雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

凶笑面 蓮丈那智フィールドファイルⅠ

2011-10-31 20:38:46 | 

北森鴻著"凶笑面 蓮丈那智フィールドファイルⅠ"を
読みました。
北森さんは旗師・冬狐堂や香菜里屋の作者です。
蓮丈那智は男の名前だと思っていました。女性でした。
民俗学を研究する助教授です。
内藤三國は助手です。
那智はフィールドワークを大切にしています。
あちらこちらに出かけて行っては事件に遭遇します。
民族学は歴史と結びついています。
民俗学についていろいろ書かれています。
冬狐堂では骨董や美術品について詳しく、この本では
民俗学や歴史に詳しいです。
作者の幅広い知識に驚きます。
那智はとても美人で、頭が切れる人です。
連作短編集です。

"鬼封会"
故郷のある家で行われる行事を撮ったビデオを送ってきた
学生が殺されます。

"凶笑面"
骨董店主阿久津から長野の素封家の倉開きに来てくれる
よう依頼があります。
阿久津は嫌われている人物です。
その阿久津が倉の中で殺されていました。

"不帰屋"
テレビに出演しているフェミニズム提唱者の宮崎菊枝
から離屋を調査して欲しいと依頼がありました。
何に使われていた建物か明らかにして欲しいという
依頼です。
窓は小さなものが一ヶ所です。
床板や壁板は一列二枚しか使われていません。
ぜいたくに作られた建物です。
ここで菊枝は死んでいました。原因は窒息死です。
建物の作りが死と関係があります。

"双死神"
岡山へ内藤が一人で出かけていきます。
狐と名乗る女性から警告を受けます。
遺跡に案内するといっていた男がその遺跡の落盤事故で
亡くなりました。
狐と聞いて思い出さなければいけないのに誰なのか
わかりませんでした。
冬狐堂の陶子でした。
香菜里屋らしい店も出てきます。
作家の別の作品に登場する人物が出て来るのは楽しいです。

"邪宗仏"
腕がない仏像がお寺の床下から出てきました。
景教仏ではないかとの地元の人二人から別々のレポートが
届けられ来てくれるよう依頼されます。
キリスト教と仏教との融合があったのではないかという
のです。
片方の人が殺されます。

民俗学と事件の組合わせが新鮮です。
でも民俗学の説明部分は難しくて頭が痛くなりそうです。
ほとんど理解していません。10/21

柿の季節です

2011-10-30 18:28:16 | 日常の出来事
秋になって母から「柿を取りにおいで。」と電話が架って
くるといそいそと実家へ行きます。
実家は岐阜です。富有柿の産地です。
臨時に柿を売るお店が店を開き一籠いくらで安く売りだし
ます。流通ルートに乗れなかったちょっと規格はずれ
の柿です。
といってもしげしげと見てもどこがだめなのかわかりません。
ちょっと形が悪いとかへたの部分が黒ずんでいるとかで
食べるのにはまったく問題ありません。

電車に乗ってもらいにいくのでは金銭的には名古屋で
買えば、ということになりますがそこはいつになっても
母親がおいしいものを食べさせてやろうと買ってくれる
ものはうれしいものでにこにこと出かけていきます。
それに富有柿の本場で買った柿はやはりおいしい気が
します。
柿の季節はうれしいです。うちの家族はどういうわけか
みんな柿が好きです。


てふてふ荘へようこそ

2011-10-29 19:33:16 | 
乾 ルカ
角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日:2011-05-31


乾ルカ著"てふてふ荘へようこそ"を読みました。
てふてふ荘はおんぼろアパートです。
部屋は一階に三部屋、二階に三部屋あります。
管理人さんが一階に住んで共用の風呂、トイレ、階段を
ぴかぴかに掃除してくれます。
家賃は一ヶ月1万3千円で、最初の一月はタダという
破格のアパートです。
このアパート、何が変っているというとそれぞれの
部屋に幽霊が付いているです。
住人は幽霊と同居することになります。
引越してきた翌朝に目が覚めると幽霊が足元に座って
いるのを目にして驚きます。

一号室 住人:高橋真一    幽霊:白崎さやか
         女性不信の日雇いフリータ
二号室 住人:井田美月    幽霊:遠藤完治
         スーパー勤務のアラサー女子
三号室 住人:長久保啓介    幽霊:石黒早智子
         刑務所帰りの元詐欺師
四号室 住人:平原明憲    幽霊:湊谷薫
         パイロット志願の男子大学生
五号室 住人:槇真由美    幽霊:槇裕太郎
         兄を事故で亡くした妹
六号室 住人:米倉道則    幽霊:山崎翔太
         画家を夢見る青年
集会室 ???

高橋は女性嫌い、部屋に付いている幽霊が女性で
最初は部屋を変えてくれと大騒ぎしますがいつしか
仲良くなっています。

遠藤は60過ぎの酒好きです。美月は2の付く特売日に
遠藤のため酒を買ってきてやります。

長久保は刑務所帰り、就職したくても全滅です。
ガソリンスタンドの面接でせめて危険物取扱資格でも
持っていればといわれます。
早智子にはげまされ資格勉強を始めます。

平原は病気になって一度アパートを出ています。
薫はまだ少年です。平原は薫が好きです。でも部屋を
出る時薫に冷たい目で見られました。

真由子はもうじき結婚します。兄が事故死した場所へ
お花を供えるよう親にいわれてアパートへ住むことに
なりました。部屋に兄が居ついています。
でも真由子には見えません。

米倉の部屋にいる翔太は小学生です。
米倉に敵意を持っています。米倉が最初に適切な距離を
保って生活しようと翔太にいいます。
翔太に殺してやるというほどに憎まれます。

幽霊と住人が心が通い合うと幽霊の体にさわることが
できるようになります。
そうすると幽霊は成仏してゆきます。
幽霊達はひとり、またひとりと成仏していきます。
翔太だけは温かな繋がりではなく怒りでもってさわれ
ました。ちょっとせつないです。

集会室の???は読んでのお楽しみ。

読んでいて思うのは幽霊は人が作り出したものです。
幽霊はいるという人がいますがどうでしょう。
ならどうして成仏させてやらなければいけないのだろう
と思ってしまうのです。
せっかく住人と幽霊の間に心の交流が出来て友人となった
のならもうしばらくいっしょにすごしても悪くはないと
思うのです。
幽霊にしてもこの世に未練があるのでしょうし、いま
しばらくこの世で過ごしてもいいじゃないですか。
高橋はさやかとの別れを引き伸ばすため体に触れない様
気をつけていました。
さやかが消えてしまった後は涙を流してさみしがっています。
幽霊とずっと過ごしていれば現実の世界での人間関係が
作り難くなるということはあるかもしれません。
そこはうまく両立させて人間関係と幽霊との関係の
バランスを取るのです。10/21

ギャングスター・レッスン

2011-10-28 18:45:56 | 

垣根涼介著"ギャングスター・レッスン"を読みました。
以前に読んだ"ヒートアイランド"の続編になります。

アキは二十歳になりチームを解散しました。
八百万円が手元に残りました。1年間を東南アジアを
見て回ることに費やしました。
1年後柿沢と桃井と再会して仲間になりました。
警察に終われることがない裏金や暴力団のお金を奪うのが
仕事です。

アキは表の人生と裏の人生を整えることから始めます。
ホームレスから行き倒れとなった人の戸籍を買い裏の
仕事用に別人としても存在します。
仕事用の車の改造を整備士としての表の顔を持つ桃井の
従業員として手伝います。
南米コロンビアへ銃の買い付けとアキの銃の訓練のため
出かけます。

仕事用に改造した車を無謀な運転をしてきた暴力団の
車のせいでぶつけて壊してしまいます。
修理費用は二百四十万円です。
この費用の取立てがアキの訓練です。

暴力団の襲名のために開かれた賭博のお金を奪うこと
がアキが仲間になって実際の仕事です。
小さな島にある寂れたホテルで行われています。
周到に準備して島へ乗り込みます。

"ヒートアイランド"は、どういう展開をしていく
のだろうという気持ちで読み進んでいきましたが、
こちらは軽いです。
あまり手に汗を握るという場面はありません。
最後にちょっとトラブルはあります。
ホテルに乗り込んでお金を奪うのはどのようにするの
だろうと期待をしていました。
大勢の人がいてお金が一所に集まっていません。
興味があったのですがこれはがっかりです。
なんのことはない、強盗です。
ちょっと興ざめしました。
頭を使ってなるほどその手があったのかと思わせて
欲しいものです。
さらさらと読み進めますので肩のこらないものを
読みたいという時にどうぞ。10/21

瑠璃の契り 旗師・冬狐堂

2011-10-27 19:28:05 | 

北森鴻著"瑠璃の契り 旗師・冬狐堂"を読みました。
以前に読んだ"緋友禅 旗師・冬狐堂" の続編です。
連作短編集です。

"倣雛(ならいびな)心中"
同じ人形が3回店に戻ってきたといいます。
富貴庵の芦辺から人形を預かります。
人形作家の北澤濤声の作品です。
妻が自殺してから一年後に濤声も自殺しています。
その間に作られた作品です。
人形の行き先は子供がいる家、病気で臥せっている
人のもと、車椅子生活をしている人のもとでした。
その人たちの共通するのは視線が下からだということです。
ある視点から見ると人形は陰惨な目つきで侮辱の口元を
浮かべています。
この目線から陶子はもう一つの人形があることに
気が付き探し出します。
憤怒に歪んだ目つき、泣きだしそうな唇を持つ男の
人形を見つけ出します。
おしどり夫婦と言われていた濤声と妻の関係を表した
人形です。二人の死の意味も表しています。

"苦い狐"
美学生だった時にいっしょだった杉本早苗の追悼画集の
復刻版が送られてきました。
早苗は火災のため大学四年の時に絵といっしょに亡く
なっています。
陶子に絵を諦めさせるほどの才能の持ち主でした。
追悼画集は少ない費用で出したものですでに色あせて
います。保管してあった写真フィルムを元に作られた
ものです。
復刻版は鮮明なものです。誰が何の目的で作ったのか。

"瑠璃の契り"
横尾硝子はカメラマンです。陶子の友人であり商品の
写真撮影を頼む仕事仲間でもあります。
九州の立ち飲み屋さんで三千円で手に入れた瑠璃ガラスの
切り子椀に硝子は歓喜以上の表情を見せ一滴涙をこぼし
ました。
ガラス職人は佐貫皓一です。奥さんと娘をとても愛して
いました。その二人が亡くなりました。
佐貫自身もその後なくなっています。
硝子は佐貫の工房へ通ううち佐貫にひかれていました。
佐貫は工房の一人娘と駆け落ちしてしまいますた。
硝子の心のうちを覗かせる話でした。

"黒髪のクピド"
陶子は結婚していたことがあります。
学生時代の教師で英国人プロフェッサーDと呼ばれている
年の離れて男性です。
プロフェッサーDは人形に深い知識があります。
Dからある人形を競り落としてくれるよう頼まれます。
その人形とは生き人形でした。誰かを模した人形、
しかも死んだ子をです。
Dが行方不明になりました。
Dの行方を陶子は追っていきます。
生き人形の謎をめぐる話です。

友人の硝子や元夫の話が出てきておもしろかったです。
骨董品や美術品はただ愛でるだけでなくいろんな思惑が
付いて回るものなんですね。10/14

四色の藍

2011-10-26 22:13:19 | 

西條奈加著"四色の藍"を読みました。
藍染をしている紺野の紫屋環は夫を斬られて亡くして
います。
犯人は両替屋、薬種問屋、紺野まで手がけている東雲屋
だと思っています。
連日東雲屋に出かけて問い詰めています。
一人の若い侍が東雲屋に来て談判していました。
環が男達に絡まれているところをその侍の蓮沼伊織に
助けられます。
伊織は兄の仇を追って江戸に出てきました。
環は東雲屋に雇われている源次と関係があるお唄と、
東雲屋で洗濯を仕事にしているおくめの二人を紹介して
仲間に伊織をさそいます。
こうして4人は東雲屋を調べ始めます。
お唄にすぐに見破られますが、伊織は実は伊予といって
殺された兄伊織の妹でした。

おくめは洗濯をしながら情報を集めます。
お唄は水茶屋で働きながら客としてやってくる東雲屋の
雇い人から話を聞きだします。
同心の山根は環に惚れています。
伊織は仇と追ってきた新堀が好きです。

調べていくうちに阿波藩の藍をめぐる不祥事が絡んで
いることがわかってきます。
江戸家老の鵜野幸太郎が昔女中に産ませて里子に出した
息子をうまくだまして操っていたことがわかってきました。

女4人が協力して探り出していく様がおもしろいです。
人々が生き生きしています。
真相がわかって晴れ晴れとした人、悲しみに沈んだ人
それぞれです。
みんなから目の仇にされていた東雲屋は結局は事件とは
関係ありませんでした。お気の毒でした。10/14

一朝の夢

2011-10-25 19:01:56 | 
梶 よう子
文藝春秋
発売日:2008-06-24


梶よう子著"一朝の夢"を読みました。
時は幕末です。
将軍継嗣問題と外国との通商条約の締結問題に揺れていた
動乱の時期です。
井伊直弼が強権を振るっていました。
大勢の人が捕らえられ殺されました。
主人公は中根興三郎です。三男です。
学者になろうと星陵塾に通っていました。
長男が病死し、次男は他家に養子に出ておりなるはず
ではなかった同心になりました。
同心といっても人事の台帳を整える事務です。
あまりしゃべることが得意でなく朝顔栽培が唯一の趣味です。
政治にも興味がなかった興三郎が朝顔を介して知り合った
人々により騒動に巻き込まれていきます。

昔近所に住んでいた里恵が借金で困っていたのをみて
朝顔を一鉢ゆずってやります。
江戸時代は朝顔の栽培が盛んだったようです。
朝顔を交配して変った花を咲かせてその花が高額で
取引きされていました。
興三郎がゆずった花は撫子咲で高価で買い取られて
里恵を救いました。

この花が宗観という茶人と知り合いになるきっかけと
なります。
宗観はたびたび興三郎の家を訪れ朝顔の話をしていきます。
実は宗観が井伊直弼です。
仕事仲間の村上の息子の登也は星陵塾生です。
塾では更新会という集まりが開かれ登也はそこに
入っています。
登也は暗殺を繰り返し父親の村上が息子とその仲間を
殺し逃げたと見られています。
水戸藩と彦根藩との争いやいろんな人たちの思惑が入り
乱れています。
興三郎の星陵塾で知り合った友人の三好貫一郎も
よく家を訪れます。
里恵が殺されたりと多くの人が殺される時代の
流れの中にあります。
井伊直弼は暗殺者が待っていることを知らされていた
のにかかわらず登城し桜田門外の変で暗殺されて
しまいます。

この本では井伊直弼が好意的に書かれています。
井伊直弼は大勢の人を捕まえ殺したという悪い
面ばかり強調されます。
別の面からみれば違ってみえます。
この本は江戸の終盤の動乱を描いて興味深いです。

興三郎はその後どこかへ消えてしまいます。
朝顔の栽培を楽しみに仕事にはげんでいた普通の
人まで動乱の世は巻き込んで変化していきました。
朝顔の黄色を出すことは難しく朝顔栽培を続けた人が
一生に一度ごほうびに出会えれるものだということです。
一朝の夢とはそのことをさしています。10/14

タワーリング

2011-10-24 19:39:05 | 
福田 和代
新潮社
発売日:2011-04


福田和代著"タワーリング"を読みました。
高校生の章吾、宗一郎、新二が自転車をこぐ場面で
始まります。
章吾が建築家になりビルを建てる夢を語ります。

数十年の後章吾は建築会社マーズコーポレーションの
社長になっています。
夢のとおり六本木に50階立てのウインドシア六本木を
建てました。社長は50階に住んでいます。
マーズはここの17階に事務所として使っています。
セキュリティは厳しいビルでテナント部分以外は関係者
でないと入れません。
数人の侵入者が社長を人質にします。
ビルの管理をする防災センターを占拠されます。
ビルがジャックされした。
出入口の開閉、エレベータ、電気などすべてが犯人の
手に握られます。
数千人の人々が閉じ込められしまいます。
犯人の要求は5億円、屋上にヘリコプターを用意しろと
いう要求です。

犯人とマーズや警察との攻防が描かれています。
映画になったらきっとおもしろいと思います。
犯人の方が上手です。
あまり書いてしまうとこの話は読むおもしろさが
減ってしまいますのでこのへんで。

犯人側の思惑がよくわからないなあという部分が
あります。
仲間うちにはお金が目当ての人、そうでない人が
います。
お金目当ての人の動機はわかりますが他の人の
目的はなんだったのかよくわかりません。
とくにボスは何が目的だったのでしょう。
単純にお金目当てにしてしまった方がすっきり
した話になったのに、なんだか納得できない
なあという部分が残ります。
作者はこの部分が重要なんだといいたいの
でしょうが、私には伝わってきませんでした。

駆け引きはおもしろいです。
先を読んで思わぬ手を使ってくるのでゲーム好き
の人には受けるのではないでしょうか。10/14

里見八犬伝

2011-10-23 18:18:45 | 
高木 卓
ポプラ社
発売日:1966-12


"里見八犬伝"を読みました。
子供向けの本です。(ポフラ社 古典文学全集23 高木 卓)
前に"伏 贋作・里見八犬伝"を読んだ時に"里見八犬伝"を
読んでみたいと思いました。
図書館で目にしたので借りてきました。
何しろ本物の里見八犬伝は滝沢馬琴が28年掛かって
書いた大作です。
それを1冊にまとめた本ですからそれはそれは超圧縮
版です。
でもだいたいの雰囲気はつかめます。
江戸時代の当時の読者はどんな風に読んでいたのでしょう。
2年ごとの発売だったと解説にあります。
わくわくとして待ったのでしょうか。

おおまかなあらすじです。
安房の国(今の千葉県)にある二つの国が戦争になりました。
北の領主は里見義実です。
南の安西に負けそうな状況に追い込まれます。
義実は白い毛並みに黒の房毛が八つある大きな犬を
飼っていました。
八房に敵の大将の首を取ってきたら娘の伏姫をやろうと
冗談でいいます。
八房が敵の大将の首をほんとうに取ってきます。
戦いにはおかげで勝ちました。
姫は八房に乗って山奥の洞穴に消えました。
八房をうらんで追って行った男がいます。
八房を撃ちぬいた弾が姫も死なせてしまいます。
その時伏姫が持っていた数珠の"仁"、"義"、"礼"、"智"、
"忠"、"信"、"孝"、"悌"の文字が書かれた八つの玉が
散っていきました。
時は伏姫が亡くなって数十年経っています。
体のどこかに同じようなあざがあり飛び散った玉の
一つをもつ若者が里見以外の地にいます。
しだいに出あっていきます。
その間の冒険が描かれています。
八人がそろってその後、里見に仕えて国のために
働きます。

子供のころにわくわくして読んだ本です。
わくわくさせる要素はそろっています。
現代のアニメみたいな感じなのかと思います。
楽しい話ですが今は覚めた感じで読みました。
本は読む時期があるようです。
おもしろいと感じる時にいっぱい読んでおかないと
時期を失することになります。
"里見八犬伝"は超圧縮版でいいですから一生に一度は
読んでみるといいです。10/14

小説あります

2011-10-22 19:20:36 | 
門井慶喜
光文社
発売日:2011-07-20


門井慶喜著"小説あります"を読みました。
"おさがしの本は"の姉妹編です。
"おさがしの本は"では廃館にされそうだった図書館を
救う話です。
"小説あります"は徳丸敬生(のりお)という小説家が住んで
いた家で徳丸敬生の資料を展示している文学館が廃館と
決まります。
老松郁太は文学館に勤めています。
以前はオイマツ・ホールデングスの取締役でした。
父が亡くなった時に社長を弟に押し付け好きな文学の
仕事に就きました。

神田の古本屋で徳丸敬生の遺稿集を見つけます。
その本には徳丸敬生のサインが入っています。
遺稿集に作者のサインが入っていることは本来ありえません。
郁太はこのサインを本物だと見ます。
郁太は3人兄弟です。姉貴子、弟勇次がいます。
仲のいい兄弟です。
文学館は勇次の会社が買い取って料亭になる計画が
進んでいます。
何のために小説を読むかの議論で負けたら勇次は
文学館存続のため骨をおることを約束させられます。

この本は小説を読むのはなぜかという考察と、徳丸の
本の秘密を解く話で進んでいきます。
おもしろい話でした。
"おさがしの本は"とは違って文学館は廃館になってしまいます。

本の秘密は解き明かされます。
徳丸は自殺をしてしかも行方不明で死体が出てこないと
いう死に方をしています。
残された奥さんは死んだと認定されなくて、お金を
自由にできなく食べるのに困る状態に追い込まれます。
本にいろいろ細工できる精神状態なら残る家族のことを
第一に考えるべきだと憤りました。

本を読む理由は
・時間つぶしのため
・現実逃避のため
・人格の修養のため
・豊かな情操を養うため
・別の人生が経験できる
・孤独であることの練習のため
・人とつきあうため

郁太が提示して勇次が論破していきます。
最後に二人が同意したのは「人と付き合うため」
だそうです。
納得しますか?

正直よくわかりません。まだその前の説の方が
納得できるような気がします。
自分自身を振り返ってみて「人と付き合うため」に
読んでいるといえるかなぁ。
私は何のために読んでいるのでしょう。
単純に娯楽のため、それでもいいでしょう。10/08

想い火

2011-10-21 20:18:02 | 
中野順一
徳間書店
発売日:2010-04-16


中野順一著"想い火"を読みました。
茜は消防士です。予防課調査係です。
火事が鎮火した後現場を調べて火事の原因を突き止め
今後の火災を予防する手立てにしたり、警察に結果を
提出する仕事です。
茜は中学生の時近所で連続放火があり父親が犯人だと
疑われ警察に連行されたことがあります。
犯人は捕まったのですが、父は仕事を失い母は行方不明に
なりました。

連続放火の火災が続きます。
ほとんどが大事にならずに消し止められています。
茜の上司の刀根は皆に信頼されています。
仕事をしっかり教えてくれ尊敬する上司です。
刀根は火災が発生したら火の中へ投げ込む方式の
消化剤を無理やり家に持たされました。
刀根の家の近所で火事が発生しました。
持ち帰った消化剤を火に投げ込んだ所、火勢が反対に
強まり炎に包まれて亡くなりました。
消化剤は配られる前に消防署の倉庫に保管されていました。
保管してあったすべての消火器の中身が入れ替えられ
ていました。

茜は放火とすり替え事件を調べ始めます。
警察の外村とはことごとに対立します。

すらすらと読めます。
仕事に打ち込む茜の姿はいいです。
刀根があまりにもあっけなく亡くなって拍子抜けです。

投げ入れる消化剤、つい最近宣伝を見かけて買いたい
と思っていたところです。10/08

緋友禅 旗師・冬狐堂

2011-10-20 20:44:59 | 

北森鴻著"緋友禅 旗師・冬狐堂"を読みました。
現代の話です。旗師とはお店を構えずに骨董品や美術品を
仕入れて、別のお客さんやお店に売る仕事です。
旗師の陶子が主人公です。
年は書かれてなかったと思いますが30代ぐらいです。
連作短編集です。

"陶鬼"
ツルさんが自殺しました。
無愛想ですが骨董品の見る目は確かで仕事に関しては
信用がおける人です。
陶子とは時々仕事先で出会い旗師としての仕事について
学ぶことがありました。
自殺する前に有名な陶工の最後の作品を壊しています。
自殺の原因は。

"「永遠(とわ)笑み」の少女"
掘り師の老人が訪ねてきます。
永遠(とわ)笑みのはにわを預けていきます。
掘り師とは古墳などの遺跡から遺物を発掘する人です。
非合法な仕事です。
老人の23歳の孫娘が行方不明になっています。
行方を捜していた老人も殺されます。
刑事が登場してきます。この後もたびたび登場します。

"緋友禅"
ふと立ち寄った画廊でみた作品に心を奪われます。
緋色の幾何学模様のタペストリーです。
作者は無名の人です。
30数点の作品を陶子はすべて買います。
代金を払い作品展が終了したら発送してもらう約束です。
1点だけ展示されてない作品を貰って帰ります。
展覧会が終わっても作品は送られてきません。
部屋に確かめにいくと作者は亡くなっていて、
作品は消えていました。
しばらくして彼の作品に手を加えたものが華々しく
世に出てきました。

"奇縁円空"
この作品は本の半分を占めており中篇です。
円空の作品は数が多く偽物が多く出回っています。
骨董品を扱う人でさえ円空の作品はためらうといいます。
本物としか見えない作品が陶子の手に回ってきました。
よく見ると炎の文字が浮かんできます。
こういうものはレプリカとしての価値があるそうです。
贋作の円空で儲けようとする人、円空の域にまで自分の
作品を高めようとする人、古材を提供する人などが
暗躍します。
殺人が起きます。
根岸、四阿の刑事と情報交換して事実に迫っていきます。

旗師という仕事を知りました。
骨董や美術品の知識だけではやっていけない仕事です。
駆け引きが必要です。
私にはたとえ知識を持っていたとしてもびくびくして
しまいとてもやってはいけない仕事だなぁと思います。
仕事にわくわく感が持てて、度胸がないとだめですね。
骨董や美術品は展覧会や博物館で見たら満足します。
手元に置きたいとは思いません。

この本 「 」 でくくられるべき語りの部分が数ページ
挿入されていることがあります。
なれないからかちょっと気になります。
円空の話はおもしろいのですが小説ですから説明文の
どこまでが真実なのかわかりません。
くどいです。もっと半分ぐらいの長さに縮めてすっきり
読ませて欲しいです。
円空仏は現実に人を魅了する仏像のようです。10/8

ナイルに死す

2011-10-19 20:03:57 | 

アガサ・クリスティの"ナイルに死す"を読みました。
読み終わっても前に読んだという記憶はないのですが
最初からどんなふうに事件が起こって誰が犯人か
わかったので忘れているだけで、映画を見たか、本を
読んだかしているはずです。

半分ぐらいまでは事件は起こらず登場人物の紹介に
ついやされています。
本の最初に始めはゆっくり読んで登場人物を頭に入れて
くださいと注意書きがしてあります。
登場人物が多いです。名前が頭に入りません。
おまけに名前で書いてあったり、苗字で書いてあったり、
はたまたフルネームであったりと統一されてなくて
誰だっけと思うことが多くてスムーズに読んでいけません。
文章は統一性を持たせよ、とは仕事上で文章を書く時
しつこく言われました。小説はその限りにあらずと
いうわけですね。

リネットは美しく頭が良く莫大な遺産の相続人です。
友人のジャックリーンが婚約者のサイモンを雇ってくれる
よう頼みにきます。
リネットは当然のごとくサイモンを横取りして結婚して
しまいます。
新婚旅行でナイルの船旅に出ます。
ジャックリーンがリネットとサイモンの行く先々に
出没します。
この船旅には探偵のポアロも参加しています。
危険をはらんだ空気が流れています。
この船にリネットの別の友達のいとこの親子や、作家の母娘、
金持ちの老婦人といとこと看護師、リネットの財産管理人、
医者、学者、ポアロの知り合いの英国特務機関員などが
乗っています。

リネットがベットで頭を撃たれて死んでいるのが見つかります。
その前の晩にはサイモンとジャックリーンの間で諍いが
ありジャックリーンがサイモンの足を撃ちます。
一番リネットを殺す理由があるジャックリーンには
鉄壁のアリバイがあります。
錯乱したジャックリーンの側に看護師が一晩中ついていた
のです。
その後リネットの女中のルイーズが殺されます。
犯人を見たことをにおわせる発言をしていたので犯人を
恐喝して殺されてしまったのです。
またしても作家のオッタボーンが殺されます。
ルイーズを殺した犯人の名前を言おうとしたことろで
撃ち殺されてしまいました。

ポワロが犯人を示します。
しかたなしに犯罪に引き込まれてしまった犯人の
片割れはあわれです。止めさせることができな
かったらせめて手を貸さない選択をするべきでした。
もう一人の方は欲張りです。幸せかお金かどちらかに
しておけばよかったのに。
この文章だけで犯人ばればれですね。10/03

幸せのパズル

2011-10-18 19:00:42 | 映画
"幸せのパズル"という映画を見てきました。
正直よくわかりません。
アルゼンチンの映画です。
夫と20歳ぐらいの息子二人がいる主婦のマリアが
主人公です。
料理上手で家族のため家事をこなしています。
でも誰も当たり前のこととしてなんとも思っていません。
誕生日にもらったジグゾーパズルに夢中になります。
ジグゾーパズルの選手権に出るためパートナーを探して
いたロベルトに出会います。
お金持ちのロベルトの家で週二回練習をすることになります。
家族には内緒です。
選手権で二人は優勝します。世界大会はドイツです。
でもマリアは行かない決心をします。
まとめるとこんな話です。

主婦は趣味を持つことは許されないのでしょうか。
女性には発言権がないということは映画からは感じられ
ません。次男がガールフレンドを家によくつれてきて
いますが彼女をみていても女性が弱そうには感じ
られません。
マリアはジグゾーパズルの世界へ自ら入っていき新しい
世界が開けました。
マリアには才能があります。変なやり方をするのだなと
思っていましたがやはり他の人から変ったやり方だと
言われています。
せっかく優勝したのだから世界を目指せばいいのにと
思います。
パズルを選べば夫婦や家庭は壊れていくかもしれません。
パズルと家庭を天秤にかけて家庭を選んだのでしょう。
パズルに夢中になっていたこの時は人生の中の楽しかった
ひと時という思い出として心の底に仕舞いこまれて
しまうのでしょうか。
なんだかねぇ、もっとがんがんと前に進んで欲しい
気がしますけど彼女の幸せは家庭にあるのでしょう。
見終わってよかったという気持よりはさみしい気持ちに
なりました。
マリアはこれでいいんだと思っているのでしょうけど。

家庭を大事にする主婦が主人公の映画として"マディソン
群の橋"を思い出しました。

獅子真鍮の虫 永見緋太郎の事件簿

2011-10-17 21:27:00 | 

田中啓文著"獅子真鍮の虫 永見緋太郎の事件簿"を
読みました。前に読んだ"落下する緑"、"辛い飴"の
シリーズ3作目です。
ジャズのテナーサックス奏者の氷見緋太郎が探偵役です。
唐島英治クインテットのリーダー唐島が語り手です。

"塞翁が馬"
波瀾万丈の人生のJAZZドラマーの久米山甚一に唐島
クインテットは自伝映画で演奏するよう強要されます。
紳士的なドラマーの野際弘昭を競争相手とみなし
勝負を挑んでははねつけられていました。
とうとう二人のバトルが行われることになりました。
そこで事故が起きました。野際のスティックが折れて
飛び久米山の息子の目に刺さり失明しました。
野際はドラマーを廃業しました。
永見がこの事故がどういうものだったのかを明かして
いきます。

"犬猿の中"
弱小プロモーターの渥美にたのまれ犬猿の中のベーシスト
の成瀬とドラマーの東と演奏することになります。
永見も加わることになります。
機械を使って大きな音を出したいベースと生の音で
なければだめだというドラムで昔騒動になりました。
ピアノの女性をめぐっても争いになり喧嘩別れしました。
久しぶりに演奏をすることになりはたしてどうなることか。

"虎は死して皮を残す"
唐島は胃を悪くして病院へ行きます。そこで内畑院長と
永見が話しているのを聞いて自分がそう長くないと
信じこみます。
JAZZ通の院長にタイガー・ブロンソンのトランペットを
買わないかと打診され、長く生きられないと信じた唐島は
驚くような金額の楽器を買ってしまいます。
タイガーマニアの桃山に吹かせてくれるよう頼まれ
内山院長のマンションの上階にあるスタジオで会うことに
なりました。
ちょっと部屋を出た間にトランペットは消えました。
箱には猫の死体が入って残されました。
その後トランペットは見つかります。
箱は捨てられます。
はたして何を意味するのか。どうやって犯人は部屋を
出入りしたのか。

"獅子真鍮の虫"
唐島クインテットを解散してアメリカへ渡ります。
永見もついてきます。
ニューヨークでニックと知り合います。
楽器が盗まれる事件が頻発しています。
古く壊れているようなものばかりが盗まれています。
ニックの最初に買った思い入れの深い楽器も盗まれます。
公園ではアフリカ出身の子供達が演奏しています。

"サギをカラスと"
シカゴへ移動します。
掃除夫の老人と出会います。
バスクラリネット奏者として有名だったジョセフ・キンガン
だとわかります。
誰もが出て行きとうとうセルメールもいなくなったと
しきりにセルメールをなつかしんでいます。
ラジオ出演や雑誌寄稿をしているビルが寄付を集め
バスクラリネットをジョセフに贈ります。
しかしその演奏はひどいものでした。
永見がセルメールを見つけてきます。
セルメール、実はバスクラリネットにつけた名前でした。
セルメールでの演奏は活き活きしたものでした。

"ザリガニで鯛を釣る"
ニューオリンズへ移動します。ジャズ発生の地です。
唐島はホームシックぎみです。
町を練り歩くブラスバンドが演奏を聞かせてくれます。
占い師のいうことが的を得てます。
古い知り合いに会います。
日本へ帰ることにします。

"狐につままれる"
唐島カルテットのメンバーは別のグループへ移って
いて仕事はしていません。
バンビー田崎スペシャルオーケストラに参加を
依頼され唐島、永見は受けることになります。
ホテルの部屋からヒット記念のゴールドデイスクが
盗まれ発見された時には「バンビー田崎は泥棒」と
落書きがされていました。
部屋の近くにきた外部の人は数人、その中に田崎の
昔の知り合いの山倉がいます。
彼がやったのか。

カルテットを解散してアメリカへ渡ると書かれていた
のでアメリカで仕事をするのか、勉強をするのかと
思いました。どちらにしても思いついて簡単にできる
ことではなさそうでどうするのだろうと思いました。
でも演奏を聞いてまわる旅行という感じもので
それならできるなぁと納得しました。
本場でいろんな演奏を聞くということは世界が広がる
感じでいいでしょうね。
これがシリーズ最後だとどこかで見たような気がします。
でも最後の話が唐島カルテットの再開をめざして終わって
いますからまだ続きそうです。
楽しみに待ってます。10/03