あさのあつこ著"待っている 橘屋草紙"を読みました。
おふくが一応の主人公です。
長屋に住み下駄職人の父と母と妹と暮らしいていました。
父親が病気になり料理茶屋橘屋に12歳で奉公に行きました。
仲居頭のお多代は30歳近くで厳しく店を取り仕切っています。
"待っている"
おふくの家庭の状況と橘屋へ奉公に行くことになる話です。
お多代に厳しく仕込まれます。
「お多代の叱咤や注意は、いつも的を射て、納得できること
ばかりだった。飲み込み、同じ過ちを繰り返さなければ、
確実に仕事がはかどる。最も効率的で効果的な手順を
お多代は、怒声や小言に包んで伝えているようだ」
とあります。お多代は部下の能力を引き出す有能な
上司というところでしょうか。
数年後家族が長屋からおふくに何も告げずに夜逃げを
したことを知ります。
"小さな背中"
通いの女中のおみつの話です。
夫の幸吉は経師屋の職人です。
子供を亡くして幸吉は仕事に身が入りません。
隣のお香は娘のおしのを邪険にしています。
娘を置いて長屋を出て行ってしまいました。
おみつはおしのを引き取ります。
"仄明り"
お敬は小間物問屋のお嬢さんでした。
前の妻の娘ですので家の中ではつまはじきにされていました。
家を出て錺職人の林蔵と所帯を持ちました。
林蔵が病気になりお金に困ります。
昔義母に勧められた結婚相手がお敬に近づいてきます。
橘屋に連れ込まれます。
"残雪のころに"
おそのは14歳から橘屋で働いてきました。
下働きから仲居になりました。
しかしまた下働きに戻されてしまいました。
男を惹き付けるような態度を取り、運んでいる料理が
何であるのか説明ができません。
幼馴染の弐吉に出会います。
お多代に弐吉は女衒だと言われます。
ちゃんと自分で男を見極めるように注意されます。
"桜、時雨れる"
三太は8歳の時荷馬車に轢かれて足が不自由になりました。
荷馬車の持ち主の店から出た見舞金で父親は酒びたりになり
母親は家を出て行きました。
母が前に働いていた橘屋で料理人の作業に目を奪われました。
三太は橘屋に来て眺めていることを許されます。
雇われたわけではありませんがしだいに下働きを手伝う
ようになります。
"雀色時の風"
お多代は体を壊していますが内緒にして働き続けています。
おふくの幼馴染の正次が訪ねてきます。
おふくの母親を見かけたと告げにきたのです。
おふくは許しをもらって正次と母のいる店へ行きます。
古着屋で母は新しい夫と子供がいます。
妹も新しい家族に馴染んでいます。
母に会わずに帰ってきます。
"残り葉"
お多代は寝付いてしまいます。
黙って橘屋を出て行こうとしています。
お多代はおふくを自分の後を継ぐ者として仕込んできました。
おふくはお多代の仕事をこなしています。
おふくはお多代を看取るから橘屋から出て行かないよう
頼みます。
お多代が魅力あります。
人を見る目があります。
厳しくあたりますがそれぞれの将来を見越して伸ばして
やろうという心が見えます。
こういう人の下で働けることは幸せなことです。
おふくはお多代の期待に応えてお多代の精神を継ぐ
仲居に成長しました。
貧乏で苦労している人達ばかりが出てきます。
杉浦日向子さんの本では江戸の人たちはそんなに貧乏な
暮らししていたわけではないと書かれています。
いったい江戸の人達の暮らしはどんなだったのでしょう。