雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

翳りゆく夏

2012-06-28 21:00:00 | 

赤井三尋著"翳りゆく夏"を読みました。
今回もねたばれですので途中まで読んで本を読んで
みようという気になられたらその先は読まないでください。

新聞記者が活躍するミステリーです。
東西新聞社は朝倉比呂子を来春入社させる予定です。
週間秀峰に朝倉のプライバシーが暴露されることに
なりました。
二十年前に病院から新生児を誘拐し病院に対してお金を
要求する事件が起きました。
アタッシュケースに仕掛けられていた発信機から犯人の
車が見つかります。
警察に追われて車は崖から落ちて犯人の男女は死にました。
お金は車から見つかりました。
赤ちゃんは見つかりませんでした。
殺されたのだと思われています。
死んだ犯人の男の九十九が朝倉の父親です。

新聞社は朝倉を入社させたく思います。
しかし朝倉は入社を辞退しようとします。
何回も新聞社の上層部は朝倉と会ったり養父母の経営して
いる店を訪れ朝倉を説得しようとします。
世論を引っ張っていく使命があるのが新聞社と思って
いるのか、こうまで朝倉を入社させるんだと意気込む
のは嘘っぽく感じます。

東西新聞社では取材の不手際で資料室へ左遷された梶を
社長が訪れ過去の事件の真相を調べるよう命令します。
当時の刑事の井上を訪ねて捜査の話を聞いたり捜査
ノートを借りて研究します。
新生児室の真ん中にいた赤ちゃんがなぜ選ばれたのか
という疑問をいだきます。
血液型は0です。

やがて病院へ出入りしていた堀江という証券マンが
看護師をしていた滝川を殺して服役していたことを
知ります。
彼らが身代金誘拐に関わっているのを確信します。
すでに出獄している堀江を見つけ出しますが病気で
危篤状態です。
彼の口から意外なことがもらされます。
誘拐はしていない、誘拐の話を聞いて便乗してして
身代金を要求したのだといいます。

意外な展開をみせます。
赤ちゃんは生きています。
それも意外な場所で育っています。
過失から自分の子供を失った母親が病院から赤ちゃんを
連れ出したのです。
その母親は自殺し、夫は妻がしたことを知りながら
赤ちゃんを自分の子として育ててきました。
子供は大学生になっています。
今まで幸せに暮してきました。
赤ちゃんを誘拐された夫妻は自分たちの子供が生きている
ことを知ります。
朝倉は父親が誘拐殺人は犯していないことを知ります。

いっきに読めます。
かわいそうなというか、立っている地面が割れてしまった
ように感じるのではないかと思うのは今まで幸せに暮して
きた誘拐された子です。
何事もどんな暗く辛い真実でも知らずにいるより知って
いる方がいいのだと思ってきました。
でも今回の話を読み終わって、この子は真実を知るより
知らなかった方が幸せだったのではないかと思えました。
実の親は天にも上る幸せな気分でしょうが、かえって
子供に負担を強いるのではないかという気がします。
誘拐された子には強く生きていって欲しいものです。

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
江戸川乱歩賞受賞作 (もののはじめのiina)
2021-04-25 10:55:13
推理小説だと知らずに読みました。

予想外のおもわぬ展開は、散らばったパーツを一つにまとめると、極めて狭いエリア内に起こる哀しいはなしでした。
計算され尽くしたストーリーですね。
返信する

コメントを投稿