雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

皇帝のかぎ煙草入れ

2013-02-28 20:06:58 | 

ディクスン・カーの"皇帝のかぎ煙草入れ"を読みました。
こんな有名な本を学生時代に読んでいないわけはないと
思いますが、読んでみてぜんぜん記憶にありません。
忘れたのだと思いますが忘れたのならまた楽しめますから
それもいいかと。
書かれたのは1942年だそうです。
70年も前の話です。でもぜんぜん古さがありません。
普通に読んでいけます。
昔の話だと思うのは馬車が出てくる場面です。
かと思うとフランスとイギリス間を飛行機で楽々と
往復してくる場面が出てきます。
飛行機が気軽に使われているのに馬車だって?と
不思議な気分です。

イブという女性が隣の家の婚約者の父親を殺したという
疑いで捕まり、お医者さんのキンロスが疑いを晴らして
やろうと活躍します。
イブはお金持ちで、だめ男の夫と離婚したばかりです。
今でいうDVとストーカーを合わせた男です。
別れた後で隣の家のトビイと知り合い家族ぐるみで
つき合っています。

トビイの父は骨董趣味で手に入れたばかりの皇帝の
かぎ煙草入れをイブの窓から見える向かいの書斎で、
見ている最中に殺されました。

殺された時にイブの寝室には元夫のネッドが復縁を
迫って押し入ってきていました。
ネッドが来ていたことを知られまいとしたため
ややこしいことになってしまいます。

イブは人を信じやすくて騙されやすい人です。
男を見る目がありません。
疑いはキンロス博士が晴らしてくれます。
よく考えられた計画でした。
ちょっと狂いが生じてしまっておかしな状況に
なってしまったのです。

昔からDVとかストーカーはあったのだなと変なことに
関心しました。
そんな男女関係がうまく書かれています。
イブは騙されやすい人ですが、男におぼれて未練が
断ち切れないという人でもありません。
おもしろかったです。

レディ・マドンナ 東京バンドワゴン

2013-02-27 20:03:17 | 

小路幸也著"レディ・マドンナ 東京バンドワゴン"を
読みました。
小路さんの本の中で東京バンドワゴン シリーズは
断然いいです。
ほっとします。
登場人物全員がいい人たちです。みんな元気です。
赤ちゃんだったかんなと鈴花が三歳になってしゃべるように
なって登場人物に仲間入りしています。
東京バンドワゴンの店と居住部分と隣の藤島ハウスの
見取り図が見返しと裏に描かれています。
今までの本に見取り図って載っていたかな。
私ははじめて知ったように思います。
こういう風になっていたのかと納得です。
本屋と喫茶店の位置が今までは私の頭の中では反対に
なっていました。
きっと文章で位置関係は書かれていたと思いますが
しっかり読んでいないものですね。
こうやってはっきりわかるのはいいです。

"冬 雪やこんこんあなたに逢えた"
東京バンドワゴンには不思議なお客さんがきます。
決まった棚の本をごそっと買っていく三石さん。
劇団主催者の奈良さんは何かありそうに近づいてきます。
奈良さんの息子の茂治はいわくありそうな本を1冊ずつ
売りにきます。

"春 鳶がくるりと鷹産んだ"
蛾南人の音楽仲間の中川さんには娘がいます。
結婚をせず娘の母親にまかせっきりにしていました。
金銭は年1回送っていました。
北海道に住んでいた娘の潤子が東京の大学へ進学
することになりました。
社長だと偽ってきた中川は蛾南人や知り合いの人達に
自分が社長だという芝居をしてくれるよう頼みます。

"夏 思い出は風に吹かれて"
青の妻のすずみの友人で何年もの行方不明だった
美登里が突然訪ねてきます。
海外青年協力隊でずっと海外にいたといいます。
バンドワゴンの蔵に仕舞われていた本が別の古本屋へ
持ち込まれました。

"秋 レディー・マドンナ"
蛾南人の奥さんの友人の智子は児童養護施設を経営しています。
しかし経営に行き詰まって施設を閉めようとしています。
蛾南人の音楽仲間の龍平は光平、くるみと同じ家に
住んでいます。
光平が海外に転勤することになりました。
くるみは龍平と二人だけでは住めないと同居を解消
しようとしています。
龍平とくるみは愛しあっていますがくるみには今のまま
ではどうしても結婚できないと思っていることがあります。
勘一の亡くなった妹の淑子が日本ある家を勘一に
残してくれました。
いろんな人の悩みをいっきに解決します。

ヒートアップ

2013-02-26 19:54:59 | 

中山七里著"ヒートアップ"を読みました。
読んでみたら"魔女は甦る"の続編でした。
主人公は別の人たちになっています。
"魔女は甦る"の終了の仕方がいかにも中途半端でした
のでこの本を読んでやっと完結したのだと、納得が
いきました。
こちらの方が軽い感じになっています。
恐怖や戦慄やおぞましさなどは薄れています。
コメディタッチでさえあります。
ハードボイルドでありミステリーでもあります。

ヒートとは新しい覚せい剤です。
非行少年クループに出回っています。
売人はスタンバーグ製薬に関係があった仙道です。
麻薬取締官の七尾が追っています。
ヒートを打つとものすごい力が出て関係のない人たちに
暴力を振るって怪我させています。
七尾は覚せい剤を打たれても影響が出ない特異体質を
持っています。
それを武器におとり捜査で知られています。

宏龍会渉外担当委員長の山崎という男が七尾に連絡を
取って来ます。
山崎はとても暴力団員には見えない風貌と物腰です。
前は一流建設会社のサラリーマンでしたが会社ぐるみで
同僚を自殺に追い込んだ体質に絶望して転職をしました。
山崎はヒートの売人の仙道を捕まえるため手を組まないかと
七尾に持ちかけます。

七尾は山崎と手を組みます。
仙道の居場所を突き止め確保する直前に仙道を
殺されてしまいます。
残された凶器の鉄パイプには七尾の指紋がついています。
七尾は犯人とされ捕まってしまいます。
移動中の七尾を略奪したのは山崎です。
山崎は宏龍会から裏切り者として追われるはめに
なっています。
七尾と山崎は真犯人と、ヒートの供給者をみつける
ため行動を共にします。

この後はとんでもない過酷な状況へと追い込まれて
いきます。
仙道を殺したのは意外な人でした。

七尾と山崎のコンビがいい味です。
映画に相反する二人がしょうがなくコンビを組む
はめになるという話、よくありますね。
そんな感じです。
山崎の普通の人の感覚なのに暴力団員というのが
おもしろいです。
最後に贖罪の奏鳴曲(ソナタ)の弁護士の御子柴の
名前が登場してあの人がでてきたと楽しませて
くれます。

なんだかすべてがあっけなくうまくまとまって
しまいました。
でも物語はやっぱりきちんと終了してくれた
方がいいですからこれでいいのですね。

もらい泣き

2013-02-25 18:55:49 | 

冲方了著"もらい泣き"を読みました。
著者が実際にまわりの人達に泣ける話を聞いて書いた
ものだそうです。
ただ多少手を加えてあるということです。
短い話が33話あります。
題名の通りもらい泣きしてしまう話が多いです。

最初の話しからしてうるうるです。
夫のたくさんの連れ子を育てた厳しいお婆さんが
亡くなりました。
子供たちは誰も義理の母親を好きませんでした。
財産争いをして開けた金庫の中から出てきたものは…

みんなやさしい話です。
人間って悪くはないなと思わせてくれます。
辛い状況に陥っている人にはほっとなる本では
ないでしょうか。
読んでみて損はありません。

ブックストア・ウォーズ

2013-02-24 19:55:18 | 

蒼野圭著"ブックストア・ウォーズ"を読みました。
ペガサス書店K店を舞台にした仕事小説です。
女性社員の西野理子と小幡亜紀が主要登場人物です。
理子が先輩社員です。
理子は亜紀のことが気にいりません。
亜紀の結婚式でも言い争いになります。
理子は父と二人暮らしです。
付き合っていた男に二股をかけられもう一方の女性が
妊娠したことで振られていらいらしています。
書店内部は争いが渦巻いています。
やがて理子は店長に抜擢されます。
しかしこの昇進には裏がありました。
半年後には建物は建て替えられることになっています。
新しいビルに再度出店すことになったとしたら賃料が
跳ね上がります。
本社はこれを機に店をたたもうとしています。
女性であること、他の社員とうまくいってないことから
店の撤退までの一時しのぎの店長として利用しようとの
思惑から店長に抜擢されたのです。
理子は社長や店長たちが集まる会議で6ヶ月で成果を
上げることを公約し、達成できたら店を存続して
くれるよう頼みます。

社員の二人は早々に別の店舗へ逃げ出しました。
敵対しているはずの亜紀が店の活性化へ向けて
がんばりをみせます。
いろんな改善案が実行に移されます。
新しい企画が考え出され次々と実現していきます。
従業員たちは働く喜びを見出していきます。
この結果は…

前半部分では誰も彼もが足を引っ張り合い陰口を
たたきあい貶めあいで、いったいなんていう集団
なんだろうとあきれました。
だんだんと協力し合って前進していく後半部分は
気持ちよく読めます。

クラバート

2013-02-22 19:10:06 | 

プロイスラー著"クラバート"を読みました。
なんだかよくわからない話です。
子供向けの本です。
クラバートという男の子が主人公です。
水車小屋の親方の下に引き寄せられるようにやってきて
働くことになりました。
同じように働いている人がクラバートを含めて12人います。
親方は魔法使いです。
時々彼らはカラスに姿を変えて親方が魔法の本を読んで
くれるので集まります。
親方は弟子たちが魔法を使えるようになるよう教育は
してくれません。
やる気があるなら自分で努力して読んだことを暗記しろ
というスタンスです。
年末になると弟子の一人が死んでいきます。
クラバートにやさしくしてくれた人も死にました。
クラバートはいつかはこの小屋から逃げたいと考える
ようになります。

読むのはたいへんではありませんが何が言いたいのか
わかりません。
子供のころに読んだならよかったと思ったでしょうか。
大人の感覚で、あやしいことには最初から関わるなと
いいたくなります。
得ることも多くあったでしょうが命を落とすことになる
可能性もありました。
うーん、やっぱりよくわかりません。

あした咲く蕾

2013-02-21 20:08:34 | 

朱川湊人著"あした咲く蕾"を読みました。
短編集です。

"あした咲く蕾"
司の叔母さんの美知恵は不思議な力を持っています。
自分の命を人や植物に分け与えることができます。
与えたら自分の命はそれだけ減ります。
司の母は美知恵が力を使うことを心配しています。

"雨つぶ通信"
広美の両親は離婚しました。
母が結婚したい男性を連れてきます。
広美は反発します。
広美は雨の日に人々の悲しみ、不安、嘆きの声を
聞けるようになりました。
広美の力を信じてくれない母ですが彼は信じてくれます。

"カンカン軒怪異譚"
たまたま入った中華料理の店のチャーハンのおいしさに
ひかれて常連となりました。
店の経営者は料理に自信を持つ女性です。
ずっと使われ続けてきた中華なべを使っています。
店に地上げ屋が出没するようになりました。
なべが店主を救ってくれるというお話です。

"空の人"
小学校からの知り合いで後に結婚しました。
子供がお腹にいる時に夫は交通事故で亡くなりました。
空の人は娘に会いにきてくれます。

"虹とのら犬"
小学生の時濡れ衣でチョコレートを盗んだと決め付け
られました。
暴力で人を抑える方が簡単だと思うようになりました。
周りに人がいなくなりました。
いじめられていたのを助けた女の子がいます。
彼女は彼に人をぶつのはよくないといってくれます。
好かれていない彼を好きといってくれます。
それから彼は変わります。
彼女とはそれから…

"湯呑の月"
明恵おばさんは病弱でした。
家の近所に住んでいてよく行き来していました。
しかし母からおばさんのところへ行ってはいけないと
言われました。
それからおばさんが亡くなるまで姉妹は絶縁して
いました。
湯呑みに水を入れ月を水に捕らえて願いをして
願いを聞いてもらえるなら水が甘くなると叔母は
教えてくれました。

"花、散ったあと"
ずっとつきあってきた友人を病院へ見舞いました。
彼は昔からなんでもない嘘をつきます。
弱っている彼を見て重態なのだと知ります。
最後の最後まで彼は嘘をつきます。
葬式の日に彼の奥さんと話してやられたと
気づきました。

不思議な話です。ほっとする話です。

いとみち 二の糸

2013-02-19 19:46:56 | 

越谷オサム著"いとみち 二の糸"を読みました。
"いとみち"の続編です。
いとは高校二年生になりました。
津軽メイド喫茶店でのアルバイトは続けています。
三味線弾きのライブも続いています。
いとは男の子を好きになります。
引っ込み思案のいとですからただ彼を好きなのかなと
思っているだけです。
相手はいとが所属している写真部の一年生です。
店長とメイド長の幸子は交際しています。
メイドの智美は漫画家をめざしています。
東京へ出ていって漫画家としてがんばりたいと思って
悩んでいます。
常連客の山本は先生ですがいとの高校に転勤になりました。
いとの担任で写真部の顧問になってしまいました。
いとは親友と金銭に対する感じ方から仲がこじれて
しまいます。
元オーナーは刑務所から出所していますがなかなか
店に顔を出してくれません。

こんなふうに話が進んでいきます。
みんないい人たちでほんわかしてきます。
前作のような店が潰れるかもしれないという重大
事件は起きません。
まあ幸子の前夫が押しかけてくるというのが大きな
出来事でしょうか。
今回はいとのお祖母さんやおとうさんの出番はほとんど
ありませんでした。
続編がありそうな感じです。

片桐酒店の副業

2013-02-18 18:59:50 | 

徳永圭著"片桐酒店の副業"を読みました。
片桐酒店は酒店だけでなく配達の副業もしています。
ほかの宅配業者が扱わないものでも配達します。
丸川拓也は大学生でお金に困って片桐酒店で臨時に
アルバイトをしています。
最初に拓也が登場してくるので拓也が主人公なのかと
思いましたが臨時アルバイトが終わったら退場して
再度お金がなくなってまた登場してきます。
店番のパートのフサエさんがとぼけていておもしろい
人物です。

アイドル歌手の楽屋に手作りのケーキを届ける。
あまり来てくれない孫に亀を届ける。
上司につらくあたられる女性パートが上司に悪意を
届ける。
離婚する夫婦の夫から新婚旅行で行った沖縄で買った
壺を沖縄の海へ投げ込んできて欲しいという依頼。
中学生から二十歳になった自分への手紙を届ける。

ずいぶん変わった依頼ばかりです。
悪意を届けるというのは犯罪すれすれ、ではなく
犯罪ではないかと感じます。
これはちょっと危険な仕事です。
片桐は親のやっていた店を継ぎました。
会社員だった時に自分のせいで同僚を事故死させて
しまったという苦しみを抱えています。

もっとダークな話なのかなと思っていましたがそんな
ことはありませんでした。
徳永さんは愛知県生まれだそうで片桐酒店はたぶん
岐阜県にあり名古屋市に配達する話もあって愛知県人
には親しみやすい本でした。

生きるぼくら

2013-02-17 21:33:33 | 

原田マハ著"生きるぼくら"を読みました。
麻生人生はいじめから引きこもりになりました。
両親は離婚して人生は母と暮らしています。
どうでもいいことですけど主人公の名前が人生(じんせい)
なのですが、人生って出てくると名前だとすぐわからずに
うんって思考が1,2秒止まってしまいます。

人生はパソコンと携帯を操作しているだけの毎日を
送っています。
母は仕事をかけもちして働いています。
ずっと面倒をみてくれていた母が生活に疲れてある日
黙って家を出て行ってしまいました。
数枚の年賀状が残されていました。
この中の誰かにすがってみたらと書き残されていました。
その中の一枚に父方の祖母のものがありました。
長野の茅野に住んでいる真朝、マーサばあちゃんです。
両親の離婚前にはよく遊びに行っていて好きな場所で
好きだったばあちゃんでした。
人生はマーサばあちゃんの家に行くことにします。
茅野駅の駅前で食堂をやっている志乃さんに出会います。
車でマーサばあちゃんの家に送ってもらいます。
訪ねていったマーサばあちゃんは軽い認知症で最近の
ことはわからなくなっています。
家にはつばさという若い女性がいっしょにいます。
彼女は孫だといいます。
離婚した父が再婚した女性の連れ子です。
人生は父親が最近亡くなったことを知ります。
つばさは母も亡くしています。
つばさは血は繋がっていませんがマーサばあちゃんを
とても大事に思っています。
つばさも対人恐怖症という問題をかかえています。
三人の生活が始まりました。
人生は介護施設などを回って掃除をする仕事につきました。
志乃さんにいろいろ助けてもらっています。

マーサばあちゃんのつくるお米はとてもおいしいです。
でももう止めるといいます。
人生とつばさは自分たちでやってみようと思います。
マーサばあちゃんの米作りは独特です。
昔ながらの手作業の米作りをもっと原始的にしたような
方法です。
耕さず肥料もやらず草も最低限ぬくといったものです。
現在の米作りは機械でやりますがマーサばあちゃんの
方法ではものすごく手間がかかります。
近所の人たちが田植えや稲刈りなどはやってきて手伝って
くれます。
こうして1年がたち人生たちが作った米を食べることが
できました。

問題を抱えた若者たちの立ち直りの物語です。
マーサばあちゃんがすてきです。
田がある風景が目に浮かびます。
手助けしてくれる志乃さんもすてきな女性です。
人生はあっさりと立ち直れました。
こんなに簡単に立ち直れるものなのかと疑問に思わない
ではありません。
ちょっとした環境の変化や人との出会いで気持ちが
切り変わるということはあるでしょうね。
米作りの過程はおもしろかったです。
人生は母に会いに行きます。
ほんとにがんばった人ですからお母さんには幸せに
なってもらいたいものです。

彩乃ちゃんのお告げ

2013-02-16 18:58:34 | 

橋本紡著"彩乃ちゃんのお告げ"を読みました。
彩乃ちゃんは小学5年生です。
この本は児童向けなのかもしれません。
彩乃ちゃんのお祖母さんは新興宗教の教祖様です。
お祖母さんが危篤で次期の教主様は彩乃ちゃんです。
内輪もめで彩乃ちゃんはいろんな家に預けられます。
彩乃ちゃんにはちょっとした不思議な力があります。
預かった人が中心の話で彩乃ちゃん自身はそんなに
登場しません。

"夜散歩"
智佳子は恋人の英輔に彩乃ちゃんを預かって欲しいと
頼まれます。
彩乃ちゃんは静かな子です。
化粧をせず英輔と会ってファミレスのトイレへ行って
化粧品を持ってくるのだったと後悔したらバッグの
中に入っていました。
英輔にもらった髪飾りも入っていました。
彩乃ちゃんが入れてくれたのです。

"石階段"
大学受験を控えた高校生の辻村徹平はボランティアで
山の頂上へ続く階段が昔はありましたが埋まってしまい
ました。
徹平は進路をどうするか決められずに毎日階段を
掘り起こす作業を一人でしています。
NPOの石井さんの家に彩乃ちゃんが預けられています。
時々彩乃ちゃんがバスケットに入ったおにぎりを運んで
きてくれます。
大雨で水が出て祠が流されてしまうかもしれないと
心配しました。
見に行くには危険な場所です。
彩乃ちゃんがだいじょうぶ、流されないと言ってくれます。

"夏花火"
両親と5年生の佳奈の家に彩乃ちゃんがやってきます。
一年前に今のところへ引っ越してきました。
佳奈はお父さんのことが前より好きでなくなりました。
地元の女の子たちと仲良くなれませんでした。
彩乃ちゃんが来てくれたことで少し仲良くなれました。

彩乃ちゃんが主人公ですがあんまり彼女がどういう子
なのかとか何考えているのかは出てきません。
特に周りの人にかかわり合いを持とうとしている
わけではありませんが、いっしょにいる人たちは
ちょっといい方向に変わっていきます。

八月の魔法使い

2013-02-15 22:02:49 | 

石持浅海著"八月の魔法使い"を読みました。
企業小説というのでしょうか。

拓真の会社は工場を持つ製造業です。
工場意外は八月のお盆は一斉に休みになるのではなく
各自で休日を決められます。
お盆の人が少ない日に社長も列席して役員会義が
開かれることになっています。
拓真の恋人の深雪がPCのオペレータを努めます。

拓真が判をもらいにいった中林総務部長の席に数日後に
定年を控えた松本総務係長が何か話しています。
会議室では深雪には覚えがない資料が映し出されています。
大騒動が始まります。
資料の説明をしていたのは深雪の上司の企画部大木課長です。
大木は資料を自分は知らない、なぜか紛れ込んだの
だろうといいます。
一方階下の松本は中林に引き継がなければいけない資料が
あるがどうしたらいいのかとくいさがっています。
それはどちらも工場事故報告書の表紙です。
あくまで表紙です。

判がありません。本来なら正規ルートで上に上がっている
書類です。誰も見たことがありません。
何が起こったのか、どうして隠さなければいけないのか、
誰が握りつぶしたのかと紛糾します。
企画部では電話が使えなくなっています。
松本がモデムの電源を落として会議室と遮断したのです。
会社では勢力争いが過激です。
社長を約束されている副社長の椅子が空いています。
誰もがその椅子を狙っています。
この資料で競争相手を潰すことができればと議論は
白熱します。
深雪は自分がこのことに加担していると上司に思われたら
今後仕事がしにくくなると拓真に助けを求めます。
携帯電話を通話状態にして会議室内部の話を聞かせます。

拓真は会議室の出来事と目の前で起こっている松本の
していることが関連があることを知ります。
松本のところへ行っては松本に追い返されます。
松本が今は目立たない人だが以前は会社を方向づける
重大な仕事をしていた切れ者だと知ります。
松本たちがしていることを推理して論破していきます。

松本は妻が踏み台から落ちて身動きできないまま
何時間もそのままにしてしまい、その後妻は体の自由が
きかなくなりました。
この時に過激な仕事から手を引きました。
大木は会社に見切りをつけ転職の誘いを受けました。
二人は会社への最後の仕事として凝り固まった会社の
風習や古いトップの入れ替えなどをめざしました。

拓真が松本との対話の中で真相を見抜きます。
松本は拓真に今後の会社を率いていく素質を見出します。
役員たちはぼろを出して落ちていきます。
会社には新風が吹くことでしょう。

最初のうちはなんともわけわからないことやっている
もんだと思いました。
この会社の十年後はないかもしれないと感じました。
報告書の内容なんて誰も気にしていません。
隠されていたということが役員たちには重要なこと
なのです。
端から見ている者にはどうのこうのといっている
より中身が重要でしょ、とすぐ行き着くのに
それがないのです。
どこか向いている方向が違うでしょというのは
下層で仕事をしている者が思うことですね。
勢力争いに汲々としているトップに押さえつけられた
ダウンにいい仕事ができるはずがありません。
会社はこうやって潰れていくのでしょうね。
こんな会社あるか、という意見はあるでしょうが
私はある、と思います。

松本に大木はこんな会社ほっておいてもよさそうな
ものです。
会社を愛していたというより、ダウンの人達にもっと
生き生きと力を発揮して働いて欲しいという願いなの
ではと、思います。

県庁の星

2013-02-14 19:26:12 | 

桂望実著"県庁の星"を読みました。
映画になっています。見てはいません。
さらっと読めます。
県庁の職員と民間との交流で一年間職員が民間企業に
出向して研修と称して働くことになりました。
野村はスーパーマーケットに行くことになりました。
彼の指導者は二宮という中年の女性のパートです。
何の事前の説明もなく寝具売り場で働くことになります。
なぜ能力のある自分がこんな仕事をしなければいけない
のかと不満が一杯です。
古びた枕を眠れないからと交換して欲しいと言ってくる
お婆さんに怒ります。
二宮は高級なお茶を出してお婆さんの話を聞いてやります。
万引き犯を捕まえます。
しかし相手は万引きをしたと見せかけてお金を強請り
取るのが目的です。

スーパーはやる気がなく売り上げが落ちていてリストラ
が計画されています。
野村は改善点を洗い出した何ページにもわたる意見書を
提出します。
しかし読んでもらえません。

野村は惣菜売り場へ移動になります。
そこで見たものは賞味期限切れの食材を使用した惣菜
を売っている現状です。
してはいけないことだという野村に提案がされます。
惣菜作りを二つのグループに分け野村は自分の思う
ようなものを作って売り競争しようというものです。
いい材料を使って作った惣菜は値段がうんと高く
なりました。
売れません。
野村はいろいろ考え、人に教えを請うことを学びます。
特別な日に食べる料理を目指します。
しだいに売れるようになっていきます。

スーパーに消防署と保険所の査察が入ります。
前に野村が指摘したように査察に通りません。
改善に知識を貸し文章の書き方を教えます。

いつのまにかスーパーは変わっていきました。
野村もあれほどばかにし、嫌がっていた仕事に
喜びを見出すようになりました。
1年経ち県庁へ帰っていきます。

公務員とはこれほど民間人を見下しているのかと
あきれます。
本の中のお話とはいえ、現実もこんなふうなのではと
思います。
スーパーでの何の指導もなくさあ働けはないです。
失敗するのは当たり前です。
現実こんなスーパーはないでしょう。
だんだんとスーパーになじみ、実績を上げていき
仕事仲間の意識を変えていく部分は楽しいです。
新人の目は大切にしなければいけないとはよく
いいます。
新人には改善点がよく見えます。
慣れてくるとその状態に満足して何を改善するべきか
わからなくなります。
あっさりしていてこんなにうまくいくものだろうかとは
思いますが楽しい話です。
案外企業の立て直しはこんなものなのかも知れません。

化身 アヴァターラ

2013-02-13 19:15:58 | 

愛川晶著"化身 アヴァターラ"を読みました。
人見操は両親を亡くしています。
大学一年で一人でアパートに住んでいます。
母は早くに亡くなり父は最近に交通事故で亡くなりました。
保障金や保険金などで大金を持っています。
星野秋子という裕福で明るい友人ができました。
操のもとへ写真が送られてくるようになりました。
保育園と思われる写真とインドの神話を描いた絵の
写真です。説明文はありません。
保育園の写真に植物が写っていました。
秋子のアドバイス植物に詳しいアウトドア研究会の先輩の
坂崎英雄の協力を求めることになりました。

坂崎は早々に保育園を探しだしてくれました。
保育園に行って彼らは二十年近く前に起きた園児の
誘拐事件を知ります。
両親が誘拐犯で自分が誘拐された子ではないかと
操は自分の出生に疑いを抱き始めます。

誘拐された時刻に向かいの家の中学生の息子が
保育園をずっと見ていました。
彼は誰も出入りしたものはいないと証言します。
しかし警察はそんなはずはないと無視しました。

操の両親がどのような生い立ちなのかぜんぜん聞いて
いません。
操は両親の過去を追い始めます。
何度も引越しを繰り返しています。
戸籍も何度となく移動しています。
操は夏休みに実家の塩竃に帰りました。
実家の隣家の夫婦は操を娘のように大切にしてくれます。
委任状を書き坂崎に戸籍を追いかけることを任せます。

保育園の誘拐事件があった時の保母をしていた人が
見つかります。
彼女が関係しているのだろうと話を聞きにいきます。
悪びれた様子はありません。
しかし彼女は水死してしまいます。
事故死と見られましたが実際は酔い潰して海に投げ
入れたのです。

少し前によく似た状況でもう一つの幼児誘拐が起きて
いたことがわかります。
それが両親の娘だったことを知ります。
彼女には一つ上の姉がいました。
失踪で死亡が確定しています。
彼女はこう考えます。
両親は娘を誘拐され、こんどは別の娘を誘拐して
自分たちの娘として戸籍をごまかしたのだと。

やがて両親の本当の娘だと名乗る女性と、操の本当の
父親だと名乗る男が操の前に現れます。

ここまで話が進んでくるとどういうことなのかと
見えてきます。
父の残した遺産を分けるように要求してきます。
操は気が動転してあっさりと通帳を渡してしまいます。

真実はあっと驚く意外なものでした。
両親は操を守るため涙ぐましい努力をしたのでした。

おもしろい話でした。
操が簡単に委任状や判をほとんど知らない坂崎に
預けてしまうので、ひょっとして坂崎は悪事を
企んでいる悪者ではないのかと怪しみました。
安易に人を信用して大切なものを渡してかなり
騙されやすい人だなぁと心配しました。

夏の夜会

2013-02-12 19:39:39 | 

西澤保彦著"夏の夜会"を読みました。
主題は人の記憶は不思議なものだというものです。
よく最近のことは思い出せないのに子供のころのことは
鮮明に覚えているといいますね。
あれ聞いて本当なのかと疑問に思っていました。
だって私は子供のころの記憶だってはっきりとは
しません。
鮮明に覚えているという人のほうがめずらしいのでは
ないかという気がします。
不安定な気分にさせられる話です。

この本は小学生の時に起こったことを同級生の結婚式に
集まった5人が二次会、三次会で話し合うというものです。
小学4年の夏休みの出来事の話が出ます。
彼らの担任教師の井口はエキセントリックな人物です。
なんの落ち度もないのに生徒達に怒鳴り散らし定規で
殴りつけます。
生徒たちは萎縮して自分達が悪いのだと思わせられています。
学校は建て替え工事中でそのクラスだけが旧校舎を
使っています。
夏休みのプール開放日に彼らの古い教室で女性が
亡くなりました。
担任は2学期から変わりました。
彼らは井口が殺されたのだと思い込んでいました。
この教室で井口が男性と会っていた、女性と会っていた
のを見たという話が出てきます。

2人が帰り3人となります。
そのうちの一人が井口の娘と結婚していると打ち明けます。
そして井口が生きていていっしょに里帰りしていてホテルの
部屋にいるといいます。
殺されたのは井口ではありませんでした。
早紀が持ってきた卒業アルバムに挟まれていた男女の
写真を井口に見せたら枷場雪江という教師で亡くなった
といいます。
では殺されたのは枷場だったのかということになります。

最後まで残って会話を続けたのは早紀と見元です。
二人には深いつながりがあります。
鬼無という男の子を1年からいじめてきました。
鬼無が自殺をはかろうとするほど追い詰めてしまいますが
彼らはすっかり忘れています。
早紀がリーダーシップをとり見元は彼女に同調することに
喜びを見出していました。

二人は夜を徹して昔のことを思い出そうとします。
やがて枷場という教師も亡くなっていなくて今は校長
になっていることを知ります。
枷場は井口とは反対に他の教師からかわいがられ
大事にされていました。
井口は枷場に憎悪を抱いていました。

実際に亡くなったのは同級生の母親だとわかります。
二人はやがて女性を死なせたのは自分たちでは
なかったのかと思い始めます。
二人はやっとこうだったのに違いないという結論に
思い至ります。

読み初めのころはいくらなんでもこれほど覚えていない
ということはないでしょうと思いました。
語られているすべてのことは彼らの妄想ではないのかと
いう感じがしてきました。
すべてが夢だった、と終了するのではないかと想像して
しまいました。
実際に人は亡くなっており、そこまでの妄想では
ありませんでした。
別の記憶に置き換えてしまったり、すっかり忘れ去ったりと
人の記憶とはあいまいなものですね。
二人とも過去のことを忘れていたのに掘り起こして
しまいました。
思い出しても彼らはまた忘却の中に過去を埋めるのでは
ないかと思います。
こんどは意識して。