雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

我、言挙げす 髪結い伊三次捕物余話

2012-06-30 20:47:55 | 

宇江佐真理著"我、言挙げす 髪結い伊三次捕物余話"を
読みました。

"粉雪"
薩摩へこ組という視野の狭い他人の目をまったく気に
しない困り者が横行しています。
死ぬことを怖れないのが信条です。
押し込みをして捕まります。
悪いことをしたという感覚がない人達です。

"委細かまわず"
見習い組の不破龍之進は実質番方同心としての同心
修業をしています。
小早川の下について行動を共にすることになります。
小早川を密偵が探っているとの噂があります。
証拠を捏造したともいわれています。
龍之進は小早川を尊敬していますがいろいろな
噂が耳に入ってきます。
その小早川が押し込みをしようとした同心に殺されます。

"明烏"
伊三次の女房で芸者をしているお文の話です。
いやなお客の仕事から帰る途中で占い師に出会います。
大店の娘としての暮しができる時があった、その時が
運命の分かれ目だったと言われました。
お文は躓いて気を失しないました。
気がつくと別の選択をした世界にいました。
母は病気で義理の父は無理やり結婚させようとします。
あげく断ったお文を閉じ込めようとします。
必死で逃げだして元の世界へ戻ります。

"黒い振袖"
不破龍之進ら番方若同心が呼び出されました。
備前国の井川藩の若君や母君ら江戸へ向かっていた一行が
何ものかに襲われほとんどの者が命を落としました。
姫君と中間一人の行方がわかりません。
探索するよう命じられます。
お家騒動です。
後見となるはずの亡君の従兄弟がたくらんだことです。
姫君はかくまわれていました。
姫には婿が決まっていました。
龍之進達は姫を婿の屋敷まで送ることになります。
婿になる貝之助は耳が聞こえません。
姫は投げやりになっています。
屋敷の前で篝火を焚いて堂々とした体格の貝之助が
姫を出迎えてくれました。

"雨後の月"
以前お文の女中をしていたおみつが訪ねてきました。
おみつは風呂屋の養子となった弥八といっしょに
なりおてるという子がいます。
弥八は岡っ引きの手先をしています。
弥八や義母とうまくいかなくて実家に帰ろうかと
思うと悩んでいます。
おみつの弟の清吉は落ち着かなくて小遣いを姉に
せびりにきます。
おみつは清吉を風呂屋で雇ってくれないかと頼み
ましたが断られました。
とうとうおみつは実家へ帰ってしまいました。
清吉は姉への仕打ちを恨んで風呂屋で盗みをして
捕まってしまいます。
うらみをぶちまけます。
清吉は風呂屋で面倒をみることになり弥八はおみつを
迎えにいきます。

"我、言挙げす"
不破龍之助の仲間の吉川喜六が結婚することに
なりました。
相手は例繰方の帯刀清右衛門の娘の芳江です。
清右衛門は同心だった時袖の下を受け取りませんでした。
北町奉行が商人からお金をもらっていることを
糾弾しました。
それで左遷されました。
大工が女房に殺されました。
殺された男はいつも女房に暴力を振るっていました。
不破監物は死罪をまぬがせてやりたいと何か手立てが
ないか龍之助を例繰方の清右衛門の所へ聞きにいかせます。
清右衛門男の親戚からの宥免願いで罪が軽くなった例が
あると教えてくれます。
龍之助は清右衛門に若い時に言挙げした理由を聞きます。

伊三次の家が火事に巻き込まれ焼けてしまいます。

伊三次が出てこなくて龍之介が主役の話も多いです。
シリーズ物で伊三次が出て来るとうれしいです。

高齢者の旅行

2012-06-29 21:12:58 | 日常の出来事
親戚に不幸があって高齢者の母を連れて東京へ2泊3日で
行ってきました。
荷物は車輪付きのバックに二人分入れて私が持って
行きました。
よろよろ歩く母をちゃんと目的地まで連れていけるか
出発前はとても心配しました。
結果としてJRの乗り継ぎはほとんどエスカレーターか
エレベーターが設置されていて足元がおぼつかなくても
なんとか歩ければだいじょうぶです。
バス、電車と4回乗り継ぎましたがなんとか行けました。
ほとんど階段の上り下りをしなくてすみました。
母は妹(私の叔母)に会ってなぐさめることができました。

何年ぶりの東京でしょう。大都会です。
駅前のホテルに宿泊して窓から外を見るとホテルの前に
小さな広場があります。
9時ごろはたくさんの人達があちこちに集まって話たり
演奏したりしていました。
夜眠れなくて3時ごろに外を見ると驚いたことに広場には
人が数人いて昼のごとくに語り合っています。
自転車で走っている人も結構います。
昼も夜も関係ないのですね。
名古屋ではどうなんでしょう。
名古屋駅前を考えてみると第一、人が座れる広場がないです。
あまり人々が屋外で語り合っているというのを昼間でも
見かけないような気がします。
これは私の勝手な意見でそんなことないよと言われるかも
しれません。

名古屋へ帰ってきてJRから地下街へ行こうとしたらこれが
うまくエスカレーターなりエレベーターで行くことが
出来ません。
JRから名鉄デパートの1階へ地上から歩いて入って
デパートのエレベーターを使うというのが私が考えつく
階段を使わなくて地下街へ下りる方法です。
あそこを通れば楽に行けるという方法があったら
教えてください。

母は岐阜ですから名古屋駅での乗り継ぎに苦労は
しませんでした。
JR名古屋駅から地下鉄や名鉄への乗り継ぎは参考までに
楽な方法はあるのかなと思っただけです。

木練柿

2012-06-29 21:00:00 | 

あさのあつこ著"木練柿"を読みました。
シリーズ物の後の方のもののようです。
ちょっとわからないなと感じるところはありますが
そう困ることはありません。
北条町廻り同心木暮信次郎、岡っ引きの伊佐治、
小間物問屋遠野屋清次郎が主要登場人物です。
清之介は元武士です。詳しくはわかりませんが命令されて
人を殺している過去を持っています。
木暮は推理力があり清之介にその点では信頼されています。
しかし口が悪く人を傷つけるようなことをづけづけと
いいます。
清之介に対してもきつい事をいいます。
伊佐治は木暮の下で働いています。
木暮より年上のようです。
木暮は伊佐治によくいさめられています。
連作短編集です。

"楓葉の客"
男が殺されてその袖からおみつを呼び出した手紙が
見つかります。
遠野屋の使用人におみつがいます。
おみつに聞くと知らない男から昔の知り合いだと言われて
呼び出しの手紙を何度か受け取ったが行かなかったと
いいます。
同じ時に万引きして遠野屋に入り込んだ娘がいます。
木暮と伊佐治はその夜遠野屋へ泊まります。
夜中に忍び込んできた男達がいます。

"海石榴(つばき)の道"
遠野屋と履物問屋の吹野屋謙蔵と帯屋の三郷屋吉次、
反物の黒田屋とが連携して現代的にいうと装飾の
コーディネートするという商売を始めました。
しかし黒田屋が人を殺したことにより中断してしまいました。
吉次は人に囲われている妾のおせんの元に通っています。
おせんが殺されている脇にいるのを見つかって
捕まってしまいます。
吉次の妻と父親、それに吹野屋は吉次が人を殺すことは
ありえないと清之介に助けを求めてきます。
吉次は自分を信じてくれる人たちがいることを認識
しました。

"宵に咲く花"
おけいは子供の時から夕顔の花を見ると恐怖にかられます。
小料理屋の梅屋の太助と結婚しました。
太助の父親は伊佐治です。
おけいは神社で男達に襲われ清之介に助けられます。
子供のころ住んでいた家の近くの金貸しが殺されたことが
あります。おけいはその現場を見ていました。
その場所に夕顔が咲いていました。
おけいはそのことを覚えていません。
おけいが夕顔を怖れるわけはこの時の出来事が原因です。
おけいが夕顔を怖れることを知って疑心暗鬼になった
男がいます。
夕顔が咲いている場所で人を殺し金を盗みました。
おけいを殺そうとします。
しかしおけいが見た事件の犯人はすぐに捕まっています。
男は同じような出来事に勘違いして墓穴を掘りました。

"木練柿"
清之助はおりんと出会い武士を捨て遠野屋の主に
なりました。
おりんは乱暴をされたことがあり男を拒絶していましたが
清之介とはいっしょにいられました。
しかしおりんは自殺してしまいました。
義母のおしのと養女のおこまと、使用人ですが家族のような
おみつと仲むつまじく暮していました。
おこまがおみつと散歩の途中でさらわれました。
遠野屋の人々は半狂乱です。
清之介は木暮と伊佐治に助けを求めます。
清之介は木暮なら見つけてくれると信頼し、しだいに
落ち着いていきます。

木暮はずけずけと人が嫌がることをいいます。
でも憎めない人です。悪い人ではありません。
清之介は端正で芯の通った人です。
みんなそれぞれ魅力がある人たちです。

翳りゆく夏

2012-06-28 21:00:00 | 

赤井三尋著"翳りゆく夏"を読みました。
今回もねたばれですので途中まで読んで本を読んで
みようという気になられたらその先は読まないでください。

新聞記者が活躍するミステリーです。
東西新聞社は朝倉比呂子を来春入社させる予定です。
週間秀峰に朝倉のプライバシーが暴露されることに
なりました。
二十年前に病院から新生児を誘拐し病院に対してお金を
要求する事件が起きました。
アタッシュケースに仕掛けられていた発信機から犯人の
車が見つかります。
警察に追われて車は崖から落ちて犯人の男女は死にました。
お金は車から見つかりました。
赤ちゃんは見つかりませんでした。
殺されたのだと思われています。
死んだ犯人の男の九十九が朝倉の父親です。

新聞社は朝倉を入社させたく思います。
しかし朝倉は入社を辞退しようとします。
何回も新聞社の上層部は朝倉と会ったり養父母の経営して
いる店を訪れ朝倉を説得しようとします。
世論を引っ張っていく使命があるのが新聞社と思って
いるのか、こうまで朝倉を入社させるんだと意気込む
のは嘘っぽく感じます。

東西新聞社では取材の不手際で資料室へ左遷された梶を
社長が訪れ過去の事件の真相を調べるよう命令します。
当時の刑事の井上を訪ねて捜査の話を聞いたり捜査
ノートを借りて研究します。
新生児室の真ん中にいた赤ちゃんがなぜ選ばれたのか
という疑問をいだきます。
血液型は0です。

やがて病院へ出入りしていた堀江という証券マンが
看護師をしていた滝川を殺して服役していたことを
知ります。
彼らが身代金誘拐に関わっているのを確信します。
すでに出獄している堀江を見つけ出しますが病気で
危篤状態です。
彼の口から意外なことがもらされます。
誘拐はしていない、誘拐の話を聞いて便乗してして
身代金を要求したのだといいます。

意外な展開をみせます。
赤ちゃんは生きています。
それも意外な場所で育っています。
過失から自分の子供を失った母親が病院から赤ちゃんを
連れ出したのです。
その母親は自殺し、夫は妻がしたことを知りながら
赤ちゃんを自分の子として育ててきました。
子供は大学生になっています。
今まで幸せに暮してきました。
赤ちゃんを誘拐された夫妻は自分たちの子供が生きている
ことを知ります。
朝倉は父親が誘拐殺人は犯していないことを知ります。

いっきに読めます。
かわいそうなというか、立っている地面が割れてしまった
ように感じるのではないかと思うのは今まで幸せに暮して
きた誘拐された子です。
何事もどんな暗く辛い真実でも知らずにいるより知って
いる方がいいのだと思ってきました。
でも今回の話を読み終わって、この子は真実を知るより
知らなかった方が幸せだったのではないかと思えました。
実の親は天にも上る幸せな気分でしょうが、かえって
子供に負担を強いるのではないかという気がします。
誘拐された子には強く生きていって欲しいものです。

星やどりの声

2012-06-27 21:00:00 | 
角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日:2011-10-29

浅井リョウ著"星やどりの声"を読みました。
長女琴実 警察官の孝史と結婚して兄弟たちとは別に
住んでいます。
長男光彦 大学四年生 就職活動中
二女小春 小春とるりは双子 高校生
三女るり
二男凌馬 高校生
三男真歩 小学六年生 男の子

父親は建築家で8年ほど前に数年の闘病の後
亡くなりました。
「星やどり」という名の喫茶店を母親が経営しています。
六人の子供が順番に主役となって物語りは進みます。
住んでいる所と喫茶店は別の場所にあります。
星やどりには父が作った星型の天窓があります。
喫茶店ははやっていません。
店で出すビーフシチューはとてもおいしいです。
琴実は仕事を持っていますが朝早く母が店に行った後
兄弟の朝ごはんの用意をしたり休みには店を手伝って
います。しっかり者です。
光彦はちょっとたよりないとこがあります。
就職活動はうまくいっていません。
小春とるりはそっくりです。しかし意識して違いを
目だたそうと小春の方が変える努力をしています。
るりは帰宅後店を手伝っています。
凌馬は元気な子です。
真歩は4歳の時に父を失っています。
その喪失感からずっと笑うことがありません。

母が父の命日に店を休み別の男性とレストランに
いる所を小春が目撃します。
大事な日にそんなことをして許せないと小春と凌馬は
不機嫌になります。
実際はその人は店の地主さんでした。
地主だった父親が亡くなり土地を引き継いで地代が1年も
滞納されているのを知りました。
土地を明け渡して欲しいといわれています。
そんなにも店ははやっていないのです。
母は過労で倒れてしまいました。
店の状況を知った兄弟姉妹は店の立て直しを相談します。
インテリアを考えたりメニューを写真にしたり知恵を
だします。
交替で店を手伝います。
しかし母は店を閉めようと決意しています。

最近は六人兄弟てほとんど見かけません。
兄弟が多いのもいいかなと感じさせます。
みんな亡くなったお父さんがとても好きなんです。
勘違いでしたがお母さんに好きな人が出来たとしても
頭からそれはいけないことと決め付けているのは
ちょっとわかりません。
お母さんだって自分たちと同じ一人の人間だという
視点がありません。
子供達や友人が夕食を星やどりにとりによくやってきます。
店で出しているビーフシチューを食べる場面がよく
出てきます。
私は店の家族がダイニングとして使用している店には
行きたくありません。
店の売り物を家族が食べていては商売にならないでは
ないかとも思います。
そのあたりはけじめがないのではと思います。
子供達が店の立て直しを考えて手伝おうとしているのに
母親はもういいと閉店を決めています。
でも育てていかなくてはいけない子供たちがいます。
いったい閉めた後どうするつもりなのかそれが心配に
なる結末です。
店を続ける努力をした方がよほどいいのにと思います。
兄弟姉妹が仲が良く大家族の雰囲気がよく描かれています。
著者が大学生の時の作品だそうです。

つるべ心中の怪 保己一推理帖

2012-06-26 21:00:00 | 

中津文彦著"つるべ心中の怪 塙保己一推理帖"を読みました。
塙保己一さんは実在の人物なのですね。
ぜんぜん知りませんでした。
この本は推理帖とあるように実在の塙保己一と創作の
塙保己一の部分から成ります。
保己一は子供の時に失明しています。
彼は聞いたことをすべて覚えていられます。
埋もれた大切な書物を発掘して整理、保管し複写を発行
するというような仕事をしています。
幕府の手当てや資金提供者がいて大きな住宅兼作業場が
あり働いている人も数人います。
書き写したものを読ませて記憶や知識からその間違いを
指摘します。
このへんの話は真実のようです。すごい人です。
でも日本史でも古文でもこの人の名前を聞いた記憶は
ありません。
忘れてしまったのかそれとも取り上げられていないの
でしょうか。

"つるべ心中の怪"
塙家の婚礼の宴の手伝いにきてくれた札差の武蔵屋の
おかみのはるゑが若い手代の彦三とつるべ心中をしました。
つるべ心中というのは一本の綱の両端にぶら下がって
二人が死ぬという方法です。
はるゑは娘のおゆきと彦三との縁談を勧めていました。
しかしおゆきは彦三を嫌っていました。
武蔵屋の番頭の精次が取り仕切っていました。
はるゑは精次と関係がありました。

"赤とんぼ北の空"
塙の娘登瀬の婿の金十郎は以前道場に通っていました。
その時の仲間の岸井健次郎の噂を聞きました。
博打場に出入りしていて十何両勝ってもまだ足りないと
言っていたとの話を聞きました。
島田家の珠江と婚約しています。
岸井は道場の師範代になれるだろうといわれていました。
腕が痛いと顔をしかめていたといいます。
越後で見かけた人がいます。
その岸井が江戸に戻っているようなので、金十郎はもう
一人の道場仲間の小林拓馬に捜索を依頼しました。
小林が岸井に斬られ医者に担ぎこまれたと連絡が入ります。
岸井が金十郎の前に現れます。
肩に腫瘍ができ手術できるのは蘭方医です。
お金が欲しかったのは旅費と手術代です。
手術は成功しましたが、手術不可能な場所に転移しました。
小林を斬ったのははずみです。
珠江を傷つけないように嘘を伝えてくれといって岸井は
去っていきました。

"夏の宵、砕け星"
塙には男の子が生まれました。
妻と、別の女との間にそれぞれ男の子が生まれましたが
いずれも幼い時に亡くしています。
その後妻も亡くなりました。
別の女との間に息子が生まれ熊太郎と名づけました。
家も手狭になり別の場所に広い家を建て移りました。

薬種屋の山科屋から「本草和名」という本を借りることに
なっていましたが突然貸せないといわれました。
踊りの師匠の富江が首を絞められ殺されました。
側には医療や薬草の本があり火が点けられていました。
富江の両親は富江が叔父の家にいっていた日に火事に
会い亡くなっています。
富江の父親は医者です。叔父の牧斎も医者です。
叔父の家に富江は引き取られました。
ショックから富江は立ち上がれません。
父親の本を身近に置くことで立ち直ろうとしていました。
その本を牧斎の息子の承山に見られ譲れと強引に
せまられます。
承山から逃れるため富江は自宅へ戻り、その後また別の
借家へ移動をします。
富江が行き詰って頼ったのは昔からの知り合いの薬種屋の
山科屋です。
山城屋のおかみは激しい人で富江がやってきただけで
きびしく山城屋にあたります。
富江の死は行き詰った人が起こしてしまった犯行でした。
壇が借りる予定だった本は富江の持ち物を勝手に貸すと
約束したものでした。

二つ目の"赤とんぼ北の空"は事件とはいえないものでした。
塙の周辺の出来事と事件とが交じり合って描かれています。
息子を亡くしたというのは事実のようです。
三つ目の"夏の宵、砕け星"は塙たちが複製を作ろうとして
いるのですからそれを待つか、借りて自分で写すかすれば
いい事なのになせ無理に取り上げようとするのでしょう。
お前には読んでもわからないだろうから譲れはずいぶん
腹立たしい言い草です。

塙保己一さんを知ることができました。

ジャズと落語とワン公と 天才!トドロキ教授の事件簿

2012-06-25 20:30:00 | 

赤井三尋著"ジャズと落語とワン公と 天才!トドロキ
教授の事件簿"を読みました。
表紙が現代的でちょっと内容と合わない気がします。
時代は大正末期から昭和20年代ぐらいです。
早稲田大学の等々力教授の助手の井上が過去を振り
返って思い出を語る形式を取っています。
等々力教授は言語学を研究していて数ヶ国語を理解
できます。
3篇から成っています。

"秋の日のヴィオロンの溜息"
アインシュタイン博士がエルザ夫人と北野丸で日本へ
やってきました。
博士は神戸で下船して陸路東京へ向かいました。
荷物は内国通運が神戸から東京へ運びました。
ホテルでくつろぎバイオリンをケースから取り出して
すりかえられているのに気づきました。
高価なものではないのですが博士にとっては大事な
ものです。
アインシュタインのバイオリントとなればプレミアムが
ついて手に入れたいと思う人が出てきます。
等々力教授と助手の井上が調査に乗り出します。
ホテルに運ぶトラックにマントが投げつけられトラックは
ブレーキをかけたため荷物が散乱しました。
バイオリンを奪っていったのは子供たちでした。
子供を追いかけて戻ってきたらバイオリンが置いて
あったので運転手はそのままホテルへ向かいました。
新聞社にはバイオリンの写真が送られてきました。
井上はあと少しで犯人に殺される目に会います。

"蛙の水口"
関東大震災が起きた翌年のことです。
外務省の幣原喜重郎は電信課花岡を連れて等々力教授を
訪ねてきました。
建設現場で電信課の伊藤が吊り下げられていた鉄骨が
落ちてきて亡くなる事故が起きました。
伊藤のポケットから暗号文らしいものが出てきました。
外交暗号が某国に解読されている疑いがあります。
内部のものが情報を漏らしていると疑われています。
伊藤がそうではないかと疑われています。
伊藤の持っていた文章の解読とスパイを見つけ出す
ことを頼まれます。
花岡が手伝いに残ります。
ロシア語を学んでいる絹川も一役買います。

"ジャズと落語とワン公と"
戦後の話になります。
早稲田大学の卒業生で映画の助監督の結婚式に等々力
教授と井上は出席しました。
落語家も出席して落語を披露します。
式が終わり休んでいると落語家がやってきます。
彼は柳家金語楼師匠です。
金語楼はジャズ落語をやっています。
富山の薬売りだという男がやって来て造成中の墨田公園で
ジャズ落語をやって欲しいと依頼されました。
側に建っている病院に末期の知り合いがいてその男に
聞かせてやりたいのだといいます。
無料で公開することで費用はもらっています。
しかし病院へ訪ねてそれらしい入院患者に聞いてもそんな
男は知らないといいます。
あげぐ依頼人と連絡がとれなくなりました。
公演はするつもりでいます。
どういうことなのか調べて欲しいと依頼されます。
ワン公は渋谷のハチ公です。
ハチ公が活躍します。
何がたくらまれていたかは、シャーロックホームズの
赤毛連盟みたいなことです。

登場人物はアインシュタインも幣原喜重郎も柳家金語楼も
実在した人たちです。
お話自体は創作でもこの人たちのいた時代背景や仕事や
行動などは本当のことです。
真実と創作が入り混じって不思議な雰囲気をかもし出して
います。
おもしろかったです。

朱龍哭く 弁天観音よろず始末記

2012-06-24 20:02:18 | 

西條奈加著"朱龍哭く 弁天観音よろず始末記"を読みました。
長唄の師匠をしているお蝶は南町与力榊原安之の異母妹です。
安之の妻が沙十です。
安之、沙十の夫婦はお蝶にいっしょに住もうといって
くれますがお蝶はうんといいません。
枡職人の千吉と坊主の雉坊がお蝶の側にいます。
お蝶の弟子のお久美が遊び人の達造と添いたいといいます。
お久美のかどわかしなどありますが達造も本気だと
わかります。
しっかり者のお蝶といつも道に迷うたよりなさそうな
沙十です。でも沙十はとても強いです。
爺やがもっている杖から棒を取り出し繋ぎ合わせると
なぎなたになり沙十はふりまわします。

安之、お蝶の父は一人で暮していましたが少し前に
亡くなっています。
お蝶自身がねらわれていることがわかり安之の家で
暮らすことになります。
戸山陣内という男が用心棒として雇われお蝶に付いています。
父親から何か預かっただろうとお蝶は付け狙われます。
だんだんと話は物騒に大きくなっていきます。
徳川を倒して新しい世の中を作ろうとする一味が
暗躍しています。
身近にいる千吉や雉坊まで絡んでいます。
安之の上司の南町奉行さえ怪しいと思えます。
お蝶たちの父親は何かを手にして企みに気づいたため
殺害されたのでした。

最初は町に起きる小さな出来事の連作短編集なのかと
思っていましたが徳川転覆を狙う大きな組織との
対決を描いたものでした。
ちょっと安易な思想と計画です。

お蝶と沙十は義理の姉妹で、性格も全然違いますが
仲が良くどちらもかっこいいです。
おもしろかったですがちょっと物足りなくもあります。

クロス・ファイヤー

2012-06-23 20:13:25 | 

柴田よしき著"クロス・ファイヤー"を読みました。
プロ野球で女性が活躍しているという想定の話です。
クロス・ファイヤーとは野球用語で「投手の利き手とは
逆の打者のインコースに対して投げるストレートの事。
サイドスローだと、投球に角度がつくため打つのが
特に難しいとされる。」 だそうです。

東京レオパーズ所属の楠田栞と早蕨真由は中継ぎの
投手をしています。
男性との能力差は歴然としており客寄せパンダと
揶揄されています。
真由は子供の時から天才的な投手と言われてきました。
栞は自分に自信がありません。真由より劣ると思っています。
栞と真由は親友です。
栞は二軍でキャッチャーをしている康平と付き合っています。
康平はずっと二軍で一軍に上がりたいと常に努力しています。
しかし東京レオパーズではキャッチャーはたくさんいて
ここにいる限り能力があっても一軍へいけそうもありません。

栞は臨時投手コーチの雲野に出会います。
真由より栞の方がいい体質と素質があると言われます。
先発投手となるよう雲野の特訓が始まります。

野球は見ませんしわかりません。
野球の話は途中で嫌になりそうだから読むのを止め
ようかと思いました。
でも野球がわからなくても読むのは楽でした。
男性と同じように戦えないといわれながらもその中で
目一杯がんばっている女性たちがすがすがしいです。
栞はコーチの助言を受けながら先発投手をめざします。
真由は自力で自分を変えクローザーを目指します。
クローザーって先発の反対で試合の最後に投げる
投手のことですよね。
だいたいこういう話になると女性二人の友情は壊れる
ように想像しますが壊れません。
男性といっしょに野球をするというのはつらい仕事です。
彼女がさっとうと先発として登場する場面が描かれる
と思いましたがそこまで行かずに途中で終わっています。
想像しなさいということなんでしょうか。
最後まで書いて欲しいなぁと思います。

読んでいてどうにも書いている人は女性だという気が
しました。
柴田よしきさんのことをずっと男性だと思っていました。
もしかして女性なの?と検索してみたらやっぱり
女性でした。あらら。

二人道成寺

2012-06-22 20:47:41 | 

近藤史恵著"二人道成寺"を読みました。
以前読んだねむりねずみ散りしかたみに桜姫の歌舞伎の
世界を描いた小菊が登場するシリーズの1冊です。
小菊と実が交互に語る形になっています。
ただ時間は小菊が今で、実は一年前、半年前とずれています。
小菊は瀬川菊花の弟子です。師匠も小菊も女形です。
実は岩井芙蓉の番頭をしている女性です。
芙蓉の妻の一ノ瀬美咲にも用をいいつけられたり、
お茶に誘われて話し相手になっています。
芙蓉も女形です。
芙蓉のライバルに中村国蔵という女形がいます。

美咲は実に好きな人がいると打ち明けます。
実は夫がある身でそんなことをいう美咲に驚いています。
その相手は誰かわかりませんが国蔵なのかと思われます。

美咲は自宅が火事になり助け出されますが意識不明の
ままずっと病院で眠っています。
芙蓉はその時家にいませんでした。
弟子達と弟子の家でマージャンをしていました。
警察は事件とは見ていません。
芙蓉は毎日病院へ美咲を見舞っています。

国蔵から小菊の友人で探偵の今泉に調査依頼がありました。
美咲の会った火災は誰かに仕組まれたものではないか
調べて欲しいというものです。

今泉が探偵ではあるのですがほとんど登場しないし
活躍もしません。
助手の山本くんより影が薄い探偵です。

ずいぶん悲しい話です。
美咲は悲しさで心がつぶれていたことでしょう。
罪な話です。
美咲が恋していたのが・・・
芙蓉はこんなことになってやっと美咲の存在に
気づきました。

散り残る

2012-06-21 20:35:42 | 

田牧大和著"散り残る"を読みました。
誠之助は宗俊の診療所で弟子をしています。
部屋を出た隙に書きとめたことを読まれあたかも自分で
工夫したかのようにいう同室の久吾の態度にいらいら
しています。
師匠に呼ばれ薬種問屋藤屋の薬草園を手伝いにいくよう
申し渡されます。
藤屋で働く人たちは暖かく信頼しあっています。
薬草園を仕切っているのは早苗という娘です。
左近という用心棒がついています。
早苗は右手が動きません。
左近に斬られたのです。
左近は同心でした。同じ道場の男達が押し込みをしよう
としているのをいさめようとして刃傷沙汰になりました。
早苗はたまたまその場面に行き会ってしまい怪我をしました。
左近は仕事を辞め早苗の側についています。

薬草園に期限はわからずやられたことを不満に思って
いた誠之助ですがすぐに藤屋に馴染んで明るく
仕事をするようになりました。
薬草園で働く人達に医療や薬草についておもしろく
講義するようにもなります。
不愛想な左近とも打ち解けあいました。
早苗は怪我をする前から左近を知っており惹かれていました。
誠之助は店にくる前に早苗に出会い一目ぼれしています。
左近は怪我をさせたことを悔やんでいてはっきりしません。

左近が早苗に怪我をさせる元になった男達がまた江戸に
現れます。
企みを潰すための左近、誠一郎、左近の義弟の隆一郎の
活躍と、早苗と左近の恋の行方を書いたものです。

早苗は左近と誠一郎の二人に思われています。
早苗の心は左近にあります。
ですがはっきり決着して終わっていません。
三人は仲良く過ごしています。

出て来るのは悪役を除き優しく暖かい人たちです。
気持ちよく読めます。

プリティが多すぎる

2012-06-20 21:43:51 | 

大崎梢著"プリティが多すぎる"を読みました。
中学生を対象にしたファッション雑誌ピピンの編集部に
移動になった入社三年目の若手男性新見佳考が主人公です。
新見は文芸志望だったのにまったく興味の持てない少女
雑誌の編集部へ行くことになりました。
雑誌のキャッチフレーズは「Pretty」、「Pop」、「Pure」、
「Pipim」 です。
編集長は男性ですがそれ以外の人は女性の契約社員のです。
ぜんぜん興味が持てません。
それでもそれを表に出さないよう努力して見習いを始めます。
中学生と高校1年生までで構成されたピピモと呼ばれる
専属モデルがいます。
モデル、カメラマン、スタイリスト、メイク等雑誌を
作っている人たちと知り合っていきます。
みんないっしょうけんめい雑誌を作っています。
モデルは全国の一万人以上の応募者の中から審査で
選ばれた子たちです。
中学生、高校生といえどプロ根性で仕事をしています。
新見は新美南吉の連想から南吉と呼ばれています。
しだいに仲間の一員となって雑誌作りにのめりこんで
いきます。

最初のうちは新見と同じくつまらない話と思って
読んでいました。
段々と仕事内容がわかってきます。
一生懸命働いている人たちの姿が見えてきます。
中学生向きのファッション雑誌の存在価値があるかどうかは
なんともいえません。
そのころを思い返してみれば確かにその手の雑誌を
熱心に眺めていました。
当時ローティーン向けに独立した雑誌はあったか
どうか覚えていません。
雑誌の存在を肯定できればあとはいっしょうけんめい
仕事をすることは他の仕事と同様です。
この本をおもしろいと思えるかはそこにかかってくると
思います。
中学生、高校生のモデルたちのがんばりも描かれています。
これは仕事です。お金を手にするかどうかは書かれて
いませんが大人に混じって責任を持って働いています。
子供の時から働くということはなんらかの形でプラスに
なって残らなければつらいです。
大人になってもモデルを続けている人は少ないという
ことです。
いろんな人に出会い真剣に取り組んだことはきっと
何かにはなるでしょう。

大崎さんといえば本屋さんを舞台としたミステリーが
多いのですが今回の本にはミステリーの部分は
ありません。
仕事小説です。

わだつみの森

2012-06-19 19:46:51 | 

濱岡稔著"わだつみの森"を読みました。
おもしろかったです。
これは何小説といったらいいのでしょう。
ミステリーの中に入るのでしょうが幻想小説とか怪奇小説
とか言ってもいいでしょう。
館に集まった何人かの人達が次々に殺されていくという
よくあるパターンのものです。
場所は能登半島、時代は昭和40年代のようです。
嵐で電車が立ち往生して目津漕人と目羅弓輝人の二人は
電車から出て歩きだします。
もう一人電車の乗客の下條樹もいっしょになりました。
途中で車で立ち往生している乃木森槙耶と八神若桜の
二人に出会います。二人は知り合ったばかりです。
目津は足をくじいてしまいました。
5人は海のすぐそばの崖の上に建つ屋敷を見つけ助けを
求めます。
主は泉詩音、許婚であった泉伊作は二年前に亡くなっています。
いっしょに住んでいるのは雨宮海鈴、泉の親戚だと紹介されます。
そのほかにお手伝いのあやめが住んでいます。
大きなお屋敷です。5人がそれぞれの部屋を与えられます。
目津は足を痛めたことから発熱してずっと部屋で寝ています。
周りから遮断されて3人は暮してきました。
下条、海鈴、乃木、八神と次々と殺人は起きます。

初めて出会ったばかりの人達の間でなぜ殺人は起きるのか。
5人が屋敷にやって来たということでスイッチが入って
しまった殺人です。
目津は熱で殺人が起こっている間もうつらうつらとして
いて詳しいことは知りません。
目羅が時々やってきて話していきます。
目津の勘違いしている状態で語られている部分があります。
最後の方になって今まで登場していなかった人が突然
現れ塔から飛び降り亡くなります。
その人が犯人だと目羅は目津に語ります。
最初から読者に勘違いを起こさせる書き方がしてあります。
この本はもう一度読み返してなるほどそういうことかと
確認が必要な本だと思いますがちょっとその元気は
ありません。

この本には他の多くの本の引用や解説が語られます。
登場する人たちほとんどの人がその会話についていって
います。
高等な会話が常に交わされています。
赤毛のアンシリーズのことも出て来るのですが読んで
いる本のことが語られてさえそうだったかなという
状態です。ゴク、マゴクと聞いてあぁ、あのことと
わかる人はすごいです。
あの本に書かれていたこういうこと、ということで
対話が成り立つ人々をすごいと思います。

最後は屋敷に火がついて全員死亡のように思われます。
しかし、 生きている人がいるような・・・いないような・・・
この話が現実なのか・・・想像の話なのか・・・

片思いレシピ

2012-06-18 19:57:45 | 

樋口有介著"片思いレシピ"を読みました。
柚木草平が主人公の探偵シリーズがあるようです。
私は読んでいません。
この本は草平の娘の小学六年生の加奈子が主人公です。
両親は別居中です。
お父さんは元刑事で今はフリーライターです。
お母さんは評論家で今は中国へ視察に行っています。
今はお祖母さんと二人です。

妻沼柚子という友だちがいます。
柚子は可愛らしいお人形のような子です。
洋服は祖母の手作りのふわふわのお人形の服のような
ものを着ています。
お父さんは単身赴任中。祖父母と中二の兄の翔児と
暮しています。1mある大きな猫恋之介がいます。

加奈子は柚子といっしょに槇塾へ通っています。
塾講師の大学生の松永が塾の控室で包丁で殺されました。
加奈子、柚子、柚子の祖父、兄の翔児が事件の調査を
はじめました。
塾は槇美音子の持ち物の4階立てのビルにあります。
1階は文房具屋で2階が塾、3階が控室、4階が住居です。
美音子が塾長、娘の亜佐美が副塾長、真部が長いこと
塾を支えています。
文房具店の契約更新時に出て行ってもらって塾の
拡張計画がありました。
文房具店の間にトラブルがあります。
松永の女性関係も調べます。

お祖父さんが江戸っ子気質で楽しい人です。
加奈子は翔児が好きです。
柚子はお料理が得意で何でも作れます。
彼女の家に集まっては柚子のお料理を食べます。
この家の雰囲気が楽しくていいです。
事件とは関係ないですけど猫の恋之介も活躍します。
烏の大軍と恋之介が大立ち回りをします。
1mの猫で40歳だそうです。それは猫又になって
いてもおかしくないですね。
そんな猫がいたらいいね。

加奈子のお父さんは電話でしか登場しませんが活躍して
結果を柚子のお祖父さんに伝えます。

ストーカーや変質者と、影で愛する人を見守って手助け
する人との違いは何なんでしょう。
最近は人を思うことが即ストーカーみたいに言われるので
区別はどこでつけるのだろうと思います。
犯人は変質的なところと愛する人を助けようとする
両方を持った人のように描かれています。

加奈子、柚子の家族、それに恋之介、みんな好感が
持てる人たちです。

ダークルーム

2012-06-17 21:15:14 | 
角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日:2012-01-25

近藤史恵著"ダークルーム"を読みました。
短編集です。

"マリアージュ"
高級フランス料理へ若い女性が一人で毎日通ってきます。
八千円、一万円、一万五千円の三種類のコースメニュー
しかありません。
毎日食べ続けられるものではないとシェフも従業員も
不思議に思います。
店の外で出あって聞いたわけは意外なものでした。
肝臓病で今まで摂生生活をしてきましたが悪くなる
一方です。肝硬変になった今もうがまんはやめて
おいしいものを食べるということでした。
彼女が店に来なくなってこの話を友人にすると
お金持ちのお嬢さんにからかわれたのだろうと
言われます。

"コワス"
友子は明充に振られビルから飛び降り自殺しました。
貴佐が好きになったために友子を振ったのでした。
貴佐の様子がおかしくなってきます。
友子が乗り移ったかのように振舞います。

"SWEET BOYS"
涼子が赤ちゃんを残して自殺しました。
涼子と真紀と住んでいた部屋の隣に毅と孝哉が越して
きました。
4人は親しくなり涼子と毅は結婚し忍という子供が
出来ました。
真紀と孝哉は同棲しています。
真紀は毅とも孝哉とも付き合っていました。
そしてわかったことは涼子も二人と付き合っていました。
何があったのか真紀は知りました。
毅と孝哉はホモの関係にあり子供が欲しくてその
目的のため女性と付き合いました。
子供が出来て邪魔になった彼女を自殺へ追い
込んだのです。

"過去の絵"
芸術大学の学生たちの話です。
牧はシホが好きです。絵を書きます。
シホは抽象的な絵を書きます。
牧の絵に見向きもしません。
牧の描いた絵と構成が似通った絵が発見されます。
その絵を描いたのは牧の叔父の小野寺一です。
盗作したと牧は友人達に叩かれます。
しかし事実は反対でした。

"水仙の季節"
写真家の木下は、はるの、あきのの双子の少女の写真集の
ための写真を撮ることになりました。
マネージャーの多田が殺されました。
双子が疑われます。
しかし一人にはアリバイがあり、もう一人とは木下が
いっしょでした。
双子であることを利用したトリック殺人です。

"窓の下には"
久美が小学生の時マンションの4階に住んでいました。
1階に同じ年頃の女の子がいる親子が引越してきました。
その子はうさぎを飼っています。
その子と友達になりたいと思うのですが引っ込み思案で
声をかけられません。
じょうろをベランダから下に落としたことがあります。
人形を落として取りにいって声をかけようと思いつきます。
取りに行って見ると人形は踏みにじられ親子に睨みつけ
られました。

"ダークルーム"
琢己は榊と写真の専門学校で知り合いました。
琢己は母と妹といっしょに住んでいましたが息苦しくて
家を出たいと思っていました。
妹は兄が好きでべったりと付きまといます。
琢己は榊とルームシェアしていっしょに住むことに
なりました。
ある日榊は指輪と言い、その数日後に学校を辞め姿を
消してしまいました。
才能がある榊はいつか世に出て来ると琢己は注意して
見続けました。
ダークルームって暗室のことを意味しているのですね。

"北緯六十度の恋"
わたしと薗子はヘルシンキへ旅行に来ました。
わたしは弟の優の仇を討つために薗子と付き合って
きました。
優はアルバイトで薗子の下で働いていました。
薗子にいじめられたためやけになってお酒を飲んで
車に乗り子供をひき殺してしまいました。
その後優は自殺してしまいました。
優との関係を隠し薗子の会社でアルバイトを始めました。
薗子がレズビアンだと気づいて近づいていっしょに
暮らし始めました。
心をとりこにしておいて捨て去って苦しめようという
計画です。
しかしヘルシンキのホテルで薗子は消えてしまいました。
日本へ帰ってから薗子がまだヘルシンキにいると考え
再度訪れます。
見つけた薗子に聞かされた話は意外でした。
優は薗子が好きになり交際を申し込みました。
しかし薗子は男性に興味が持てない人間だと本当の
ことを打ち明け断りました。
いじめられたというのは嘘でした。
わたしが優の姉だということを知っていましたが
一目ぼれで、優のことでうらんで何かをされても
かまわないと付き合い始めました。
わたしが何もしないで月日が流れ、優のことを知って
いっしょに過ごした日々を後悔されるのが悲しくて
姿を消したのです。

重苦しい話が多いです。
最後の話はちょっと変っています。
二人は共に過ごし心を通わせあうようになっています。
優の仇といっても最後まで読むと薗子が原因とはいえなくて
ちょっと強引と思いますが傷つけあうことがなくて
よかったです。