクシーで
東京へ向かったとわかります。
ユカリは華道をしている枡岡の家に保護されていました。
夜中にやってきており軽井沢で見られたのは偽者で誰かが
理都を陥れるためやっているとわかります。
理都と英治は一旦婚約破棄をしますが英治は家族を説得
するといいます。

"欠けた月の夜に"
安野久美子は専業主婦です。
サッカー部から新聞部に変わった息子の真歩がいます。
月に一度ゴルフを楽しむ友人が三人います。
夫の俊之が心筋梗塞で突然死してしまいます。
久美子は夫の帰りがいつも遅かったことから会社に
過労死したのを認めるよう交渉にいきます。
しかし会社には相手にされません。
自分の親や兄弟も消極的です。
裁判も辞さないという久美子にやめておいたらと
いいます。
友人たちも消極的です。
ある日変な手紙が投げ込まれます。
その手紙に沿って真歩にひきづられるように調べに
いきます。
そして真実がわかります。
真歩も友人三人も真実を知っていました。
自分の目で見ないことには人の話を聞こうともしない
久美子にみんなは困っていました。

全編ちょっと辛い、ほろ苦い話でした。

"オリーブ"の妻はいったいどういうつもりだったのでしょう。
4年もかけてお金を掠め取ったと満足でしょうか。
でも自分の才覚で節約して貯めたお金ですから盗んだとは
いえませんね。
本当に恨んでいる人はぜんぜん何とも思ってないんだから
復讐にはなっていません。
夫の時間も自分の時間も無駄にしてしまったように
思います。

"欠けた月の夜に"の夫婦もなんとかならなかった
ものでしょうか。
奥さんが夫に別の道に進んだらと、言って上げることが
できていたら夫はどんなに心に余裕ができたことでしょう。
たとえそのまま会社勤めとしたとしてもずいぶん違った
と思います。

"指"の一俊の心理、まったくわかりません。
ずっと隠し通せると思っているわけではないのに人の
ものを盗んでおいて平気なところが理解できません。

"紅雲町ものがたり"のシリーズの吉永さんの雰囲気
とはちょっと違います。

ちりかんすずらん

2012-11-20 19:51:18 | 

安達千夏著"ちりかんすずらん"を読みました。
家族の物語です。
家族の話は暗いものが結構あるので手に取るのにちゅうちょ
しますがこの本はさばさばとしています。
私と祖母と母との三人で暮らしています。
父は板前でしたがコロンビアの女性を好きになり母と離婚
して彼女と結婚し、コロンビアへ渡り義理の娘4人と自分達の
娘1人とスシバーを経営して暮らしています。
母親はフットマッサージ店を経営して順調です。
祖母は父の母で母にとって姑です。
祖母も母もさっぱりとした性格で三人は仲良く暮らしています。
私は児童館の臨時職員として働いています。
正社員にといわれていますが決心できません。
ユウジというIT関連のベンチャー企業を経営している
恋人がいます。
すずちゃんというお母さんの腹違いの妹が食べ物を
おみやげによく訪れます。
すずちゃんは代議士と不倫をしています。

代議士が女性に刺されたニュースが流れます。
一時行方がわからず家族はすずちゃんが刺したのではと
心配します。
別人が逮捕されほっとします。

祖母は友達とよく遊びに出かけます。
友達の一人に宗助がいます。
祖母の携帯に「夫は迷惑しています」というようなメールが
届くようになりました。
宗助は奥さんを亡くし孫娘と二人で暮らしています。
私と祖母はいろいろ考え孫が出しているのではという
ところに行き着きます。

ユウジは仕事が忙しく一、二時間さえ自由時間が取れない
ほど働いています。
ユウジと私は結婚することになります。

母が銀行員や不動産屋さんと相談しており祖母は母が
家を出て行くつもりなのかと心配しています。
母は外国へ視察旅行に行っています。
祖母と私はあちこちに行って聞いて回ります。
母からの電話で問い詰めたところ家が古く段差があり
祖母が暮らしやすくなるようリフォームをしようと計画
しているとの返事です。

父とも電話でよく話します。
結婚式には赤い薔薇が100本送られてきました。

いごこちのよさそうな家族です。
家にいるのが楽しいだろうなと感じさせる家族です。
みんな自立していて理想的な家族です。
ユウジはいい人みたいですけどほとんどの時間を仕事に
費やす人と結婚する意味はあるのかと頭の片隅に
疑問が湧きます。

時々この文章の意味するところはなに?みたいに
つっかえてしまうところはあります。
これは私の方の読解力の問題なのでしょう。
宗助さんの問題みたいに中途半端に取り残されて
いる話題もあります。
読み心地はいいです。

日本橋人情横丁 酒田さ行ぐさげ

2012-11-19 20:45:20 | 

宇江佐真理著"日本橋人情横丁 酒田さ行ぐさげ"を
読みました。
短編集です。

"浜松河岸夕景"
おすぎの家は天蓋屋です。
父母は人の不幸を喜ぶような人です。
おすぎは手習い所へ行かせてもらえません。
近所の煮売り屋へ行って年下の風太と遊んでいます。
大人になって店を手伝うようになりました。
若者となった風太が母の死を知らせにやってきます。
おすぎと風太は夫婦になり天蓋屋をやっています。
娘を三人を持ち幸せだと思っています。

"桜になびく"
戸田勝次郎は妻のりよとお腹の子をお産で亡くしました。
町奉行所同心として働いています。
奉行所の金銭を一人で扱っている森川がお金を流用して
いるらしいから調べるよう言い付かります。
りよの妹のとせとの再婚話が持ち上がります。

"隣りの聖人"
一文字屋は番頭に集金の大金を持ち逃げされて潰れました。
長屋に一家4人で引っ越してきました。
隣の家には儒教者の相馬福太郎一家が住んでいます。
主家が潰れてしまい長屋住まいをしてあちこちのお屋敷に
講義に行って暮らしています。
同業の中田屋が番頭の持ち逃げを取り下げるようにと
言ってきます。
そうすれば一文字屋の出店として立ち行くようにして
やるといいます。
隣の家の相馬はその話はあやしいと言います。

"花屋の柳"
滝蔵とおこのの夫婦は花やをやっています。
娘のおけい、息子の幸太がいます。
滝蔵とおこのには秘密があります。
ある日染井の植勘から使いがきました。
おこのは植勘の一人娘で小さな娘がいる滝蔵と駆け
落ちしたのでした。
おこのの父が病気で弱っているので見舞いに来て欲しい
という使いでした。
滝蔵は許しません。
もし見舞いにいくのなら二度と帰れないと覚悟して
行かなくてはいけません。
おこのは息子の幸太を連れて実家に帰ります。
幸太の機転で物事はいい方向に向かいました。

"松葉緑"
美音は貧乏な武士の娘でした。
商家の女将に見込まれて手伝いにいくようになりました。
その店の息子と結婚して商家の嫁となりました。
年取って息子に店をまかせてひとりで隠居暮らしを
しています。
女性がしっかりと生きていけるよう教えたいと思い
近所の娘たちに心構えを説いています。
美音の弟子の一人の貧乏な家の娘が弟の仕官のために
年老いた男との結婚を強いられていることを知ります。
美音は心を痛めますがなんとも出来ません。
美音の息子がやってきて思わぬ解決方法を提案します。

"酒井さ行ぐさげ"
干鰯問屋の江戸の店の栄助は一番番頭です。
権助は奉公に上がった時の朋輩です。
大阪にいっしょに修行にいきました。
栄助はぐずで鈍間の権助の面倒をみるのが嫌で心の中で
離れて仕事をしたいと思っていました。
権助は酒田の支店に行き離れて仕事をしてきました。
年月が経ち権助は酒田の支店を買い取って店主となって
訪ねてきました。
若い女房を連れお金を使いまくって豪勢に過ごしています。
栄助はそんな権助と自分を比べてため息をついています。
権助は栄助のことを友達だと思っていました。
影で権助をうとましく思っていることを聞いて酒田へ
行ったのです。

ほっとする話が多いです。
最後の話はちょっとつらい話です。

裏閻魔3

2012-11-18 21:18:00 | 

中村ふみ著"裏閻魔3"をよみました。
"裏閻魔"、"裏閻魔2"の完結編です。
このシリーズ好きです。
またまたねたばれで書いてしまいますので読む予定の
方はご注意を。

不老不死となった室生閻魔が主人公です。
二十歳ぐらいの時に鬼込めされて若い姿のまま江戸
末期から昭和の戦後を生きてきました。
この本では昭和32年から41年が描かれています。
日坂奈津は閻魔が鬼込めされたころに知り合いました。
当時は奈津の方が年下でしたが奈津はどんどん年を
取っていきます。
彼女は非常に苦労をして当時ほとんどいない女医と
なりました。
閻魔の兄弟子にあたるのが室生夜叉です。
奈津は閻魔をずっと愛しています。
閻魔も奈津を愛しています。
しかし奈津は姿を消してしまいました。
なぜなんだろうと思っていました。
老いるのはしょうがないこと、好きな人の近くで暮らし
たらよさそうなものをと思っていました。
この巻で奈津がいなくなった理由がわかりました。

夜叉は遠い親戚の皆藤浩一郎に追われています。
公一郎はまだ十台です。
尊敬していた祖母が老いてそれまでのかくしゃくとした
姿とは離れていくのを見ていて、老いたくないと不老
不死の秘密を知りたいと必死で夜叉と閻魔を追います。
豊田製薬の研究所を自分の研究のために建てさせます。
彼の行動は狂気じみています。
閻魔は一度捕らえられここへ連れ込まれます。
手錠につながれた手をビンのかけらで切って逃れます。

死なないといわれていますが夜叉は弱っています。
もう死は間近だとさとっています。
彼は閻魔と出合って生き方を変えました。
人を殺すことを止めました。
浩一郎の手は伸びています。

閻魔を助けてくれているのは牟田信正、信正の死後は
養女の恵子が手を差し伸べてくれます。
大河内は恵子の秘書をしています。
とても堅物で主従の関係を崩しません。
が、やっと大河内と恵子は結婚します。

奈津の居所を知らされていていつか閻魔に知らせて
やってくれと頼まれていた夜叉は閻魔に知らせます。
まだアメリカの統治下にある沖縄にいました。
密航して沖縄に行きますがすでにその場所を離れています。

奈津が閻魔をさけているのは夜叉に鬼込めをされたからです。
無理やりではなく奈津も承知しています。
不老不死を込めたのではなく顔を若く保つようにです。
彼女の顔はどんどん若くなっていってしまいます。
二十歳のころまで若返って止まりました。
体は年相応に老いていきます。
この姿を見られたくなかったのです。

医師としての仕事をやめ近所の主婦の手助けで生きています。
老いて動けないのではなく病弱なのだと思われています。
閻魔と知り合いのロブがタットーを仕事として沖縄に
来ています。
閻魔が奈津を探しているのを知っています。
彼は二十歳の顔をした奈津に出会います。
本人とは思いませんでしたが不思議な出来事として閻魔に
書き送ります。
閻魔は沖縄にやってきます。
長く思い続けた二人はやっと会うことができました。
閻魔は奈津を東京に連れて帰ります。
短い間共に暮らし奈津は亡くなります。

このころ夜叉は浩一郎に捕まり研究所へ連れ込まれます。
奈津に夜叉を助けてやってと言われて閻魔は研究所へ
乗り込みます。
夜叉は弱っていて動けません。
残酷な浩一郎は夜叉の足を切ってしまいます。
たかをくくっていた浩一郎ですが閻魔に追い詰められます。
研究所は浩一郎が持ち出した爆薬で爆破し火災で燃えて
しまいました。
閻魔は夜叉を背負って不死の猫と共に逃げました。

閻魔は恵子の援助はもう受けないようにしようと姿を
消しました。
恵子の孫が渋谷で写真で知っている閻魔を見かけたと
告げます。

閻魔と奈津との関係、閻魔と夜叉との決着、いったい
どう収まるのかと期待していました。
こうきたかと満足の決着です。
うまいところに落ち着きました。
閻魔と夜叉は決闘でもするのかと思いましたがまったく
外れました。
でもこの決着の方がはるかにいいです。
二人は不老不死を捨てて死んでしまうのだろうと思って
いましたがまだ見守る人がいるようで生き続けます。
この結末も予想を外れましたがこちらの方がいいです。
裏閻魔のシリーズよかったです。
ゴールデン・エレファント賞受賞のエンターティメント
作品でした。

ナイン 9つの奇跡

2012-11-17 20:41:45 | 

川上健一著"ナイン 9つの奇跡"を読みました。
草野球チームの9人を中心に描いた物語です。
野球はよくわかりませんが読み終わってあぁ楽しかったと
心がのびのびする本です。
チーム名はジンルイズです。
チームメイトはインターネットでチームメイトの
募集を見て集まった人達です。
勝つのが目的ではありません。
楽しむための野球です。
エラーをしてもみんなで笑い転げます。
大リーグなみの華麗なファインプレーも出ます。
チームメイトは9人しかいません。
毎日曜日に神宮外苑で試合をします。

吉見高志 26歳 ラーメンチェーン店の社員では
ないけど店長です。

山本節雄 60歳 は大きな不動産会社の社長です。
アナウンサー兼解説者兼カメラマンです。
試合をしながらも長島や小西などいろんな人のまねで
解説をします。
この解説がチームメイトや相手チームも楽しませています。
山本の会社は外国資本に乗っ取られそうな危機です。

鈴木誠 31歳 記録部長兼週間ベースボール人類主筆です。
記録を取ることが好きです。
試合中もスコアブックを話しません。
恋人はいませんでしたが弁当を買うコンビニの店員と
スコアのつけ方の話をするようになりました。

堀田徳兵衛 81歳 特攻隊で野球仲間の友人二人を
亡くしています。
妻は病気の後遺症であまり動けませんがとても仲が
いい夫婦です。
二人の友人のためにも彼らのグローブを交代で使って
野球をしています。
撃てませんし球を取れませんし走れません。

ジーン・スミス 42歳 子供のころは日本で野球を
やっていました。ところが数年前に気がついたら
子供のころの記憶がすっぽりと消えていました。
記憶を取り戻したいと野球をやっています。

榊原英喜 20歳 中学2年までは野球チームに入って
野球をやっていました。
大リーグのような目立つプレーがしたくてやっている
のですが監督には嫌われとうとう辞めさせられて
しまいました。
このチームでは思う存分目立つプレーをしています。

宮脇志保 24歳 女性ピッチャーです。
子供のころは野球選手になることを夢見て男子に混じって
野球をやってきました。
しかし高校生となって女性は参加できないことを知って
打ちひしがれました。
現在妻子ある男と不倫中です。

佐藤博行 43歳 社会人野球をやっていましたが会社の
不振で野球部がなくなりその時普通の社員になりました。
人を纏める才能がある人です。
ジンルイズの監督です。

桂木義雄 49歳 元プロ野球の有名選手です。
クビになりました。コーチとして迎えるといわれて
いますが現役でプロ野球選手として野球をやることを
あきらめていません。

吉見はホームレスの遠藤が高熱を出して震えているときに
ラーメンをご馳走し風邪薬を飲ませました。
遠藤はお礼にラーメンの味付けを教えてくれるように
なりました。
ある日遠藤は占いをする老人のところへ吉見を連れて
いきました。
今なら二つの夢が叶うといいます。願えといわれて
吉見はジンルイズがりっぱな草野球チームになることを
願います。
もう一つは遠藤が全日本野球選手権大会で優勝することと
願いました。

全日本野球選手権大会なんて大会があるかどうか吉見は
しりません。しかし事務局から申し込みを受け付け
ましたという手紙がきました。
遠藤が申し込んでくれたようです。
ジンルイズは大会に出場することにしました。
願いをかけてからみんなは野球がやりたくてやりたくて
しょうがありません。
野球がやれることがうれしくてたまりません。
勝とうと思ってやっているわけではないのにどんどん
勝ってしまいます。
吉見は自分たちの力ではなく魔法がかかって勝って
いるのではないかと心配しています。

優勝はしません。
4回戦で鈴木が好きな店員が故郷へ今日帰ると手紙を
置いていきました。
電車がでる時間が気になってとうとう泣き出してしまいます。
ジンルイズは試合を放棄して鈴木を駅に向かわせました。

榊原は大リーグの入団テストを受けました。
たぶん大リーグへいけそうです。
監督の佐藤の大学時代の友人が今度プロ野球の監督に
なります。
佐藤はそのチームのコーチにならないか誘われています。
妻は1年先はどうなるかわからない不安定な仕事に
反対です。
しかし佐藤はたぶん引き受けるでしょう。
佐藤はすでにコーチを引き受けた気分で桂木を未来の
球団に誘います。
ジーンは子ども時代の記憶を取り戻します。
忘れてしまいたいことがあって過去の記憶にふたが
されたのです。

それぞれの人達に起こる出来事もおもしろいのですが
なによりおもしろいのは野球の試合中を書いた部分です。
とてもいきいきしていて情景がうかびます。
野球に興味がなくても楽しそうな雰囲気に呑みこまれます。
この本の一番の良さはやはりここでしょうね。

夏雷

2012-11-16 19:50:50 | 

大倉崇裕著"夏雷"を読みました。
ミステリーなんですが読み終わってすっきり感がありません。
最近はこういうミステリー結構ありますね。

倉持は月島で便利屋をしています。
以前は探偵でした。トラブルがあって探偵社は辞めました。
学生時代にリーダとして行った登山で仲間の一人が足を
痛め障害が残りました。
それをずっとひきずっています。
父親は介護がないと生きていけない状態ですが親子の仲は
よくありません。
山田という50代後半の男性から槍ヶ岳に登れるように
指導して欲しいとの依頼がありました。
目的は言いません。
山田は毎日熱心にトレーニングに通ってきます。
決して音を上げることがありません。
6月から始めて8月が目的の槍ヶ岳登山です。
山田が地図を読みメモを取って登っていくのを後ろから
サポートして注意を与える形の日帰り登山、一泊登山を
繰り返します。
槍ヶ岳登山本番を間近にして山田は行方不明になります。
そして高山で登山の服装で車に轢かれた状態で見つかります。
轢き逃げと警察では思っています。
"生還"に登場した 山岳捜査官の原田が訪ねてきます。
原田、釜谷は轢き逃げに疑問を持っています。

倉持は山田の死の真相を探っていきます。
二人のトレーニングの様子を興味を持って見ていた街の
人々に聞いてまわります。
昔の探偵仲間に手伝いを頼みます。
探偵を辞める原因となったトラブル相手の河東のところ
へも行きます。
彼らのトレーニングを窺っていた女性を見つけ出します。
彼女から山田がどういう人物なのか知ります。
山田夫婦の娘は家を飛び出し一人暮らししていましたが
行方不明となりました。
夫婦は一生懸命さがしましましたが見つかりません。
妻は自殺してしまいます。
娘の持ち物の中にも山田の持ち物の中にも宮田という
翻訳家の訳した本があります。

ねたばれです。
何があったのかはだいたい想像がつくと思います。
山田の娘は付き合っていた男の宮田に槍ヶ岳に誘い出され
殺されます。
山田はそれを知り見つかっていない娘の遺体を一人で
捜し出そうとしていたのです。
山田が遺体を見つけ出すのを恐れた宮田が山田を殺したのです。
意外な人物が一枚噛んで居ます。
それもなんとなくこの人変という感じで出てきますから
あまり驚くはありません。

倉持の父親は約束通り山田が手配しておいてくれた施設へ
入ることが出来ました。
犯行に関係した一人は死亡し二人は国外へ逃亡しました。
公式には事件になってない犯罪です。
倉持は一応仕事はしていますが人生を諦めているような
退廃的な雰囲気を醸し出しています。
裏切りをなんとも思わない人間関係も暗いです。
倉持の父親の倉持への態度も理解できません。
自分で動くことが出来ないのにたった一人責任を持たな
ければならない立場になってしまった息子に対する態度が
悪すぎです。
誰かが何とかしてくれるだろうという受身の態度は甘えるのも
いい加減にしたらといいたくなります。
山の場面はあまりありません。
原田が活躍するのかと思いましたがわかったことを
倉持に伝えるといっただけにしか出てきません。
なんかもやもやしたものが残る本でした。