澤田ふじ子著"遠い椿 公事宿事件書留帳"を読みました。
シリーズになっています。
数冊読んでいます。
順番ではなく適当に借りてきました。
公事宿とは留置場と弁護士事務所がいっしょになった
ようなものみたいです。
連作短編集です。
今回の話では公事宿の仕事がらみの話はなかった
ような気がします。
"貸し腹"
重十九は絵屋を開業して成功しています。
街の人が気軽に絵を描いてもらう仕事です。
父親は旅籠の佐野屋で働いていましたが主の娘と付き合い
子供が出来ると子供を押し付けられ店を追い出されました。
父は不幸な中で亡くなりました。
佐野屋は落ちぶれました。
成功した重十九にお金をせびりにやくざ者を寄こす様に
なりました。
"小さな剣鬼"
15、6歳の高田市郎太は浪人です。
父は藩の財政危機で失業しました。
いつか再度雇ってもらえることを願って内職して
生きてきました。
市郎太は剣の腕を持っています。
押し込みをしようとしていた男たちを斬ったことが
あります。
商人が殺され市郎太は犯人と名指しされました。
"賢女の思案"
呉服問屋の笹屋の娘のお加世が嫁ぐことになりました。
自分はもらわれた子であることを知っており嫁ぐ前に
実の親が誰か知りたい、調べて欲しいと公事宿の鯉屋に
頼みに来ました。
お加世の父は亡くなりしっかり者の母伊勢は健在です。
さまざまな理由がありお加世は拾われたとして笹屋で
育てられることになりました。
"遠い椿"
金物問屋十八屋の隠居のお路は野菜を売りにやって来る
お杉という娘をひいきにしていました。
彼女が昔駆け落ちした近所の店の手代だった平蔵によく
似ていたからです。
駆け落ちの途中で見つかり二人は引き裂かれました。
お路は店を継ぎ手代だった人と結婚しました。
平蔵は見つかったときさんざん殴られ倒れていたところを
助けてくれた人の娘と結婚しました。
"黒猫"
鯉屋の用心棒の菊太郎は黒猫と出会いました。
黒猫の飼い主は孝吉という少年でした。
古着屋に奉公に行くことになっているので猫をもらって
くれないかと頼まれます。
猫はさっといなくなりました。
孝吉が奉公に行った俵屋の廻りでは猫がよく見られる
ようになりました。
黒猫です。しかし孝吉の側にやってこようとはしません。
やがて孝吉の姿が消えました。
夜な夜な俵屋で猫が鳴き叫ぶのが聞こえます。
"鯰大変"
鯉屋の丁稚の正太が薮入りで故郷の堅田へ帰りました。
漁師をしている父親が大鯰を仲間と捕まえたといいます。
やがて値段の高い鯰の膏売りが町を売り歩くように
なりました。
しかしそんなにたくさんの膏が作れるはずがありません。
偶然関わった出来事が多いです。
猫の話は哀れです。
猫がこれほどまでに飼い主を慕ってくれるかどうかは
疑問ですが、このように思ってくれていたらいいなとは
思います。