柚月裕子著"あしたの君へ"を読みました。
家庭裁判所調査官は試験に合格後二年間の研修があります。
前期の三か月の研修後、一年間の実務研修を受けます。
研修中の家庭裁判所調査官補はカンポちゃんと呼ばれています。
望月大地は九州の大森家裁で実習中です。
"背負う者(十七歳 友里)"
友里はラブホテルへ誘った男の財布から10万円を盗んで
逃げました。
面接で友里はなにもしゃべりません。
母と妹と三人で暮らしています。
高校へはいかず、バイトをしています。
大地は家の様子を見に行って驚くべき生活にびっくりしました。
彼女は少年院送致となりました。
少年院で過ごすことの方が彼女の癒しになる、そんなことも
あるのですね。
"抱かれる者 (十六歳 潤)"
潤は付き合っていた女性に別れを告げられました。
ストーカーとなり、カッターをちらつかせたところを逮捕され
ました。
母親は潤に優秀であることを強く求めました。
大地は潤の学校での様子を調べました。
母親が言っている潤と実際の潤とは違いがあることがわかります。
母と息子、共に問題があります。
"縋る者 (二十三歳 理沙)"
正月休みに大地は故郷へ帰りました。
自分は家庭裁判所調査官の仕事に向いてないのではないかと
悩んでいます。
学生時代の仲間が集まりました。
好意を持っていた理沙は若くして結婚し子供がいます。
彼女と二人で帰る道で大地は悩みを語ります。
理沙は現在の状況を知らせ家庭裁判所調査官に勇気づけらた
ことを語ります。
"責める者 (三十五歳 可南子)"
朝井駿一と可南子の夫婦の離婚調停です。
可南子はどうしても離婚したいと望んでいますが、駿一は
承知しません。
彼女は精神科医に罹っており夫の精神的抑圧に苦しんでいます。
しかし調停委員には夫のどこに問題があるのか見えません。
妻のわがままとしか見えません。
大地は外に調べに出ます。
精神科医にも話を聞きます。
調停の場では現れてこない残酷な真実を知ります。
"迷う者 (十歳 悠真)"
片岡伸夫と朋美の夫婦は10歳の息子の親権を争っています。
どちらも譲りません。
伸夫は両親と暮らしており、両親も孫を大事にしています。
子供は母親と暮らすのが幸せという朋美です。
大地は別居している朋美の住居を訪ね意外なことを知ります。
家庭裁判所調査官という仕事があるのですね。
人の人生に大きく関わる責任の重い仕事です。
それにしても家事事件はともかく、少年事件は警察の調査の
のち裁判所に廻ってくるものなのに警察では事件の背景は
調べないものなんでしょうか。
家庭裁判所調査官が調べる仕事なんでしょうか。
最後の話はひどい話しです。
誰とは言いませんが人間としてどうかと思えてきます。
こういう生き方してもおかしくないのでしょうか。
利口な子供の悠真が幸せに暮らせるといいなと思います。