武吉優輔著"襲名犯" 第59回江戸川乱歩賞受賞作を
読みました。
最初の連続殺人は14年前に起きました。
犯人は最後に少年を事故死させた時に捕まりました。
7人を殺害しそれぞれ体の一部を傷つけました。
犯人の新田秀哉は詳しい事情を説明せず、14年後に死刑と
なりました。
新田には彼をかっこいいと崇拝する人々がいました。
彼はブ―ジャムと呼ばれていました。
南條仁は新田が起こした最後の殺人で亡くなった新庄信の
双子の弟です。
信は赤ん坊の時養子に出されており仁は亡くなってから
兄の存在を知りました。
信の養母が信を溺愛しており、手を廻して14歳の仁を
養子として引き取りました。
信の代わりとして同じように暮らすことを望んでいた養母
ですが別人であることをわかり、いい関係は築けませんでした。
新田の死後、ブ―ジャムとして新田の跡を継ぐように連続
殺人が起こります。
仁は叔父が館長の図書館に司書として勤めています。
中学からの友達の霜野と今も付き合いは続いています。
やはり中学の時の知り合いの三上律子は刑事になって
特殊犯罪捜査班で事件の解析を行なっています。
仁のまわりで事件が起こります。
犯人が仁のことを意識していることをうかがわせます。
信と新田との間には親密な関係があったらしいことが
わかってきます。
信は新田が殺人者だと知っていて付き合っていたのか
それとも知らずにいたのか。
殺人の場面は残酷で読むに堪えません。
不幸な子供時代を過ごした人々が多く登場します。
暴力を振るわれ小学校さえ行かせてもらえなかった者。
お金で売られるように養子に出された者。
中学生になって兄のかわりとして愛情のない人の元へ
やられた者など恵まれない人生を生きてきました。
新田よりも模倣犯として犯行を犯した者の方がもっと
精神が歪んでいるように見えます。
子供は愛情を受け、そして教育を受けることは必要な
ことなんだなぁと感じさせられます。