雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

深淵のガランス

2011-12-27 17:47:37 | 
北森 鴻
文藝春秋
発売日:2006-03
北森鴻著"深淵のガランス"を読みました。
北森さんの今まで読んだ冬狐堂シリーズや蓮丈那智の
シリーズとは別のシリーズです。
花師と絵画修復師の二つの顔を持つ佐月恭一が主人公です。
バーなどに頼まれて花を活けるのが花師としての仕事です。
流派には関係なく活けています。
絵画修復師はある人から紹介されたものしか仕事をしません。

"深淵のガランス"
長谷川宗司がパリで描いた絵の修復を家族から依頼
されました。
修復をする前に写真を撮り斜光撮影、赤外線撮影、
紫外線撮影、X線撮影をして準備をします。
それで絵の下にもう一枚絵があることがわかりました。
未発表の絵を表に出すことはできますが上の絵はダメに
なってしまいます。
隠された絵を見たいと画策する人が暗躍します。
佐月は絵の裏から針を刺し絵のタッチを調べていきます。
構図はいろんな撮影でわかっています。
絵を再現します。
この絵には画伯がどうしても隠しておきたい秘密が
描かれていました。
佐月の描いた絵はある人の手に渡りました。
これって贋作っていうのじゃないのかな。
佐月は贋作には手を出さない信念の人なんだけど。
ガランスは赤い色の名前だそうです。

"血色夢"
東北の石室内壁画の仕事が舞い込みます。
個人の土地でその土地の持ち主が依頼主です。
この話と同時期に分割してばらばらにされそれぞれ
別のキャンバスを継ぎ足し描き加えられ複数の真作の
作品として出回っている絵がありそれをすべて
集めたいとしている人たちがいます。
集めて本当の1枚の絵に戻そうとしています。
この過程で殴られ骨を折る怪我をさせられたり、
画商の恨みを買い薬剤を噴射した危険な洞窟に閉じ込め
られたりします。
分割された絵画は5つ、4つが見つかり真ん中の絵が
ありません。継ぎ足して描くよう依頼されます。
佐月は描きます。

こういうことしていいのでしょうか。
贋作ではないのかなぁ。
絵というものの扱われ方がわかっておもしろい本でした。
絵はばらばらにされたりふたつにはがされたり、描いた
画家が思いもよらない運命をたどっています。
何が本物で、何が偽物か、わけがわからなくなりました。
絵を購入しようなんて思うものではありませんね。
汚れた絵は溶液でウォシングするときれいに戻せる
なんてことも初めて知りました。