高林さわ著"バイリンガル"を読みました。
2012年のばらのまち福山ミステリー文学新人賞を
受賞した作品だそうです。
高林さんはこの時68歳、素晴らしいな。
高林さんの経歴はわかりませんが、登場人物と同じように
英語の研究をされているのでしょうか。
こういう理詰めのミステリー、好きです。
日本では沢田仁奈、アメリカではニーナと呼ばれていた女性が
塾講師の聡子と息子の高校教師の武頼を訪ねてきました。
ニーナは3歳の時誘拐事件に巻き込まれました。
それから30年経っています。
聡子はアメリカの大学へ留学し、教官をしているテッドと
結婚していました。
あるパーティが開かれていた時にニーナはさらわれ、母親の
涼子は追っていったため同時に連れ去られました。
大学では学部長選挙が近くあり、ニーナの父親のティーツ、
ガイ・ヘンドリクス、ローゼンバーグの3人が立候補しています。
事件はニーナの母、ガイ、犯人二人の死亡、ティーツの自殺で
終わりました。
ニーナは母親が命を懸けて逃がして助かりました。
彼女は日本の親類の元へ送られました。
聡子は武頼が小学5年の時に離婚し日本に戻っています。
ニーナは伯母の家で伯父の性的虐待を受け、教育もまともに
受けていません。
家を出た後は売春をして生きてきました。
彼女は母と父のことを知りたいと聡子を訪ねてきました。
聡子は30年前のことを語り始めました。
聡子にも大きな秘密があってそれで離婚をして日本に帰って
きたのです。
聡子はニーナの来訪を嫌がっていました。
自分が深く関わった子がどうしているのか気にならないと
いうのはどういうことなのかと感じました。
自分の秘密を守るためだったのですね。
ニーナは33歳ですが、読んでいると二十歳ぐらいかと錯覚
してしまいます。幼いです。
30年経って聡子やテッドはニーナの言語の構音障害を元に
真実を知ります。
ニーナは本当に残酷な人生を歩いてきました。
これからの人生を切り開いていけるでしょうか。