雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

赤朽葉家の伝説

2011-12-12 22:26:17 | 
桜庭 一樹
東京創元社
発売日:2006-12-28

桜庭一樹著"赤朽葉家の伝説"を読みました。
千里眼の祖母を持つ三代の人々の話というのでおどろ
おどろしい話かと思いましたが全然違いました。
戦後からの昭和、平成の歴史を知るのにとてもいい
本だと思います。
どんな催しがあったのか、日本の経済、人々の心の
状態、その時々の若者は何をしていたかを知ることが
できます。
生活の仕方、どんな家に住んでいたかも描かれています。
ちょうど自分が通り過ぎてきた日々なのにこういうことを
人に語ってきかせることができません。
ほんとに何も見ていなかった自分に驚きます。

万葉は辺境の人に置き去りにされた子です。
辺境の人というのは山奥のどこだかわからない所に住み
里の人が手助けが欲しい時に下りてきて手伝ってくれる
人たちです。
万葉は若い夫婦に引き取られ育ちます。いい夫婦です。
万葉は学校へ行きますが字を読み書きすることができません。
たぶん識字障害なのでしょう。
その地域の人々は赤朽葉の製鉄所で働いて暮しています。
万葉は二十歳の時に赤朽葉の奥様のタツに見込まれ息子の
曜司と結婚します。
万葉は未来の様子が見えることがあります。
最初は片目の人が空を飛んでいる場面を見ました。
舅や夫が死ぬ場面を見ました。
子供を4人生みます。最初の子を産むときその子の
一生が5時間の陣痛の間に見えてしまいました。
泪という男の子は男しか愛せない人で大学生の時崖から
落ちて死ぬのが見えます。
次は女で毛鞠、女で鞄、男で孤独と生みます。
毛鞠は活発な子です。中学から女番町として名を
馳せます。高校はオートバイで書け廻ります。
近所の県まででかけて喧嘩をしては配下にして
きます。
この間製鉄所は昔ながらの仕事のやり方から
どんどん機械化が進んでいきます。

舅、泪、姑のリツと亡くなります。
毛鞠は18歳でそれまでの生活から足を洗って漫画家と
なります。
売れっ子の漫画家となり死ぬまで家から出ることなく
漫画を描き続けることとなります。
その間に美夫と結婚し瞳子を産みます。
毛鞠は32歳で過労で亡くなります。
万葉の夫も亡くなっています。
孤独は登校拒否でずっと家にいます。
そのほかに居候が二人います。

万葉が亡くなります。
いまわの際に孫の瞳子に人を殺したと告げます。
最期の章は瞳子が祖母が誰を殺したのか調べる話です。
ここへきてミステリーじみてきます。
でももちろん本当に殺したというわけではありません。

旧家へ嫁いでしっかり家をまもった女性です。
姑のリツと仲良く頼りあって生きてきました。
時代の流れで変って行く仕事のやり方や生活の営みが
描かれ、なかなかに読み応えがありました。