雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

猫と庄造と二人の女

2011-09-19 19:26:39 | 

谷崎潤一郎著"猫と庄造と二人の女"を読みました。
ずいぶん古めかしい話だと思ったら初出版が昭和26年
です。60年前に書かれた話です。

おかしいのかほろ苦いのかわからない、なんとも
言えない感覚の本です。
皆の愛情を一身に集めているのは猫のリリーです。
庄造が貰ってきた猫でもう15歳は過ぎています。
自分が食べているものを分け与え、顔をなめさせ
いっしょに寝るなど愛情を注ぎ込んでいます。
庄造は生活力がなく仕事もせず遊んで暮らすだめな
男です。
奥さんの品子が裁縫で暮らしをささえていました。
同居の母親と企んで品子を追い出してしまいます。
親戚の娘で品行の悪い福子を持参金目当てに
後添いにします。

福子のところへ品子から猫のリリーを譲ってくれるよう
手紙が届きます。
じょうずな手紙にのせられてリリーは品子の元へ届けられます。
最初のうちは品子にまったく懐かなかったリリーですが一度
家出をして戻ってきてからは品子にべったり甘えかかります。
品子は庄造と暮らしていた時はリリーに愛情を抱かなかった
のですが、別れてからきたリリーに庄造と負けないほどの
愛情を注ぐようになります。

寝ても覚めてもリリーを思う庄造は品子の留守を狙って
リリーに会いに行きます。
リリーの方は会っても知らん顔で喜びもしない態度
なのがおかしいです。

リリーに翻弄されている庄造、品子です。
重苦しさが漂う本です。
人間同士は愛情をいだきあってないのに猫に対して
切々と愛情をあふれさせているのですから悲しくも
こっけいです。

昔の話ですから今とは猫を飼う状況はかなり違います。
今の猫飼いの人たちが聞けば目をむいてしまうことが
あたり前に書かれています。
リリーは何度も何度もお産をします。その子供はもらわれて
いくのもありますが海岸や松の根元に捨てられます。
庄造は産まないようにしてやれないかと獣医に相談して
いますが雌はなんともしようがないと言われています。
今とお医者さんの技術や考え方も違っていたのですね。
食べ物も人間と同じものを食べています。
トイレの砂を海岸から持ってくるとか工事場や公園から
持ってくるなどとんでもないなぁと思ってしまいます。
でも庄造や品子が常識はずれというわけではなく昔の
猫はこんな扱いだったのです。
リリーはうんと大事にされた猫です。普通の猫は
どんなだったかは想像がつくでしょう。9/6

1 コメント

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はじめまして (浅野浩二)
2016-04-18 08:29:02
「猫と庄造と二人の女」、とてもいい作品だと思います。手塚治虫が、ブラックジャック8巻の、第70話で、「猫と庄三と」というタイトルの、作品を描いています。手塚治虫も、気に入ったのだと思います。

ちなみに、私も小説を書いてアップしています。よろしかったら、ご覧ください。
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